June 3, 2016 / 11:11 PM / 2 years ago

ブログ:最高益の日本企業で「密造酒」は作られたか

伊賀大記

 写真は5月18日、ニューヨークのオフィスビルで、窓に色とりどりのポスト・イットを張り付けて「アート作品」を作成する女性従業員(2016年 ロイター/Mike Segar)

[4日 ロイター] - 米複合企業のスリーエム(3M)(MMM.N)には「ブートレッギング(密造酒作り)」という不文律がある。たとえ上司の命令に背くことになっても、自分の信じる研究をするために、会社の設備を使っても良いというものだ。

このおかげで生まれたのがポスト・イット。よくくっつくが簡単にはがれてしまうこの製品。最初は接着剤の失敗作とされた。「何か面白そうだ」という開発者の好奇心を尊重する同社のカルチャーがなければ、この便利な商品は世に出なかったかもしれない。

3Mには「15%カルチャー」というのもある。業務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもいいとされており、同社の5万5000点に及ぶ膨大な商品開発の1つのアプローチとなっている。

    画期的な商品開発にはある程度の余裕が必要だということなのだろう。管理も大事だが、常識やコスト計算などから少し外れてしまうほどの好奇心や情熱を受け入れるぐらいでないと、世の中を驚かすような商品を生み出すのは難しい。

    消費者がどんな商品が欲しいかを調査するマーケティングをベースにした商品開発には限界があると言われる。消費者も、世の中にまだ存在しない商品をイメージすることはできないからだ。

    アベノミクスの3年間で一番恩恵を受けたセクターは企業だろう。利益水準は過去最高に達している。円高時代にはなかった余裕が出たはずだ。その間に、果たして「密造酒」は作られたのだろうか。

    日経トレンディが発表する、その年のヒット商品。2013年はコンビニコーヒー、14年はアナと雪の女王、15年は北陸新幹線だった。かつてのヒット商品(製品)と、系統が異なるのは、流行にもなるような目玉商品が出ていないためでもありそうだ。

    日本は今、金融政策などでかなり無理をして、経済再生の時間を稼いでいる。その間に、余力の生まれた企業が魅力ある商品を開発し、業績を上げ、賃金を増やし、将来への不安が薄まる中で、デフレマインドが消え、前向きな経済循環が始まるというのが、本来、アベノミクスに期待された効果だ。

    「環境が悪いから」と、企業がリスクをおそれ、小粒な商品にのみ注力し、キャッシュを貯めるばかりなら、外需や円安傾向が変調してしまえば、じり貧になってしまう。日本企業の「稼ぐ力」が、真に問われるのはこれからだ。

*一部文言を修正しました。

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