[ロンドン 28日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は28日、欧州連合(EU)離脱が無秩序なものとなった場合、英経済は約10年前に発生した世界的な金融危機よりも大きな打撃を受けるリスクがあるとの見解を示した。
英国の金融機関に対する信頼が失われたり、国境での遅延が著しくなったりした場合、英経済は毎年8%縮小し、縮小の度合いは世界的な金融危機時の6.25%を上回ると推計。失業率は、多くの労働者の国外への移転により金融危機時に付けたピークは上回らないものの、7.5%に上昇すると予想。
こうした「無秩序」なシナリオは、英国が条件などで合意できないままEUを離脱した場合でも、中銀が最も現実のものとなる公算が大きいと見なしているシナリオではないが、中銀はこうした想定の下で国内行に対し防衛手段を講じるよう求めている。
中銀は声明で「英国の銀行システムは、無秩序なEU離脱(ブレグジット)が現実のものとなった場合でも、家計と企業に対する融資を継続できるほどに力強い」と指摘。ただ、物品が国境を通過するものの、関税措置の対象となったり基準が認定されなくなったりする場合を示す「破壊的」なブレグジットとなった場合、国内総生産(GDP)は3%押し下げられるとの見方を示した。
この日は政府のエコノミストが、条件などで合意できないままEUを離脱し、EUからの移民の純流入の凍結に至れば、15年後には英国はEU内にとどまった場合と比べて約10%貧しくなるとの推計を公表している。
ただ中銀は、離脱後も英国がEUと「緊密な」関係を維持できれば、経済成長は中銀が今月に入ってから示した予想を上回るとの見通しも表明。こうしたシナリオはサービス貿易に一部障壁が導入されるものの、税関検査や関税はないとの想定に基づいており、この場合は経済成長率は中銀が今月示した予想を1.75%上回るとした。
関税措置は導入されないものの、税関検査は実施されるとの想定では成長率予想は0.75%押し下げられるとした。
双方とも、EU離脱が国民投票で決定される前の2016年5月に中銀が示した成長率予想を下回っている。
無秩序な離脱になった場合、インフレ率は6.5%に上昇し、住宅価格は30%下落すると予想。英ポンド相場は約25%下落し、対ドルでパリティー(等価水準)近くになるとの予想を示した。
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