[ニューヨーク 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ボーイングBA.Nはエチオピア航空で墜落事故を起こした新型機737MAX8について、当局の対応より前に、自ら運航停止などを行う必要がありそうだ。数カ月間で2度目の事故を受け、中国などに続いて欧州連合(EU)も12日、運航停止措置に乗り出した。米国では上院議員2人が米連邦航空局(FAA)に同様の措置を求めている。ボーイング株はこの日6%下落し、時価総額は140億ドル程度吹き飛んだ。
細かい規則と手続きに縛られた航空機産業では、メーカー自らが腰を上げるれば異例となるだろう。しかし問題の一端は、ボーイングとFAAの緊密な関係にあるかもしれないのだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ボーイングはFAAに対し、737MAXシリーズは先行機種に非常に近く、航空会社はパイロットを再訓練したり、パイロットに操縦系統の変更について知らせる必要がないと通知し、納得させていた。
昨年10月にジャカルタ沖で起きたライオン・エア機墜落事故の調査担当者らは、自動操縦装置が墜落を招いた可能性を重点的に調べてきた。10日に起きたエチオピア航空の墜落事故も表面的には状況が似ており、中国当局が真っ先に787MAX8の運航停止に踏み切った。
FAAは、今回の事故原因が前回同様かどうか判断するのは時期尚早だとした上で、ボーイングは同機のソフトウエアや訓練要件、乗組員のマニュアルを刷新するだろうと説明した。
ボーイングが、737型機計画を阻害するような行動を渋るのは無理もない。同機は民間航空機部門で売上高の55%、利益ではおそらくさらに大きな割合を占めているからだ。同社は直接的に運航を停止することもできない。しかし運航停止を勧告し、事故原因の究明に取り組み補償は行うと表明することで航空会社を安心させることはできる。
モーニングスターのアナリストによると、FAAが2013年に787型機を3カ月間、運航停止とした際にボーイングが被ったコストは5億ドルに上った。同様の措置を今行えば、コストは当時の3倍に膨れ上がりそうだ。
しかしこの2日間で失われた時価総額270億ドルに比べれば、コストは取るに足らない。より深刻な問題が発覚する可能性はもちろんあるだろう。しかし簡単に対処できる問題だとすれば、737MAXを4600機受注しているボーイングであれば速やかに復調できる。対照的に、企業の評判に傷が付けば、打撃は長引きかねない。規制当局よりも素早く行動を起こすべきだ。
●背景となるニュース
*欧州航空安全庁(EASA)は12日、ボーイング737MAX8と、737MAX9について、全便の運航と欧州域内上空への乗り入れを一時停止する措置を取ったと発表した。同日には英国、フランス、ドイツが737MAX8の運航を停止。前11日には中国、インドネシア、エチオピアが同様の措置を行っている。
*米上院のロムニー議員(共和党)とウォーレン議員(民主党)は12日、事故原因が究明され、耐空性が確認されるまで737MAX8の運航を停止するようFAAに要請した。
*ボーイング株は12日に6%強下落し、今週に入ってからの下落率は11%を超えた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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