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アングル:ボーイング最新鋭機に試練の歴史、50年前の「教訓」

[オタワ 25日 ロイター] - 大手航空機メーカー米ボーイングBA.Nと各国の航空会社は、ボーイング737MAXによる2度の墜落事故を受け、同機に対する信頼回復に努めているが、約50年前を振り返ると、似たような「教訓」が存在した。

 3月25日、大手航空機メーカー米ボーイングと各国の航空会社は、ボーイング737MAXによる2度の墜落事故を受け、同機に対する信頼回復に努めているが、約50年前を振り返ると、似たような「教訓」が存在した。写真は、アリアナ・アフガン航空のボーイング727─100型機。フランクフルト空港で撮影(2019年 ロイター)

革新的な技術を駆使した新型機の就航後にボーイングが危機に直面するのはこれが初めてではない。

1965年、着陸しようとしていたボーイング727─100型旅客機が3カ月もたたない間に、3度墜落事故を起こし、計131人が死亡した。

エンジンを3基搭載した727─100型機は当時、737MAX同様、最先端の航空機といわれた。ボーイングは1964年に727型を導入し、当時の標準だった4発機に代わる効率の良い機体だとしていた。短い滑走路でも運航しやすいよう新たな機能が搭載されていた。

低速で大きな浮力を得られるよう設計された翼のフラップ(高揚力装置)は、非常に大きく高性能で、競合機よりも短時間で降下するとともに、滑走路付近の建物や障害物を回避することを可能にした。

727─100型機の墜落事故を捜査した当局は、一部の操縦士が同装置を十分に理解せず、かなり高速で降下していたことを発見した。

「機体には何も問題なかったが、注意を怠れば、降下率が非常に大きくなりかねなかった」と、米エンブリー・リドル航空大学のビル・ウォルドック教授は指摘する。同教授は727型機の事故を事例研究の一部に使っている。

航空当局は操縦士の訓練を強化するよう命じたが、政治家から運航停止を求める声が出ていたにもかかわらず、運航継続を許可した。

ボーイングは、飛行規定と最終進入時の手順に修正を加えた。

737MAXの場合、ボーイングはソフトウエアと操縦士の訓練を見直している。

<1年後には遠い過去>

727型機墜落事故を調査している米国の航空史家で、輸送関連の訴訟を専門に手がけた元弁護士のアラン・ホフマン氏は、今回の墜落事故に対する注目の高さを考えると、米連邦航空局(FAA)は、修正がうまく機能していると確信しない限り、737MAX8型機の運航再開を許可しないとみている。

「737MAX8型機は運航を再開し、ほかに何か起きない限り問題は悪化せず、1年後には遠い過去の記憶となっているだろう」と、同氏はロイターの取材に語った。

ロイターはボーイングにコメントを求めたが得られなかった。

737MAX8型機が2度目の事故後直ちに運航停止となったのとは対照的に、727型機は1965年11月に起きた3度目の事故からわずか2日後、米民間航空委員会(CAB)が運航を停止させる理由がないと発表した。

「727型機は就航前、非常に厳しい認証テストに合格していた。われわれの調査の中で、同機の安定性を疑うような結果は何も見つからなかった」と、CABは当時指摘した。

こうした説明をすぐに受け入れる乗客は少なかった。相次ぐ墜落事故を受け、同型機への搭乗を拒否する事態も起きつつあった。

「約半年間、727型機の多くは搭乗率が半分程度で運航していた」と、前出のウォルドック教授は言う。

それでも、727型機の危機は過ぎ去った。

727型機は次第にボーイングのベストセラー機の1つとなり、その後30年間、世界の空を飛び回った。しかし音が大きく、燃費の悪いエンジンを航空各社が敬遠するようになり、2003年には事実上、退役した。

(翻訳:伊藤典子 編集:久保信博)

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