July 31, 2020 / 12:43 AM / in 8 days

オペ増額で賛否、欧州危機で臨時会合開催も=2010年日銀議事録

[東京 31日 ロイター] - 日銀が31日に公表した2010年上半期の金融政策決定会合の議事録で、固定金利オペの増額を巡り、「量」の指標となることを嫌って一部の政策委員が反対するなど活発な議論が展開されていたことがわかった。

 7月31日、日銀が公表した2010年上半期の金融政策決定会合の議事録で、固定金利オペの増額を巡り、「量」の指標となることを嫌って一部の政策委員が反対するなど活発な議論が展開されていたことがわかった。写真は2016年3月、都内の日銀前で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

追加緩和の報道が会合の10日以上前に出てしまい、市場が緩和を織り込む中で決定会合を開く格好になるなど、あらためてメディア対応に苦しむ姿も垣間見られた。欧州債務危機の中、日銀は5月に臨時会合を開くなど金融市場の動向にも左右された。(肩書きは全て当時)

<追加緩和のタイミングか>

10年上半期に合計8回開かれた金融政策決定会合で、出席者の間で最も議論が分かれたのは3月16―17日の決定会合だ。リーマン・ショック後に打ち出した企業金融支援特別オペが同年3月末で終了することなどにより、追加の対策がなければ資金供給が7兆円強減少する計算になるため、日銀は前年12月に導入した固定金利オペを10兆円増額することを決めた。

しかし、この決定に須田美矢子委員、野田忠男委員が反対票を投じた。同会合では審議委員2人が空席。正副総裁含め7人で議決した。

須田委員は、景気・物価の「メイン・シナリオ」と「リスク評価」の2つの柱を検討しても、前回会合から特段の変更がない中で「今回の追加緩和という結論はストレートには出てこない」と指摘。さらに「日本銀行の金融政策運営はあくまで金利水準をターゲットとしており、量、とりわけ1つのオペの残高で緩和度合いを測るのは正しくない」と主張した。

野田委員は、「追加緩和を検討」との報道が会合の11日前から出始め、金融市場が追加緩和を織り込んだ中での追加緩和決定に異議を唱えた。野田氏は、事前報道によって追加策が企業や家計のマインドに働きかける効果が「大きく減殺された」と悔やんだ。「極めて遺憾だ」と述べ、「われわれは、観測報道に金融政策が振り回されたという先例を残して良いのか」と問いかけた。

一方で、山口広秀副総裁は「企業収益が明確に改善し、金融緩和がより浸透しやすい状況」と述べ、一段の金融緩和で「われわれのデフレ克服に向けてのスタンスを明確にしつつ、経済・物価情勢の回復の動きを今一度後押ししていくことが適当ではないか」と主張した。

「この政策をもって追加緩和だとも思わない」と話す須田委員に対し、白川方明総裁は「効果を冷静に考えた場合、10兆円にしたからといってデフレの状況が大きく変わるというわけではもちろんない」と述べつつも、切りの良い10兆円という数字を打ち出すことで、デフレ克服に向けた日銀の姿勢を明らかにすべきと主張。「10兆円にするということは、もちろん7兆円でないという意味においては追加緩和だ」と語った。

反対者を出しながら、日銀は固定金利オペによる資金供給を10兆円から20兆円に倍増することを決定。4月の決定会合では、野田委員が「前回会合で決定した新型オペの拡充により、多くの市場参加者が市場機能のいっそうの低下を懸念しているようだ」と述べるなど、ボードメンバー間にしこりを残すことになった。

<成長基盤強化と中銀の役割>

10年4月以降、日銀は企業の成長基盤強化を支援するための資金供給の制度設計に取り組んだ。4月に白川総裁が執行部に指示し、6月に基本要領を制定。8月末から開始した。政府の成長戦略などを踏まえて18の分野を例示し、金融機関に資金を供給した。

4月30日の会合で山口副総裁が「より長期の観点に立って、特に企業のイノベーションや潜在的な需要の掘り起こしに向けた活動を、資金供給面などの工夫を通じて支援していくことができないか」と問題提起。白川総裁は人口の減少や生産性の低下のもとで成長率が趨勢(すうせい)的に低下してきていることに懸念を示し、「中央銀行が自ら有する機能を使って果たし得る貢献がないかどうかを真摯に検討することは、中央銀行の姿勢として必要なことだ」と述べた。

しかし、制度設計によっては日銀が特定の産業に融資する格好になりかねず、中央銀行の役割や金融政策運営の観点から委員から注文が出された。中村清次委員は5月の会合で、金融政策運営の制約にならないこと、金融機関が行う融資に介入しないこと、日銀の資産の健全性を確保することを念頭に検討を進めるよう求めた。

一方、須田委員は6月の会合で、政策当局の役割は環境整備なので役目を終えたら早々に退出することや、新制度を通じて供給される資金はあくまで「呼び水」であり、貸出量が問題ではないことなどをあらためて指摘した上で執行部の案に賛成した。

<欧州債務危機>

10年上半期は欧州債務危機で金融市場はボラティリティーが高まった。日銀は5月10日に臨時会合を開催し、米連邦準備理事会(FRB)との間で米ドルスワップ協定を再締結することを決めた。

この時期、委員からは日本の債務残高の大きさを懸念する声も出た。亀崎英敏委員は5月21日の会合で「日本のソブリン債務残高の名目GDP比率は世界で群を抜いており、財政赤字の名目GDP比率もかなり高い方だ」と指摘。「今後ますます国家財政への監視が厳しくなり、いずれ日本のソブリン問題が顕在化する可能性は高い。財政健全化に向けた取り組みは極めて重要な課題だ」と述べた。

<包括緩和へ>

須田委員が「量」の指標になりかねないとして増額に反対した固定金利オペ。10年後半には、為替市場で円高が急速に進む中で、固定金利オペを通じた資金供給量を増やすことが日銀の追加緩和のツールになっていく。固定金利オペも組み込んで基金を立ち上げ、「包括緩和」に踏み切るのは10年10月のことだ。

和田崇彦

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