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ロイター企業調査:黒田総裁の信頼度、「変わらず」と「低下」が拮抗 厳しい見方

[東京 22日 ロイター] - 3月ロイター企業調査によると、日銀の黒田東彦総裁への信頼感が就任時と比べて低下したとの回答が半数近くに上り、信頼感は変わらないとの回答とほぼ拮抗した。物価や実体経済に成果が出てないとの厳しい見方も多い。日銀の政策は現状維持が望ましいとの回答が7割近くとなり、緩和政策の出口に向かうべきとの回答は昨年1月と比べ大幅に減少した。10月に消費増税を控える中、景気への懸念が示された形だ。

 3月22日、ロイター企業調査によると、日銀の黒田東彦総裁への信頼感が就任時と比べて低下したとの回答が半数近くに上り、信頼感は変わらないとの回答とほぼ拮抗した。2018年10月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

今回の調査期間は、3月4日─15日。調査票発送企業は479社、回答社数は240社程度。

<黒田日銀総裁、積極的評価少なく>

黒田総裁への信頼度が就任当初と比べて「やや低下した」、あるいは「かなり低下した」との回答が合計で48%とほぼ半数を占めた。結果を出せていないとの指摘が多く、「失敗した政策にこだわり、中央銀行に求められる冷静な姿勢に欠ける」(機械)、「振り上げたこぶしの下ろしどころがなくなり、かたくなになっている間に市場はどんどん歪められている」(電機)、「政府の方針に迎合するような部分も見受けられる」(機械)など、厳しい見方も多い。

他方で「変わらない」も51%と半数を占めた。ただ、この中には「もともと信頼していない。物価目標が達成されないばかりか、時期も曖昧にしている」(輸送用機器)といった意見も相当数含まれ、積極的な評価は「株式相場や為替などで継続した一定の成果を上げている」(小売)など、一部にとどまった。

<景気懸念でも緩和強化は望まず>

政策の方向性については、現状維持を妥当とする回答が67%を占め、昨年1月調査の49%から大きく増えた。

「消費増税や米中摩擦といった懸念がある」(輸送用機器)ほか、「金融緩和はやめるべきだが、引き締めると景気が後退する」(機械)といった見方がある。現状の緩和政策は物価上昇に効果がないものの、引き締めは景気へのリスクがあり、緩和強化は副作用が大きいとして、現状維持しかないとする消極的な支持が増えている。

出口に向かうべきと回答は27%と昨年1月の45%から大きく後退。「現状(の政策)が長く続くほど経済の自律性が失われる」(ゴム)といった懸念は根強いものの、減速気味の景気を気にする企業が多かったとみられる。

一方、景気への懸念がある中でも、緩和強化が望ましいとの回答は6%にとどまり、昨年1月と変わらなかった。「これ以上緩和を行えば、特に地銀の体力が持たないと感じる」(運輸)などの見方が多かった。

<2%目標は不可能でも支持、見直し必要も46%>

2%の物価目標についても「維持すべき」との回答が52%になり、昨年7月調査の46%から増えた。ほとんどの企業は2%達成は不可能とコメントしているが、それでも「最低でも2%程度の物価上昇が必要だと理解しなければいけない」(小売)など、多くの中央銀行が掲げている2%が適正との見方が目立つ。

一方で、「目標設定自体をやめるべき」との回答も27%、「引き下げるべき」が19%を占め、合わせて46%が見直しが必要との見方を示している。

「実態とのかい離は明らかであり、形骸化している」(小売)、「目標達成にこだわるあまり、時機に合った必要施策を実効する柔軟性が損なわれることが懸念される」(ゴム)など、現実的ではない目標が不信感につながるといった指摘もある。 

中川泉 編集:石田仁志

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