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アングル:日銀に迫るコロナ「秋の陣」、感染急増で景気シナリオに黄信号

[東京 15日 ロイター] - 日銀は15日、年末にかけての緩やかな景気回復シナリオを示し、金融政策の現状維持を決めた。しかし、新型コロナウイルスの国内感染者数の増加傾向や感染拡大がもたらした人々の慎重な行動など、景気シナリオの前提条件には「黄信号」が灯っている。第2波の到来、鈍い景気の戻り、銀行の与信費用の再拡大――。これらの要因がそろいそうな10月の決定会合では、追加緩和策が打ち出される可能性が浮上してきそうだ。

 7月15日、日銀は年末にかけての緩やかな景気回復シナリオを示し、金融政策の現状維持を決めた。しかし、新型コロナウイルスの国内感染者数の増加傾向や感染拡大がもたらした人々の慎重な行動など、景気シナリオの前提条件には「黄信号」が灯っている。写真は2017年6月、日銀本店前で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

<コロナ感染増、「第2波ではない」>

第2波というような大きなものにはなっていない――。黒田総裁は15日の会見で、東京都を中心とした国内の感染者の増加傾向についてこう述べた。一見強気な発言だが、同時に国内景気の戻りは緩やかになると繰り返し、必要なら追加緩和に踏み切ると強調した。

展望リポートでは、経済・物価の見通しはいずれも「おおむね前回の見通しの範囲内」とした。しかし、先行きは不透明感が「きわめて強い」と明記。大規模な感染症の第2波が生じない、企業・家計の中長期的な成長期待が大きく低下しない、円滑な金融仲介機能の維持といったことを日銀の先行きシナリオの「前提条件」とした。

展望リポートが指摘した通り、こうした前提条件には大きな不確実性がある。感染者数が増えている首都圏で飲食店などに休業要請が出れば、経済へのダメージは避けられない。感染者数が急速に伸びている米国では、米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事が14日、「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が経済動向の鍵を握る。依然として不確実性という深い霧に覆われており、下方リスクが目立つ」と指摘している。

日銀では、6月短観で示された企業の設備投資計画が底堅かったことから、コロナが流行する中でも企業の成長期待は損なわれていないとの声が出ている。その一方で、経済活動が制約されなくても、感染抑止のために慎重に行動しなければならないとの意識が人々のマインドに根付いてしまえば、長期にわたって景気の戻りは鈍くなるとの警戒感が出ている。

<材料がそろう10月会合>

日銀内では、先行き景気の戻りが想定より鈍くなれば、秋にも追加の政策対応が必要になるのではないかとの声が出ている。

そういう意味では、10月28—29日の金融政策決定会合が重要となりそうだ。10月の会合までに現時点で浮上しているさまざまな不透明要因の「真の姿」が現れてきている可能性が高いからだ。

黒田総裁が現時点で否定した感染第2波についても、本当に来るのか、どの程度の脅威になるのか、状況がより明確に見えてくる。経済指標では、4―5月をボトムに景気がどの程度回復しているのかが把握できるようになる。9月調査の短観が発表され、10月の会合では展望リポートが更新される。

9月末を越え、銀行は中間決算の集計に入る。与信費用も見直しのタイミングとなり、積み増すかどうか、銀行は決断を迫られる。コロナ前からの収益の悪化で、一部の金融機関は思うように与信費用が積めていないのではないかとの声が日銀内では出ている。銀行の与信費用がどうなるか、金融当局は注目している。

<追加策は政府にらみか>

政治日程次第だが、税収減や国債の利払い費の調整で年末までに追加の補正予算が組まれるのは必至の情勢。秋に臨時国会が召集されて20年度第3次補正予算案の話が出てくれば「日銀も国債購入を強化して金利を低く安定させるよう求められそうだ」(エコノミスト)との声が出ている。

黒田総裁は会見で「政府が必要に応じて国債を増発した場合に、金利が上昇することがYCCのもとで防がれるのは財政政策・金融政策のポリシーミックス」と話し、イールドカーブ・コントロール(YCC)の意義を強調した。その一方で、追加緩和の具体策としては「(資金繰り支援)特別プログラムの拡充のほかに、YCCの枠組みにおける長短金利の引き下げなどいろいろな手段がある」と述べた。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、追加緩和の場合はコロナ対応の3本柱の枠内になると予想。ただ「政府の対応を見ながら、日銀も対応ということになるだろう」と話し、日銀が先手を打つ可能性は低いとみている。

和田崇彦 編集:石田仁志

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