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日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由
2017年3月16日 / 09:41 / 8ヶ月後

日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由

[東京 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げする一方、日銀は政策維持。日米で金融政策の「ギャップ」が広がっているにもかかわらず、ドル/円JPY=が下落している。政策決定内容が織り込み済みというだけではなく、円キャリートレードの拡大や米長期金利の上昇が見込みにくいことも要因だ。

 3月16日、米FRBが利上げする一方、日銀は政策維持。日米で金融政策の「ギャップ」が広がっているにもかかわらず、ドル/円が下落している。政策決定内容が織り込み済みというだけではなく、円キャリートレードの拡大や米長期金利の上昇が見込みにくいことも要因だ。写真は日銀、2015年8月撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)

日銀は依然として「出口戦略」を示さないが、それが緩和効果を減じるとの指摘もある。

<織り込ませ過ぎて逆反応>

タカ派のニュアンスを市場に織り込ませ過ぎたのかもしれない。15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定された後、金融市場では米金利低下、ドル安/円高、米株高が進行。利上げ後の通常の反応とは真逆な動きを示した。

「FRB幹部が、3月利上げを急に織り込ませ過ぎた。その裏には大きな変化があるのではと警戒されていたが、景気や物価の見通しはほとんど変わらず、ポジションの巻き戻しが入った」(三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏)という。

このため、ポジション調整が一巡すれば、2年物など金融政策に敏感に反応する米国債利回りが上昇する可能性はある。15日の米2年債US2YT=RR利回りは1.31%で引けたが、今回示されたドットチャートでのフェデラルファンド(FF)金利適正水準は18年末時点で2.125%。このペースでの利上げができるかはともかく、織り込む余地はまだ大きい。

しかし、素直にドル高/円安が進むとは限らない。第1に今のドル/円との連動性が高いのは、2年ではなく10年の日米金利差だ。長期金利に影響を与えるFRBの中立金利(Longer Run)は今回も3%で据え置かれたほか、経済や物価見通しもほとんど変わらなかった。

市場では「見通しが変わらない中で急いで利上げするのは、トランプノミクスが失敗したときに、利下げする余地を作るためではないか」(邦銀)との声も聞かれる。

<円キャリートレードは期待薄>

さらに、円を調達通貨として米債などに投資するキャリートレードが、今回の利上げによって増加する可能性も低い。

日米欧の中銀が、金融緩和を競い合った時代は過ぎ去り、FRBは金融引き締め方向に舵を切り始めた。今局面3度目の利上げでドルの短期金利が上昇(3カ月物はほぼゼロから0.7%台に)する一方、日本の短期金利は日銀のマイナス金利政策が影響し、依然としてゼロ%以下だ。

「ドルと円のどちらが調達金利かという議論は、すでに終止符が打たれている」とSMBC日興証券の為替・外債ストラテジスト、野地慎氏は指摘する。今さら25ベーシスポイントの利上げがあっても、ドルから円に調達金利を乗り換える動きは強まりそうにないという。

むしろ今のドルは投資通貨であり、10年米国債など長いゾーンの利回りがキャリートレードに影響を与える。しかし、今回のFOMCを受けて、米国債市場では10年債US10YT=Rや30年債US30YT=RRRの利回りは低下した。

為替スワップ取引では、1カ月物の円投/ドル転スワップによるドル調達コストが1.99%に上昇、1月2日以来の高水準に達した。経済状況が好調だからこそ、FRBは利上げに踏み切ったのであり、投資先として日米欧の中で最も魅力的ではあるが、コスト面では厳しい環境となっている。

<「出口戦略」にも日米差>

市場で根強いドル高/円安期待の背景は、日米金融政策の方向性の違いだ。片や正常化に向けて前進中。もう一方は、時期尚早として出口戦略に距離を置いている。

しかし、将来の出口への道筋を示すことが、今の金融緩和の効果を高めるという実証的な分析があると、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は話す。「出口戦略の不確実性が高いと、現在の消費や投資を控えてしまうからだ」という。

FRB幹部は、量的緩和政策の途中だった2010年ごろから、すでに正常化に関する発言を開始。FOMCでは、将来的な金利見通しを示すとともに、膨らんだバランスシートの縮小に関する議論にも着手している。

今回のFOMCでは、バランスシート縮小に関する文言に変更はなかったが、イエレン議長は15日の会見で、償還が到来する米債に関して、再投資の方針をいずれ変更することについて今回協議したと明らかにしている。「市場金利の上昇を恐れていない」(国内シンクタンクのFEDウオッチャー)スタンスは明確だ。

一方、日銀の黒田東彦総裁は16日の会見で、物価目標の2%にまだ距離があるとして、長期金利目標の引き上げを含め、出口政策に至る明確なヒントを与えなかった。

将来への不安から消費が伸びず、インフレ期待が高まらなければ、実質金利は低下せず、円安圧力も強まらない。日米金融政策の「ギャップ」を放置することにより、ネガティブな影響が出かねないことにも注意する必要がありそうだ。

伊賀大記 編集:田巻一彦

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