December 22, 2015 / 6:53 AM / in 4 years

禍根残した日銀補完策、「市場との対話」や企業選別に課題

[東京 22日 ロイター] - 日銀の量的・質的金融緩和(QQE)補完策は、いくつかの点で禍根を残した。発表後に日本株が乱高下したことで「市場との対話」が問題視され、発表時間を固定すべきとの声も浮上。補完策で示された設備や人材に積極投資する企業を対象とした新たなETF(上場投信)買い入れ策は、企業を選別する要素があり、中央銀行の職責の範囲内に収まるのか、市場の一部では懸念する声も出始めた。

 12月22日、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)補完策は、いくつかの点で禍根を残した。都内の日銀本店前で4月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

<株価反落させた「脚注」>

日経平均.N225は、日銀決定会合2日目の18日、大きく動いた。QQE補完策発表後に一時500円を超す上昇となったが、追加緩和ではないとの認識が広がると急速に軟化。終値では366円安まで下げ幅を広げた。日中値幅は886円と終値に対して約4%の変動、今年3番目の大きさとなった。

日銀の発表を受けて、市場が勝手に判断し、売買したことで起きた乱高下と言えるかもしれない。ただ、情報発信の仕方には改善の余地があるとの指摘が、一部の市場関係者から出ている。

株式市場が最初、買いで反応したのは、新たなETFの買い入れ枠設定が発表されたためだった。QQEの柱の1つであるETF購入額の増額については「追加緩和かと思った」(国内証券・株式トレーダー)との反応が多かった。

しかし、発表文をよく見ると「脚注」に、過去に日銀が買い入れた銀行保有株式の売却を再開するとある。額はともに3000億円。今回の策は日本株に対してニュートラルとの見方が広がり、株価は一気に軟化した。

発表文の構成が「緩和的なニュアンス」を出そうという日銀の演出意図があったのか不明だ。しかし、今回の株価乱高下について、株式市場からは「先進国の主要株価指数が短時間に上下で4%振れることは、健全な市場とは言えない」(岡三証券・投資戦略部シニアストラテジストの大場敬史氏)との批判の声があがっている。不必要なボラティリティの高まりは長期投資家を敬遠させかねない。

<思惑呼ぶ「終了時間」>

今後は、日銀決定会合の「終了時間」がより注目を集めるかもしれない。今回、日銀の発表は午後零時50分だったが、同30分を過ぎたころから、日経平均はじりじりと上昇を開始していた。

過去の決定会合の傾向から、追加緩和がある場合は、午後零時30分を過ぎるケースが多かったためだ。

米連邦準備理事会(FRB)は日本時間で午前4時、欧州中央銀行(ECB)は同午後10時半と、決定内容の公表時間が決まっている。

「できるだけ早く公表する」(日銀広報部)というメリットもあるが、決定時間によって、市場に思惑を呼びやすいというデメリットもある。もし、議論が白熱し発表が遅くなった場合、市場は追加緩和を期待し、もし政策据え置きであれば、失望する可能性は大きい。

期待と失望がプラスマイナスゼロになればいいが、今回の株価の動きにみられるように、金融市場ではいったん期待した後の失望は大きくなりがちだ。株価をターゲットに金融政策が行われるわけではないが、株価の動きは、人々のインフレ期待に影響を与える可能性がある。

SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏によると、現在の中央銀行の考え方は、人々の期待そのものに影響を与えるニューケインジアンが主流となっており、中央銀行の金融政策に対する期待は株価に表れるという。

今回の補完策は結果的に株価を下落させ、人々の「インフレ期待を委縮させた」と指摘している。

<「選別」に踏み込んだ日銀>

今回、新たに導入されたETF買い入れ策への批判もある。対象は「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」だ。当初はJPX日経インデックス400.JPXNK400に連動するETFだが、趣旨に合致する新規のETFが組成された場合には、買い入れ対象に加えるとしている。

日銀はこれまで日経平均やTOPIX.TOPX、JPX日経400など、株価指数に連動するETFを対象に購入を進めてきた。中央銀行が株式を購入すること自体が世界で類をみないが、日銀側は、あくまで株式市場を通じた資金提供を目的とし、市場でも量的緩和策の一環と捉えてきた。

しかし、今回、日銀は「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」という「選別」に踏み込んだ。

「個別企業を選択するのなら、それはQQEの域を脱している」と、マネックス証券・チーフストラテジストの広木隆氏は厳しい見方を示す。政府は賃上げや設備投資を後押ししようとしているが「日銀が政府の言いなりとなり、民間企業への行き過ぎた介入とみられても仕方ない」という。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントCEOの菊池真氏も「中央銀行が企業を選別して買う行為は、まるで新興国に多い国家管理経済であり、米国のような自由市場経済から後退する」と指摘。「このままでは日銀の信頼性に疑問符が付き、ひいては円や日本株に対する信用力を落としかねない」と懸念を示している。

杉山容俊 編集:伊賀大記

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