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地銀向け特別付利、政府と協調の「強い意思表示」=20年11月の日銀議事録

[東京 14日 ロイター] - 日銀が昨年11月、地域金融機関向けの特別当座預金制度導入を決定した際、雨宮正佳副総裁が政府との連携の重要性を強調していたことが判明した。若田部昌澄副総裁は、特別付利の適用条件を数値化することで、かえって金融機関の経営改善に向けた努力が強まりにくくなることに懸念を示した。若田部副総裁は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて導入した特別オペでの付利に続き、新制度でも付利を行うことが「金融機関の経営支援だ」との批判が出てくると想定し、丁寧なコミュニケーションが重要だとも述べた。

日銀(写真)が昨年11月、地域金融機関向けの特別当座預金制度導入を決定した際、雨宮正佳副総裁が政府との連携の重要性を強調していたことが判明した。2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

情報公開制度を通じ、ロイターが特別当座預金制度の導入を決めた2020年11月10日の政策委員会・通常会合の議事録を入手した。記事中の肩書きはすべて当時のもの。

<従来以上に政府と協調を>

特別当座預金制度は、人口減少や低金利の持続で地域金融機関の収益が悪化していることを踏まえ、日銀が示した経営基盤強化の目標数値達成あるいは経営統合の決定を条件に金融機関の当座預金にプラス0.1%の特別付利を行う仕組み。

導入を議論した通常会合では、鈴木人司審議委員が「本制度により金融システムの安定性の維持を継続させることが望ましい」と述べるなど、ボードメンバー全員が賛成した。

新制度は、日銀法により財務省と金融庁の認可が必要だった。雨宮副総裁は「認可を受けることは、政府と協調しながら金融システムの安定確保にあたるという強い意思表示にもなる」と指摘した。

日銀が同制度を発表した昨年11月には、地銀の合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が施行。経営統合する地銀に対して、システム統合費用の一部を支援する新制度を政府が模索していることも明らかになった。雨宮副総裁は日銀の新制度が「様々な環境整備や施策と合わせて効果を発揮するものと考えられる」と述べ、「従来以上に政府との協調を心がけてほしい」と語った。

<OHR目標、「必ずしも甘いものではない」>

新制度はOHR(経費率)を3年で4%以上低下させることなどを目標とする。若田部副総裁は「地域金融機関がその数値を達成することに集中し、これを超える努力を怠る懸念はないか」と疑問を投げかけた。これに対して高口博英金融機構局長は、OHRの目標は「平均的に見て上位1割の金融機関が満たしてきている比較的高めの水準であり、必ずしも甘いものではない」と説明。「OHRを3年間で4%、10年間で1割程度下げることができれば、地域金融の持続可能性は十分に高まる」と述べた。その上で、付利にふさわしい経営努力は必須であり、「金融庁と連携して金融機関にしっかりと働きかけを行っていきたい」と話した。

特別当座預金制度はプルーデンス政策と位置付けられ、金融政策決定会合ではなく政策委員会の通常会合で導入が決まった。政井貴子審議委員は「本件はプルーデンス政策目的とはいえ、通常会合において付利を決めるということの重みに関しては十分認識していただきたい」と指摘した。高口局長は「金融政策や金融市場調節に影響が生じないよう、最大限配慮して制度設計および運営を行う」と説明した。

<地域金融機関の「経営支援」批判に警戒>

若田部副総裁は、足元で地域金融機関が「なお相応の収益」を上げる中、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて導入した特別オペで利用残高に応じた付利をインセンティブとして実施したことで、黒田東彦総裁の記者会見で「地域金融機関に対する経営支援ではないか」との質問が出たことに言及。新制度でまた付利を行うことに質問が出てくると予想されることから、丁寧なコミュニケーションを求めた。

雨宮副総裁は、新制度の導入に当たって地域金融機関の首脳や業界全体からの「受け止めは複雑なものになる可能性がある」と懸念を示し、制度の狙いを丁寧に説明するよう求めた。

<地銀頭取からは好意的な反応>

日銀は今年3月に新制度の適用申請の受付を始めたが、地銀頭取からは好意的な見方が出ている。

千葉興業銀行 の梅田仁司頭取は7月6日に実施したロイターのインタビューで、新制度の適用を申請したことを明らかにした。梅田頭取は「これだけ低金利が続く中で、従来の預金・貸出金を中心としたビジネスは限界に来ている」と指摘。銀行ビジネスの改革と経営資源の再配分を同時並行で進めていかなければならない中で「支援していただけるのはありがたい」と語った。

富山銀行の中沖雄頭取は6月のロイターのインタビューで「収益的に後押ししてもらうメリットのある話であり、前向きに検討しない手はない」と述べた。

(和田崇彦)

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