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アングル:日銀総裁、物価2%に近づく可能性に言及 上昇加速へ懸念も

[東京 15日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は15日の衆院予算委員会で、消費者物価指数が2%に近づく可能性に言及した。市場では、先行きの物価上昇を見据え、経済の回復や米連邦準備理事会(FRB)の利上げなどの条件がそろえば、2023年4月の黒田総裁の任期切れまでに日銀が緩和政策の修正に向けた地ならしを始める可能性があるとの見方が出ている。政府内でも物価上昇の加速を懸念し、政策対応の必要性を指摘する声が一部で出始めている。

 12月15日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は衆院予算委員会で、消費者物価指数が2%に近づく可能性に言及した。都内の日銀本店で2019年7月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<CPI、来年4月以降に1%台後半も>

この日の予算委員会では、立憲民主党の階猛委員が足元の経済・物価情勢はスタグフレーションでないかと指摘、それでも日銀は現行の大規模な金融緩和を継続するのかと質問した。

黒田総裁は「スタグフレーションではない」と否定した上で、直近の消費者物価指数(CPI)が前年比プラス0.1%(10月、除く生鮮)にとどまっているのは携帯電話料金値下げが1.5ポイント下押ししているためと説明。11月に前年比プラス9.0%と41年ぶりの伸びとなった企業物価指数がCPIにすぐに影響するとは考えていないが、「CPIが様々な経路を経て2%に近づく可能性はある」と発言した。

消費者物価はこのところ、携帯電話料金値下げが前年比での下押し要因となっているが、来年4月以降はその要因がはく落する。足元では企業物価の上昇が加速、円安や原油高が物価押し上げ要因となっている。

エコノミストからは先行きの物価の伸びを予測する声が出ている。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、携帯電話料金のさらなる値下げがなく、様々な商品やサービスに値上げが広まることを前提に「コアCPIが来年4―6月期に1%台後半の伸びになる可能性がある」とみている。

<物価目標、賃上げの実現がカギに>

黒田総裁は15日、あくまでも経済が成長して企業収益が増え、賃金上昇を伴う形での物価上昇が望ましいとの見解も示し、「金融緩和を粘り強く続けていきたい」と語った。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは「輸入物価を通じて国内物価に上昇圧力が掛かってきた場合に、賃金が遅れずに上がっていくかどうかが持続的な物価目標達成のカギになる」と話す。

岸田文雄首相は6日の所信表明演説で「世界の物価が上昇し、わが国に波及する懸念が強まる」とした上で、「経済を守るためにも、賃上げに向け全力で取り組む」と表明した。政府として物価上昇が消費の下押しとならないよう賃上げを強く経済界に求めている。

<物価上昇、先行きへの懸念>

政府内では、現時点で物価上昇は主要テーマになっておらず、日銀に政策対応を求める声も目立っていない。

ただ、先行き物価上昇ペースが拡大することを懸念する声が一部で出ている。米国の金融緩和縮小による円安方向への圧力に対して、ある経済官庁幹部は「食品などの値上げはCPIよりも早いペースで加速しており、CPIが上昇する前に消費が下押しされる可能性がある。理論的には物価上昇対策の検討がいずれ望まれる展開だ」と話す。

また、一部政府・与党関係者の間では「日銀が利上げする必要はないが、1ドル=115円以上の円安は日本経済に厳しい。上場投資信託(ETF)の買い入れ量を減らすなど資産買い入れの調整で円安圧力を緩和して欲しい」(元経済官庁幹部)などの声が聞かれ始めた。

大和証券の岩下氏は、黒田総裁の任期中に緩和政策の修正に向けた地ならしが始まる可能性があるとみている。ただ、物価の上昇基調に加え、コロナ前の水準に経済が回復することやFRBの利上げが地ならしを始める条件になると話す。

(竹本能文、和田崇彦 編集:石田仁志)

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