August 22, 2018 / 3:33 AM / a month ago

インタビュー:物価2%達成前の政策変更ありうる=石田元日銀委員

[東京 22日 ロイター] - 石田浩二・元日銀審議委員は、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が掲げる物価2%目標は年金制度などの持続性を考慮すれば妥当としながらも、金融政策の目的ではないとし、必要であれば目標実現前に日銀が柔軟に政策変更を行うことはありうるとの見方を示した。

 8月22日、石田浩二・元日銀審議委員は、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が掲げる物価2%目標は年金制度などの持続性を考慮すれば妥当としながらも、金融政策の目的ではないとし、必要であれば目標実現前に日銀が柔軟に政策変更を行うことはありうるとの見方を示した。写真は都内でインタビューに答える石田氏。21日撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

2013年4月に導入した大規模な量的・質的金融緩和(QQE)は資産価格や企業収益の拡大に寄与したが、需要刺激や物価を押し上げる効果は限定的だったと総括。大規模緩和の長期化で地域金融機関の統合・再編の時間軸は「相当に早まっている」と語った。

石田氏は三井住友フィナンシャルグループ専務などを歴任し、11年6月に日銀審議委員に就任。任期満了まで5年間の在任中には、黒田東彦総裁が就任直後に打ち出したQQEに賛成したが、14年10月のQQE拡大、16年1月のマイナス金利政策の導入には反対票を投じた。

インタビューは21日に行った。詳細は以下の通り。

──QQE導入から5年余りが経過したが、依然として物価2%目標の実現は遠い。

「QQE導入で資産価格が上がり、景気の基調が前向きに転換され、企業収益が拡大したことは事実であり、プラス面と評価できる。一方で貸出やマネーサプライ、個人消費に顕著な増加はみられず、物価は底堅くはなったが、それを段階的に上げていく力は残念ながらなかった」

「政策効果の波及メカニズムとして、イールドカーブを押し下げることで資金需要や貸出の増加を促し、物価が上昇に向かっていくというストーリーがあったが、それらの顕著な増加は認められない。企業、家計の支出の決定要因において金利のウエートがそれほど高くない中で、金利水準は十分に低く、資金需要の刺激効果は極めて限られた」

──期待への働きかけも重要だ。

「QQE開始後しばらくは市場が大きく反応し、株高・円安が進んだことを受けて期待全般に効果があった。もっとも、期待は現実になって初めて補強され、次の上昇につながる。実際の物価が上がらない中で、効果が薄れてしまった」

──物価が鈍い中で、日銀は16年9月にイールドカーブ・コントロール(YCC)政策に移行した。

「金融市場の操作目標を量から金利に変更し、短期決戦から持久戦に転換した。ただ、本質的な分岐点は14年10月のQQEの拡大だったと思う。原油価格の急速な下落によって現実の物価が下がっていくと予想することが自然な状況になり、この時点で短期間で期待を抜本的に転換するQQEの役割は終わった。このタイミングが政策をより安定的、持続的なものに転換する分かれ道だった」

「しかし、現実にはQQEを拡大し、引き続き2年程度で物価目標の達成を目指すとされた。これによって、達成が遅れれば、日銀はさらに強力な拡大策をとるとの期待が市場に定着してしまった。多少でも緩和の後退ととられかねないコミュニケーションや政策を行うことが極めて困難になった」

──7月末の金融政策決定会合では、長期金利の一定の上昇を容認する一方、当分の間、極めて低い金利水準を維持する措置を決めた。

「16年9月の政策決定の延長線上にあることは明らかだ。金利コントロールの上限を上げ、ETF(上場投資信託)は買い入れ目標額を下回ることもありうべしとなった。買い入れ額の圧縮が可能な枠組みになったことは確かで、政策の持続性はさらに高まったといえる」

「今後は市場を刺激しないよう、日銀はイールドカーブのスティープ化を急がないだろう。ただ、市場安定など状況が許せば、金利上昇を容認することになるのではないか」

──金融緩和の長期化による地域金融機関の収益への影響も無視できない。

「現在の金融システムは資金不足の時代にできあがっている。それが資金余剰期に入ってオーバーバンキング状態となり、もともと再編・統合が進む方向にあった。大規模緩和の進行によって、その時間軸が相当に早まっている」

「全体では大規模な合理化が必要だが、その際には相当の人員の余剰が発生する可能性がある。人員の円滑な転用、有効な活用の実現が地域経済には不可欠。金融機関の規制緩和で業務範囲を拡大し、人員の受け皿を確保する施策が必要になるだろう」

──そもそも物価目標の「2%」は妥当なのか。

「日銀法には金融政策の目的として『物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する』と書かれている。物価目標は、その目的を達成するための金融政策運営の仕組みであり、金融政策の目的という理解はあり得ない。物価2%が達成できれば、国民経済の健全な発展がもたらされるわけではない」

「金融政策で貨幣供給量が決まり、それによって物価が決まるとの考え方があるが、QQE開始後のマネタリーベースの伸びに対する物価の推移をみると、妥当とは思えない。そうであれば、物価指数を構成する個別物価の評価をより重視して政策判断に反映していく必要があるのではないか」

「もっとも、2%の目標自体は結構だと思う。年金や保険、貯蓄は経済の骨格を支える重要な制度であり、それが成り立つには、ある程度のプラスの金利が必要だ。2%程度のインフレ率を上回る金利水準が望ましく、柔軟に運用できれば、2%目標はありうべき水準と考えている」

──金融緩和を縮小する出口は見通せない。

「QQE開始時から状況は大きく改善し、金融政策の自由度は高まっている。2%目標自体が金融政策の目的ではないので、必要と判断すれば目標達成前でも柔軟な政策判断がなされると思う」

「金融政策の正常化の際には、バランスシートに積み上がった巨額の国債や株式が、日銀の損益や自己資本に深刻な影響を与える可能性がある。政府と日銀を連結してみれば損益は中立だとか、中央銀行が債務超過になっても実質的な問題はないなどとする議論があるが、世の中には通じないだろう。多額の損失が発生した場合、一般の人々による日銀への信用、信頼が損なわれる懸念がある。QQE開始に賛同した者として、とても気になる。どのような反応が起こるか測り難い」

伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦

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