February 1, 2016 / 7:58 AM / 3 years ago

焦点:マイナス金利で円は黒田レンジに、薄れる金利差期待

[東京 1日 ロイター] - 日銀マイナス金利導入後のドル/円について見方が揺れている。円安材料ではあるものの、米経済が減速しており、日米金利差が拡大するか見極めが難しいためだ。110円に向かうような円高は阻止されたとしても、上値も限定的で、115─125円の黒田「レンジ」に入ったとの見方が出ている。

 2月1日、日銀マイナス金利導入後のドル/円について見方が揺れている。写真は日銀の黒田東彦総裁。都内で1月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

<日米金利差は本当に開くか>

米経済が減速している。前週29日に発表された昨年10─12月期実質国内総生産(GDP)速報値は、季節調整後の年率換算で前期比0.7%増。7─9月期の2.0%増から急ブレーキがかかった。

日銀がマイナス金利政策を導入したことでドル高/円安が進むとの見方の背景には、日米金利差の拡大予想がある。金利カーブの起点である政策金利にマイナス金利が導入されたことで日本の金利が一段と低下する一方、すでに利上げ路線に乗った米国では金利が上昇するとのシナリオだ。

しかし、前週末時点で比べると、ドル/円取引のベースとされやすい2年債はむしろ日米金利差が0.5ベーシスポイント(BP)縮んでいる。GDPなどを受けて米経済減速懸念が強まり、米2年債利回りが大きく低下したためだ。市場では、米連邦準備理事会(FRB)が見通しで示す年4回の利上げを信じている向きはほとんどいない。

一方、日米10年債の金利差は6.5BP拡大(29日時点)した。だが、三井住友信託銀行のマーケット・ストラテジスト、瀬良礼子氏は、欧州も緩和政策を進めるなかで、日欧から米国債を求めるマネーが流れ込めば「その分、ドルのイールドはつぶれる」と指摘する。

<参考になりにくいECBのケース>

欧州中央銀行(ECB)は、日銀よりも先にマイナス金利を導入したが、当時は米国が利上げに向かう途中であり、米金利が上昇しやすい環境だった。

米独の2年債の金利差は、ECBがマイナス金利を導入した2014年6月当時は約30ベーシス程度だったが、15年3月にかけて約90ベーシスに拡大。1.35ドル付近だったユーロは1.05ドル水準に下落した。

当時は、キャリートレードで、ファンディング通貨として円よりユーロが選好される傾向が強まり、ユーロ安を後押しした面もある。しかし、今は米利上げを機にグローバル金融相場が大きく構造変化を起こしている最中だ。円が再びファンディング通貨として使われるかはわからない。

また、日銀の打ち出したマイナス金利の仕組みは、ECBとは異なりスイスのように階層構造となっており、効果はECB方式よりも緩やか。適用される規模も明確になっていない。三菱東京UFJ銀行の市場企画部チーフアナリスト、内田稔氏は「円安効果は、マイナス金利導入時のユーロ安に比べれば限定的になりそうだ」と指摘している。

<日銀追加緩和の低くないハードル>

日銀の黒田東彦総裁は29日の会見で、緩和政策には従来の「量」と「質」に「金利」が加わったとし「3次元のオプションを、必要があればちゅうちょなく活用する」と先行きの緩和余地を強調した。しかし、米経済が鈍化する中では「フリーハンド」ではないとの見方も市場では多い。

10─12月期米GDPが減速したのは、暖冬で個人消費が鈍かったことや原油安の影響、新興国経済減速もあるが、ドル高によるグローバル企業の業績圧迫も大きかった。日銀の追加緩和によってドル高(円安)が進めば、米経済が圧迫、世界経済を下押ししかねない。リスクオフの円高が進めば、マイナス金利の円安効果は削がれる。

さらに、中国人民元との関係も見逃せない。日銀のマイナス金利導入で円が下落する一方、人民元の実効レートが上昇している。「中国は人民元を大幅切り下げしてくる可能性がある。それがリスクオフにつながりかねない」とみずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は指摘する。

<「黒田ライン」は「黒田レンジ」に>

外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏は「今後数カ月は、ドルは115─125円の黒田レンジでの推移になりそうだ」とみる。

昨年6月10日の衆院財務金融委員会で、黒田総裁は、当時の円安進行に関連して「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている」としたうえで、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」などと発言した。

ドル/円水準が124円半ばでの発言であったため、125円は「黒田ライン」として以後、市場で意識されるようになった。一方、いったん115円台に突入して間を置かず追加緩和が打ち出されたことで「下値も115円で堅くなった」(神田氏)という。

年初からの円高傾向で後退していたドル高/円安説。日銀のマイナス金利導入で、130円説も再び頭をもたげてきた。ただ、現時点で主流派となりつつあるのは「115円のような円高は許容できないということでのマイナス金利導入なのだろうが、日米金利差が開かない中で125円を超えるのは、また難しい」(米系証券エコノミスト)との見方のようだ。

平田紀之 編集:伊賀大記

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