[東京 13日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は13日の衆院財務金融委員会に出席し、「日本の財政・金融政策運営が現代金融理論(MMT)を裏付けているということは全くない」と改めて主張し、財政赤字を中央銀行の国債購入で賄えば急激な物価上昇を招くと指摘した。末松義規委員(立国社)への答弁。
黒田総裁は財務官時代、日本国債の格下げに対して反論し自国通貨建て国債のデフォルトはあり得ないとの見解を示していた。自国通貨建て国債を発行できる国は、急激な物価上昇が起こらない限り財政赤字を中銀の国債買い入れで補てんできるとのMMTの立場に近いとの見方があり、末松氏は黒田総裁に現時点での所見を質した。
黒田総裁は一般論とした上で、「日本国債が市場で評価されているのは国債の償還能力に対する信認が前提で、仮に市場で信認を失う事態が発生すれば金利が上昇し、国の市場からの資金調達が困難になる可能性もある。したがって、中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかり確保することが重要」と述べた。
その上で「MMTについてしっかりしたマクロ経済学的な裏付けがあるわけではなく、財政政策は債務残高など考慮せず景気安定に専念し、中央銀行がこれをファイナンスすれば大丈夫という議論だと思う。仮にそうなれば大変なインフレが起こる恐れがあり、金融システムがおかしくなる可能性もある」と懸念を表明した。
さらに「(日本の)経済政策運営がそうした考え方に沿って行なわれているということではない」と強調。政府は市場の信認確保に努めており、日銀も「物価目標達成のため最も適切なイールドカーブを形成するよう市場から国債を買い入れており、あくまで物価安定のため必要な政策」と公式見解を述べた。
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