January 29, 2018 / 12:33 AM / 4 months ago

米サブプラ問題で利上げ議論失速、政策委員にジレンマ=07年7─12月日銀議事録

[東京 29日 ロイター] - 日銀は、2007年7─12月の金融政策決定会合の議事録を29日に公表した。経済・物価が日銀のシナリオに沿って推移する中で、量的緩和解除後の3度目の利上げを模索するが、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の深刻化で株安・円高が急速に進行、追加利上げ議論は失速する。一方で原油価格は上昇し、動揺する金融市場との狭間で、政策委員らのジレンマが今回の議事録から浮かび上がる。

 1月29日、日銀は、2007年7─12月の金融政策決定会合の議事録を公表した。経済・物価が日銀のシナリオに沿って推移する中で、量的緩和解除後の3度目の利上げを模索するが、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の深刻化で株安・円高が急速に進行、追加利上げ議論は失速する。写真は会見する黒田日銀総裁。23日撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

<7月会合で水野委員が利上げ提案、市場は8月に照準>

当時は好調な海外経済を背景に、日本の景気も現在と同様に「緩やかに拡大」を続けていた。日銀のシナリオに沿って経済・物価情勢の改善が続く中で7月11、12日の会合の議論からは、政策金利(当時0.5%)の引き上げを模索していた状況がうかがえる。

すでに証券化市場などで表面化していたサブプライムローン問題について「事前の予測はなかなか難しく、今後よく注意していく必要がある」(福井俊彦総裁)と今後の広がりに警戒感を示しつつも、委員らは4月に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」のシナリオに沿って経済・物価が推移しているとの認識を共有。市場の予想では、8月会合における0.25%の利上げ確率が8割程度まで高まっていた。

こうした中、7月会合で水野温氏審議委員が0.75%への利上げ提案に動く。経済・物価情勢の判断に加え、低金利を背景に活発化する円キャリートレードなどを念頭に「早めの政策対応が、為替相場や国際商品市況の安定に副次的に寄与する可能性がある」ことも理由に挙げた。

サブプライム問題がくすぶる中で他の委員の賛同を得られず、反対多数で否決されたものの、会合では複数の委員が「金利水準の調整を検討すべき局面に差し掛かりつつあるのではないか」(亀崎英敏審議委員)、「標準シナリオのがい然性にある程度確信が得られれば、躊躇(ちゅうちょ)なく政策変更を提案したい」(須田美矢子審議委員)と利上げに前向きな姿勢を示している。

福井総裁も会合後の会見で、展望リポートのシナリオに沿った動きが続けば「将来政策変更を行って間違いないという確信につながると思う」と発言。8月会合に向けた市場の利上げ期待はつながれた。

<パリバ・ショックで市場動揺、政策変更なら拍車>

ところが、8月に入って事態は急変する。9日にフランスの大手銀行BNPパリバ(BNPP.PA)が傘下ファンドの解約の一時凍結を発表し、世界の金融資本市場が急速に不安定化。東京市場も7月に1万8000円台の年初来高値を付けた日経平均株価.N225が22、23日の決定会合前に1万5000円台まで急落し、外国為替市場でも円キャリートレードの巻き戻しが進み、120円を超えていたドル/円JPY=EBSは114円台へと円高が進んだ。

8月会合では、福井総裁が「このところの国際金融資本市場での振れの大きな展開と、これを踏まえた経済物価情勢の見通し、リスクを再点検すること」を情勢判断のポイントに挙げ、顕在化したリスクへの警戒心を露わにした。

金融市場の動揺を受け、追加利上げ議論も後退を余儀なくされる。日本経済は日銀のシナリオ通りとの見方を多くの委員が維持したが、岩田一政副総裁は「短期的には、全体としてやや下振れのリスクが出ていると思っている」とし、「今はしっかりと国際金融市場で生じていること、それが実体経済に与える影響を見極める、冷静に客観的によくそのインパクトを見極めることが重要だ」と主張。

野田忠男審議委員も、政策変更は「市場に無用のサプライズを与える」と述べ、「それが市場をさらなる混乱に陥れるリスクの大きさは、計り知れないものがある」と市場安定を優先すべきと表明している。

一方、水野審議委員は7月会合に続いて0.75%への利上げを提案。サブプライムローンの実体経済への影響を確認するには時間がかかるとし「今回利上げの判断を先送りすれば、数カ月にわたって判断を先送りすることになり、再び過剰流動性の問題を放置することになりかねない」と早期利上げの必要性を訴えた。

西村清彦審議委員は金融市場と経済・物価情勢への対応に関して「金融市場機能不全に対して行う中央銀行による流動性供給と、マクロ経済政策として中央銀行が行う金融政策の原則的な区別について、明確にしておく必要がある」と提言。これに対して他の委員からは、現実の政策において区別することの難しさを指摘する声もあがった。

<原油高でインフレリスクも>

焦点となっていた8月会合で政策は現状維持となり、市場の利上げ観測も大きく後ずれする。その後も金融市場の不安定な状況は継続し、次第に震源地の米国経済にも陰りが見え始め、西村委員は10月31日の会合で「米住宅市場の底割れ、金融市場の不安定化からダウンサイド・リスクが高まったといわざるを得ない」と発言している。

それでも物価は、原油高を背景に上振れ気味で推移する。同会合で武藤敏郎副総裁は「過熱気味の中国経済、原油価格の高騰などを踏まえると、世界経済全体としてインフレ方向のリスクがある」と指摘。

11月12、13日の会合では、須田委員が「ガソリン価格などで物価が上昇し、国民のインフレ期待も高まっているにもかわらず緩和政策を採り続けるとしたら、スタグフレーション的な状況を生じさせる可能性もある」とし、「やはり人々のインフレ期待を沈静化させるための利上げは必要」と苦悩を明かしている。

岩田副総裁は12月19、20日の会合で「原油価格がこれほど上がってしまうと、重要な影響として日本にとって交易条件が悪化、均衡失業率を高める効果がある」、「内需を押し下げる一方で、物価を押し上げるということが起こっているのではないか」と景気への警戒感をにじませた。

委員らを悩ませたサブプライムローン問題は、それから約1年後の08年9月に発生した米リーマン・ブラザーズの経営破綻(リーマン・ショック)をきっかけに、世界的な金融危機へ発展する。日銀はリーマン・ショック後に利下げを行うまで0.5%の政策金利を維持し続けることになる。

武藤副総裁は、7月の会合で「一定の時間経過後に振り返って、あの時と今とでは変わらないからあの時もできたのではないかとの理論は、評論家の議論であって、政策判断者の議論ではない」とし、「一定の時間の経過というのは、仮に何も起こらないとしても非常に重要な政策的意味合いがある」と語っている。

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    伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦

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