December 25, 2017 / 7:47 AM / a month ago

インタビュー:収益力強化、金融機関は着手を=宮野谷・日銀理事

[東京 25日 ロイター] - 日銀の宮野谷篤理事はロイターとのインタビューに応じ、人口、企業数の減少という構造問題を背景に金融機関間の競争が激化しており、将来的に金融政策が正常化に向かっても、金融機関収益は期待ほど改善しない可能性があると語った。超低金利環境がさらに長期化すれば金融機関の基礎的収益力は一段と弱体化すると述べ、景気が好調で自己資本が充実している今の段階から、地域金融機関は収益力強化に取り組む必要があると述べた。

インタビューは22日に行った。主なやりとりは以下の通り。

──日銀による超低金利政策が金融機関経営に与えている影響。

「マイナス金利を含む既往の金融政策が、資金利ざやの縮小を通じて金融機関収益を大きく圧迫していることは間違いない。一方で、金利低下による債券売却益の計上や、景気回復に伴う信用コストの低下などプラス面もある」

「ただ、債券キャピタル・ゲインを得られる余地はかなり減少しており、信用コストの一段の低下も期待し難い。そうした中で資金利ざや縮小のデメリットが大きくなり、金融機関の不満が強まっている」

「もっとも、ほとんどの金融機関が当期純利益で黒字を計上しており、自己資本も非常に厚い。現時点で金融仲介機能は円滑に働いており、金融システムの安定は維持されている。現在のイールドカーブ水準は、金融仲介機能を阻害するなど、過度に金融機関経営を圧迫しているとは考えていない」

──超低金利政策のさらなる長期化も想定される。

「低金利の影響は累積的に効いてくる。現在の低金利環境が長期化すると、金融機関の基礎的収益力が一段と弱体化し、収益確保のために不動産関連投資や有価証券運用などで無理なリスクテイクに走り、金融面の不均衡が蓄積する過熱方向のリスクがある」

「一方、収益力の低下が長引き、金融仲介機能が低下する停滞方向のリスクもある。考査やモニタリングを通じて金融機関収益への影響、生じ得るリスクの両面について注意深くみていきたい」

──金利が上昇局面に入れば金融機関収益の改善が期待できるのか。

「一般的には、経済・物価情勢が改善するもとでイールドカーブが今よりもスティープ化すれば、預貸利ざや、資金利ざやの改善を通じて金融機関の基礎的収益力は改善する。ただ、人口や企業数が減少する中で、日本の金融機関の従業員数や店舗数は需要対比で過剰となっている可能性が高く、金融機関間の競争は今後も激化が避けられない」

「金融政策はいずれ正常化するが、人口、企業数が減り続ける構造要因は変化しない。市場金利が上昇したとしても、貸出金利の引き上げが十分に進まず、利ざやが思ったほど改善しない可能性がある。金利が上がる環境になっても、以前の良好な収益環境に戻れるわけではない」

──金利が上昇局面に入った場合の金融機関経営の留意点。

「金融機関が保有する債券の値下がりや、貸出先企業の利払い負担の増加を通じた信用リスクへの影響が考えられる。長年にわたって低金利環境が続いており、環境が変化した際に、リスク管理を適切に行える体制の構築も課題になる」

──地域金融機関経営の課題。

「日本の金融機関は手数料など非金利サービスから得られる収益が限定的であり、企業取引をめぐる競争は、貸出金利の引き下げ競争になりやすい。今後も極めて激しい競争が続く場合、中長期的には多くの金融機関の損失吸収力が同時に損なわれたり、多くの先が同時に赤字になり、各地域の金融仲介機能が低下するリスクも否定できない」

──収益力強化に向けて地域金融機関に求められること。

「景気が良く、自己資本基盤も厚い今の時点から、収益力向上に取り組んでいく必要がある。具体的には、ビジネスマッチングや事業承継などを通じて、貸出サービスの差別化を図るとともに、手数料収入の確保など金利以外で自らの強みを生かし、収益源の多様化を図っていくことが重要だ。トップラインを短期間に上げるのは難しいので、経営の効率性を高め、生産性を向上させることが急務といえる」

「スマートフォンの普及などで、店舗の位置付けも大きく変わっている。IT活用も含めて業務改革を行い、機械化を大きく進めれば、より少数の人員で良質なサービスを提供できる。結果として設備と従業員の適正配置が可能となり、生産性も向上する」

「日銀として、考査・モニタリングだけではなく、セミナーや説明会などを通じて金融機関の収益管理力、経営効率性を高める取り組みをサポートしていきたい」

──地域金融機関の合併・統合の必要性。

「収益性や効率性を改善させるための選択肢の1つと考えている」

──公正取引委員会の審査が長引き、地銀の統合が遅れているケースがある。金融機関の競争政策のあり方は。

「競争政策上、非金融部門については効率性が最も重要だが、預金取扱金融機関はそれだけではない。金融機関が破たんした際の社会的コストは、他の産業より大きい。効率性に加え、競争が経営の安定性に及ぼす影響も重要な視点になる」

──商工中金の不祥事が発覚し、民業圧迫との批判がある。政府系金融機関のあり方。

「民業の補完に徹するべきというのが大原則だが、民間金融機関でも与信が可能な信用力の高い企業に貸出を行っているのが実態であり、貸出競争を激化させる一因になっている」

「大きなショックへの対応を含めて民間が応じにくい分野でも、政府系金融機関が直接、多額の元本を企業やプロジェクトに貸し出す必要はない。協調融資や利子補給、リスク保証などで対応することが、民業補完の原則により適合するのではないか」

──金融庁は資産査定中心の検査手法からの転換を図っている。日銀考査における資産査定の考え方。

「資産査定を続けているが、過去のように金融機関の自己査定における個別の正確性を確認する細かい作業はやっていない。今は企業倒産が少なく、信用コストも安定しているが、悪い時も必ずくる。金融機関も日銀も資産査定のノウハウをしっかり継承するとともに、時代に合致したかたちで資産査定の能力を向上させていくことが非常に重要だ」

伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below