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アングル:新日銀審議委員2人の就任、出口への「分岐点」か市場も注目

[東京 26日 ロイター] - 日銀政策委員会の審議委員に高田創氏と田村直樹氏が就任したことは、出口戦略へ向けた分岐点になるとの見方が金融市場では出ている。両氏とも25日の会見で、現在の日銀の政策に肯定的な見方を示しながら副作用にも言及。すぐに政策修正を提案する可能性は低いとみられるものの、市場参加者の間では、将来の金融正常化議論をリードするとの見方が強まっている。

 日銀政策委員会の審議委員に高田創氏と田村直樹氏が就任したことは、出口戦略へ向けた分岐点になるとの見方が金融市場では出ている。写真は2016年9月、都内の日銀本店で撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

<次回会合では「動きなし」との見方>

円安や物価高について、就任会見では両氏とも強い切迫感はみせなかった。高田氏は為替相場安定に向けた対応の必要性に触れつつも、短期的な動きへの対応には否定的な見解を示した。田村氏は「為替相場を注視し、経済・物価への影響に応じて金融政策を取っていくことに尽きる」と述べるにとどめた。

これまでも日銀審議委員の就任会見は、独自の考えを強調しすぎない「安全運転」で終わることが多かったが、市場では「少なくとも次回会合(9月21─22日)で政策修正提案をするのであれば、円安や物価に対して強い危機感を示す発言があったはず」(国内証券)とみられている。

みずほ証券のチーフ債券ストラテジスト、丹治倫敦氏は「両者とも、緩和の副作用に一定の配慮を示しているものの、インフレ圧力に対して早急な対応が必要と考える伝統的なタカ派色が強いというわけではない」と指摘。政策修正の「第一歩」が本格的な出口に向かう動きと誤解され、金利が急上昇するリスクが大きい現在の環境下では、実際に緩和修正の提案が行われる可能性は低いとみる。

高田氏は、日銀が現在採用するイールドカーブ・コントロール(YCC)政策についても肯定的な認識を示している。貸出金利や資本市場での調達コストの低下を通じて「緩和的な金融政策が実現できている」とし、企業の収益や労働市場の引き締まりといった「マクロ的な改善も見られている」と話した。

<新総裁の下で政策修正提案か>

ただ、会見は、将来の政策修正の可能性を感じさせる内容だったとの受け止めも多い。

高田氏は、出口戦略について「今の時点でという状況にはないが、常に考えておくべき論点だ」と指摘。田村氏も「出口戦略を達成できて初めて大規模金融緩和という政策が成功、完結ということになる」との見方を示した。

債券市場に精通する高田氏は、長期の低金利持続で金融機関の利ザヤが縮小し、国債市場の機能度低下も課題になっていると指摘。マイナス金利については、金融機関の収益に影響がある半面、信用コストの低下や企業活動の前向きな動きという効果も見られるとし、「バランスを持って両面のモニタリングをしていくことが必要になってくるのではないか」と語っている。

「就任会見は、黒田東彦総裁の下での政策変更とはならないとの印象を受けたが、将来の地ならし的発言もあり、新総裁の下で政策修正を図っていくことになりそうだ」と、りそなホールディングスのチーフストラテジスト、梶田伸介氏はみる。

<「勢力図」に変化>

日銀政策委員会内の「勢力図」も微妙に変化するとみられている。銀行出身どうしの鈴木人司氏から田村氏への交替では大きな変化がないとしても、リフレ派とされる片岡剛士氏から高田氏への交替は大きな意味を持つ可能性がある。

片岡氏と鈴木氏の在任中は、毎回の決定会合で追加緩和を主張し続けた片岡氏を筆頭に、高圧経済を主張した若田部昌澄副総裁、安達誠司委員、野口旭委員とリフレ派とみられる委員が4人いたが、片岡氏の退任でリフレ派は3人に減る。

一方、鈴木氏は銀行出身者として低金利継続の副作用に警戒感を示し、新型コロナ対応特別プログラムの長期継続にも消極的なスタンスを採るなどボードメンバーで最もタカ派と目されてきた。市場では「鈴木氏の代わりに、市場機能を重視する高田氏が最もタカ派に位置づけられるのではないか」(エコノミスト)との声が出ている。

黒田総裁の任期は来年4月。副総裁2人もほぼ同じタイミングで交替する。リフレ派とされる片岡氏から高田氏への交替は、岸田首相が自ら決めたとみられている。

「(高田氏と田村氏は)資源分配機能など金融政策の中長期的な影響をよく認識されている方々だ。現在の日本経済からみて、いますぐに利上げに向かう状況とは言えないが、後世、日銀の政策がいつ変わったのかを振り返れば、高田氏らに変わったときが分岐点だったと認識するのではないか」とBNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏は指摘している。

(伊賀大記 和田崇彦 編集:石田仁志)

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