[東京 25日 ロイター] - 日銀は24─25日の金融政策決定会合で、金融緩和の現状維持を賛成多数で決めた。一方、強力な金融緩和を続ける方針を明確にするため、政策金利のフォワードガイダンスを変更し、少なくとも2020年春ごろまで、極めて低い長短金利水準を維持するとした。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>
日銀は、保有するETF(上場投資信託)を市場参加者に一時的に貸し付けるられるようにする制度を検討するという。ETF買い入れの持続性を高めるという意思表示だろう。流動性が低下し、市場の一部ではいずれETFの組成すらできなくなるのではないかとの見方がある中、貸し出し先が空売りしたETFを、日銀は買い入れることができる。
貸し付け制度の枠組みにもよるが、実施された場合の市場への影響はあまりないだろう。そもそも日銀が6兆円買っていること自体、一部の個別銘柄を除いて影響はほとんどない。貸し付けるといっても「一時的」であり、無期限ではなく、信用売りと同じように6カ月以内で返済しないといけないなどとなれば、無尽蔵でETFを増やしていくこともできない。
<大和証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏>
フォワードガイダンスの修正は、予想より早く行われた印象だ。現行政策の維持の期間について「少なくとも2020年春ごろまで」との記述を追加したが、今まで漠然としていたものを明確にさせただけで意外ではない。展望リポートでは、物価が簡単には2.0%に達しないことを示しており、粘り強く緩和を継続していくという建てつけなのだろう。
国債補完供給の要件緩和やETF(上場投信)の一時貸付を可能する制度の導入の検討など、詳細な諸措置が示されたのは、緩和の長期化に伴う市場機能の低下を和らげたいのだろう。市場の予想に反してフォワードガイダンスを修正したものの、混乱は起きなかった。市場との意見交換会や幅広くヒアリングを行っていたことが功を奏したのではないか。
<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>
フォワードガイダンスは元々、消費増税の影響を見極めたいとの話だったので、20年春頃を含んでいた印象だった。わざわざそれを明言したのは、物価が上昇していないのに次の一手を打たないのはなぜか、という政策委員会内にもある意見をくみ取ったためではないか。
期限を区切ったことでタカ派的な印象を持つ人もいるようだが、どちらかといえば緩和的な方向の判断だったと受け止めている。
同時に主要国中銀が、相次ぎハト派的な姿勢を示していることを意識した面もあるのではないか。単なる「現状維持」では、相対的にタカ派的な位置づけとなってしまい、通貨高を引き受けさせられかねない。来るべき円高圧力のけん制を狙ったのではないかとみている。
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト 六車治美氏>
黒田総裁は会見で、今回のフォワードガイダンスの修正について、かなり踏み込んで強めた、と発言した。日銀の公表文では「明確化」となっており、強化という言葉は使われていない。総裁からリップサービスが出た印象もある。ただ、時間軸として市場が想定していた将来の利上げのタイミングがさらに後ずれするといった効果はないだろう。来年春まで日銀が利上げできる環境になると想定している市場参加者もほとんどいない。
新しいフォワードガイダンスでは、2%の物価目標は触れられていない。展望リポートの物価見通しを踏まえても、来年春のコアCPIはせいぜいプラス1.1─1.2%のイメージで、距離はそれなりにあり、違和感は否めない。日銀は2%の物価目標自体は見直さないとみているが、現状の長短金利操作目標については物価目標と切り離し、不確実性さえ後退すれば副作用を勘案して調整する、といった方向に進もうとしているようにも受け止められる。
*内容を追加しました。
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