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日銀、緩和度合いの目安で金利重視の手法検討へ=関係筋

[東京 14日 ロイター] - 日銀は20、21日の金融政策決定会合で、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)政策の枠組みを修正する可能性がある。複数の関係筋が明らかにした。

 9月14日、複数の関係筋が明らかにしたところによると、日銀は20、21日の金融政策決定会合で、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)政策の枠組みを修正する可能性がある。写真は日銀本店。7月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

具体的には、金利のゾーン別の下がり具合で緩和度合いを示す手法が検討対象の1つになっているもよう。合わせてマイナス金利の深掘りや、購入する国債年限の調整などで利回り曲線(イールドカーブ)の修正を促す見通しだ。

一方、年間80兆円積み上げる国債買い入れは減額しない見通し。市場との対話をより重視した新たなフォワードガイダンスの手法が検討される可能性もある。

現在のマイナス金利付きQQEでは、マネタリーベース(資金供給量)の目標を掲げた「量」と、多様な資産を買い入れ対象にした「質」、短期金利の誘導対象をマイナスにした「金利」の「3次元」で構成されている。

複数の関係筋によると、この3次元は基本的に維持されるが、緩和効果を図る尺度として、金利の要素を重視した手法の導入が検討対象に上がるとみられている。

具体的には、イールドカーブのある期間に関し、景気を過熱も引き締めもしない均衡実質金利(中立金利)に対して、実質金利がどの程度押し下げられているか、中短期・超長期など金利ゾーンごとの緩和度合いをリファレンス(参照値)として示す案などが浮上しているもようだ。

こうした枠組みの修正の前提として、日銀はマイナス金利付きQQEの「総括検証」を9月の決定会合で行う。

これまで進められてきた検討の結果、今年1月に導入を決めたマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の効果と副作用については、導入後に急速にイールドカーブが平たん(フラット)化する中で、金融機関の収益圧迫や生保や年金などの運用難などの現象が顕在化しているとの指摘がされているもよう。

日銀は、イールドカーブ全体に低下圧力をかけることを狙って金融緩和を進めてきた。

その結果、期間によって金利低下の効果と副作用に違いがあるとし、1)10年以下など中短期金利は銀行の貸し出し増を通じて、企業の設備投資など実体経済への波及効果が相対的に大きい、2)超長期金利は設備投資の刺激効果が限定的な一方、副作用が大きい──などの分析をまとめるとみられる。

超長期で資金調達を行なう企業は、電力などインフラ関連で、景気と関係なく設備投資を行なうとの分析が出ている。

日銀では従来から、緩和効果波及の起点として名目金利とインフレ予想から求める実質金利の動向を重視しており、検証では、それを年限別にさらに精緻化する方向だ。

ただ、日銀が目安とする特定年限の金利水準などを明記するかは未知数。明記すれば数字がひとり歩きし、市場の振幅が大きくなるとの慎重論もあり、幅のある形でイメージを提示する可能性もある。21日の会合までぎりぎりの議論を詰める見通しだ。

また、過度にフラット化したイールドカーブの形状修正を図るため、経済・物価情勢に応じたマイナス金利の機動的な深掘りと、国債買い入れの比重を超長期ゾーンから中期ゾーンにシフトすることなども議論になる見通し。

実際にマイナス金利を9月会合で深掘りし、「追加緩和」と内外に示すかどうかは、ギリギリまで経済・金融情勢を分析したうえで、必要と判断した場合に実行されそうだ。

家計や企業の物価観である期待インフレ率を高めるため、新たなフォワードガイダンスの作成も検討される可能性がある。できるだけ早期に目標の2%達成を目指すとしながら、達成時期の先送りが繰り返されており、日銀と市場との対話を仕切り直す必要があるとの声も日銀内にはある。

外債購入に関しては、日銀内に否定的な声が多い。ただ、一部では「白紙」という見方もある。

国債買い入れの規模では、減額すれば期待インフレ率やポートフォリオ・リバランス効果を低下させるとの懸念が日銀内で少なくなく、年間80兆円の増加ペースは維持される可能性が大きい。

*本文中の誤を修正して再送します。

竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦

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