June 18, 2019 / 12:53 AM / a month ago

アングル:物価目標に思わぬ壁、AIとロボットが労働コスト吸収

[東京 18日 ロイター] - 日銀が目指す安定的な物価2%の実現には、多くのハードルが立ちはだかる。いま、思わぬブレーキになっているのが、ロボットや人工知能(AI)などを活用した企業の省力化投資だ。

生産性向上に向けた企業努力は「日本経済の持続的な成長と様々な不安心理の解消」(黒田東彦総裁)につながり、成長拡大への長期的な恩恵は大きい。ただ、急ピッチで進む企業の生産性向上は、労働コストの上昇を吸収、当面は物価上昇を抑制することになるとみられている。

人手不足の「最前線」ともいえる建設業界。建設需要が増大する中で就業者の高齢化という構造問題に直面する建設現場では、夜のうちに翌日の建設資材を運ぶ作業を作業員ではなくロボットが担当する。溶接や天井の設置などの多くも、いまや人間ではなく自動化作業のひとつだ。

現場のロボット化を積極的に進める清水建設(1803.T)の今村秀夫コーポレート・コミュニケーション部担当部長は「まだロボット元年」とし、「ロボットのニーズがますます高まることは間違いない」と語る。

「斬新で素敵。いろいろなものが早く終わるのでスピーディに動く」。ベーカリーチェーンのアンデルセンの東京・上野店を訪れた主婦は、トレイに載った複数のパンの種類と値段をスキャナーが瞬時に識別するAIレジで買い物を終えて、そう話した。

従来のレジでは来店客1人当たり、平均で90秒程度かかっていた会計が「半分くらいの時間になった」(アンデルセンの植田進クオリティサポート・運営サポート部長)という。

この「ベーカリースキャン」を開発したブレインの神戸壽社長は「ベーカリースキャンの技術は応用範囲が広い。現在、がんの識別が可能な機械を開発中」と医療分野への展開も視野に入れる。

街角では、スーパーやコンビニなどの小売店で、会計を来店客が自ら済ませる「セミセルフレジ」や、商品のチェックも客が行う「セルフレジ」の導入も広がりをみせている。

外食産業では調理の自動化も広がっている。鈴茂器工(6405.T)が開発した寿司ロボットは、1時間に4800貫のしゃりを握る能力がある。ご飯の盛り付けもロボットが行う。同社の鈴木美奈子社長は「ご飯を盛り付ける市場はお寿司の市場よりも大きくなる。営業活動や開発業務に力を入れていきたい」と語る。

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人手不足対策としてロボットやその他のAI技術を活用する事例は業種を問わずに増加しており、今後の技術進歩によって活用が加速することは間違いない。

こうした生産性向上に向けた企業の取り組みは、日本経済全体として供給制約を緩和し、中長期的に潜在成長率の押し上げに寄与する。日銀では企業の生産性向上に向けた取り組みもいずれ限界を迎え、労働コストの上昇が価格転嫁を促すことになるとみている。

しかし、短期的には省力化投資の拡大で労働コストが抑制され、企業が人件費の増加を価格転嫁する動きは鈍りかねない。物価目標との関係で、日銀とっては痛しかゆしの状況と言えそうだ。

編集:北松克朗

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