August 29, 2019 / 3:02 AM / a month ago

追加の金利低下、効果は限定的となる可能性=鈴木日銀審議委員

[熊本市 29日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は29日、熊本県金融経済懇談会で講演し、「追加的な国債金利の低下による金融緩和効果は、これまでと比べ限定的となる可能性がある」との認識を示した。足元では10年最長期国債利回り(長期金利)に低下圧力がかかっており、市場では、マイナス金利の深堀りなど日銀の追加緩和観測も浮上している。

 8月29日、日銀の鈴木人司審議委員(写真)は、熊本県金融経済懇談会で講演し、「追加的な国債金利の低下による金融緩和効果は、これまでと比べ限定的となる可能性がある」との認識を示した。写真は都内で2017年7月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

鈴木委員は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブ・コントロール=YCC)の下で強力な金融緩和を息長く継続していくことが重要」としながらも、「極めて低い長短金利の水準を維持する際には、金融緩和の効果が通常とは異なる形で現れる可能性や副作用をもたらし得ることには留意する必要がある」とも指摘、副作用を見極める必要があるとの認識を示した。

具体的な副作用として、金融機関への影響について、1)将来、景気やクレジットサイクルに変化が生じた場合、貸出先企業の経営悪化が信用コスト増につながる恐れが高まっており、また、金融機関の収益や経営体力が内外金融市場の動向に影響を受けやすくなっている、2)金利が下がりすぎると預金金利利ざやが縮小し収益を上げられなくなり、金融機関の自己資本がタイト化し銀行貸出が減少に転じる可能性がある、3)収益の下押し圧力に耐え切れなくなった金融機関が手数料などを賦課し、預金金利が実質的にマイナスとなれば個人の消費マインドの冷え込みを通じて景気に悪影響を及ぼす恐れがある──の3点を挙げた。

こうした副作用も踏まえ、鈴木委員は「金融政策の効果を考える上で、金融機関を通じて経済全体へと波及するチャネルが重要であり、金融機関が金融仲介機能を十分に発揮できるよう、物価の安定とともに金融システムの安定を確保することが重要だ」と指摘。

「金融システムが不安定化してしまうと、その下で物価の安定を確保することは非常に困難になる」として、先行きについては「副作用が累積していく時間軸も踏まえ、金融機関のリスクテイク姿勢の変化や、低金利環境の長期化が金融機関の収益や貸出姿勢に与える影響を見極めつつ、金融システムの不安定化を未然に防ぐという観点からも、金融政策をこれまで以上に慎重に検討していく必要がある」との認識を示した。

日銀は先月の金融政策決定会合の公表文で「先行き『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と明記した。これについて鈴木委員は「特に海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きい下で『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれるリスクの顕在化を未然に防ぐという、日銀としての対応方針を示したものだ」と説明した。

<海外経済に下振れリスク>

日本経済については、需給ギャップや実質国内総生産(GDP)、設備投資の状況などを踏まえ「景気後退を示唆するような状況には至っていない」と指摘。先行きについても「2021年度までの見通し期間を通じて拡大基調が続く」との見方を示したが、同時に「世界経済を巡る不確実性が大きいことには注意が必要」とも述べた。

具体的には、米国の保護主義的な動きと相手国の反応、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の行方、中東における地政学的リスクとそれに伴う原油価格の変動、欧州や中国の経済活動が急速に落ち込むリスクなどを挙げた。「こうしたリスクへの懸念から国際金融市場が動揺し、世界経済の下押しにつながる可能性がある」として、「海外経済を巡る下振れリスクが高まっている中、日本の企業や家計のマインドの動きも慎重に注視していく必要がある」と警戒感も示した。

物価動向については、足元で値上げの動きが相次いでいることや需給ギャップもプラスを維持していることから「物価上昇に向けた動きが今後中期的に強化されていくための材料は整ってきている」と指摘。物価上昇の鍵を握る家計や企業が予想する先行きの物価上昇率も、賃上げ期待などを背景に「高まっていくものと考えられる」との見方を示した。

ただ「海外経済を中心とする経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある点には、注意が必要だ」とも述べた。

*内容を追加しました。

志田義寧 編集:田中志保

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