August 16, 2016 / 5:26 AM / 3 years ago

アングル:日銀検証、利回り曲線平坦化の功罪議論か 

[東京 16日 ロイター] - 日銀が検討を進めているマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策(QQE)の総括的な検証では、急速に進行している利回り曲線平たん化の功罪が議論のポイントの1つになりそうだ。マクロ政策の専門家からは、平たん化の進行や長期化が継続した場合、金融仲介機能に支障が出るとの懸念も浮上。

 8月16日、日銀が検討を進めているマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の総括的な検証では、急速に進行している利回り曲線平たん化の功罪が議論のポイントの1つになりそうだ。写真は日銀本店。7月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

一部では、金利ターゲットへの転換などのオプションも提示されている。

<マイナス金利と国債買入は「効き過ぎ」>

検証の結果は9月20、21日の金融政策決定会合で公表される。今回の検証は、2013年4月からスタートしたQQEが16年になっても物価2%の目標に達せず、その原因や達成のための手段に関し幅広く検討することを目的に行われている。

日銀は現行政策の波及メカニズムとして、期待インフレ率の上昇と利回り曲線全体の低下による実質金利の低下を挙げている。それにより国内経済の各分野を活性化させ、持続的な成長につなげることを目指している。

だが、足元では消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の前年比上昇率はマイナス圏で推移。期待インフレ率を示す各種の指標は鈍化傾向を示している。

一方、10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTC(長期金利)は、マイナス金利導入後にマイナス圏へと急低下。利回り曲線の平たん化が短期間に進行し、預貸金利ざやの縮小によって金融機関の収益が圧迫され、生命保険会社や年金基金の運用難に拍車がかかっている。

国内金融市場からは、マイナス金利と長めのゾーンを中心とした大規模な国債買い入れという組み合わせが「効き過ぎの原因」(国内金融機関)との指摘もある。

民間の専門家からは、こうした状態が今後も継続すれば、金融仲介機能に支障を来たし、かえって物価2%目標の早期達成の障害になりかねないと懸念する声も出始めた。

日銀関係者の一部からも、すべての年限で想定よりも金利が下がり過ぎ、金融機関の収益圧迫のインパクトが大きくなるとの連想が株安につながった可能性があるとの見方が出ている。

<日銀OBから長期金利ターゲットの選択肢>

元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは9日のロイターとのインタビューで、利回り曲線の平たん化が金融機関の収益を圧迫していると指摘。「年金の存続にかかわる」事態となっていると警告した。

その上で、望ましい政策の枠組みとして、1)マイナス金利の深掘り、2)長期金利ターゲットの導入を提唱。

平たんになり過ぎた利回り曲線の左側(短期ゾーン)を下げて右側(長期ゾーン)を上げ、金融市場調節の目標を量から金利に転換することで、現在保有残高を年間80兆円増加させている国債買い入れを40兆円程度に縮小できるとした。

SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏も、ロイターに寄稿したコラムの中で、国債買い入れについて、保有残高を年間80兆円増加させるというフローから目標をストック(残高)に変更することや、買い入れ年限の短期化など政策対応の柔軟化を主張している。

昨年6月、日銀の中堅3人が「均衡イールドカーブ」という概念について論文を公表し、BOJウオッチャーの注目を集めた。

景気を過熱も減速もさせない金利水準を年限ごとに並べた均衡イールドカーブの概念は、現実のイールドカーブと比較することによって、政策の効果を推し量ることができる。例えば、現実のイールドカーブが下方にあれば、各年限の金利水準は十分に景気刺激的であるということになる。

複数のBOJウオッチャーは、この論文が長期金利ターゲット導入への布石になる可能性を指摘している。

ただ、現行のマイナス金利付きQQEは、量を増やすというメッセージを政策の根幹に据えており、黒田東彦総裁がリードする現在の日銀ボードメンバーが金利ターゲットを採用する可能性は低いとの見方も、一部のBOJウオッチャーの中で根強く語られている。

また、検証後に日銀が新しい政策の枠組みを打ち出した場合、それが「緩和縮小」「引き締めへの一歩」と見られれば、急速な円高・株安要因として市場が反応することも予想される。

黒田総裁は今月2日、麻生太郎財務相との会談後、記者団の質問に答え、検証の結果として緩和縮小の方向に向かうことはないとの趣旨を表明。市場の思惑にくぎを刺した経緯がある。

あるBOJウオッチャーは「検証結果は、分かりやすさが重要だ。市場が混乱するようなメッセージを出した場合、後遺症が残りかねない」と述べ、日銀と市場の円滑な対話が重要と強調した。

竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦

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