[東京 30日 ロイター] - サマーズ元米財務長官は30日、日銀が打ち出した金融緩和のための新しい枠組みについて、イールドカーブ・コントロールや物価のオーバーシュート型コミットメントは歓迎すべき措置だと述べた。
日銀主催のセミナーで記者団に述べた。
サマーズ氏は、イールドカーブをターゲットとすれば、金利を低く維持でき、景気支援に必要な政府の借り入れを促すとの見方を示した。
物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメントについては、インフレ期待の上昇につながるとし、他の中銀も検討すべきと述べた。
サマーズ氏は「黒田総裁と政策委員が、物価上昇率目標2%の実現に向けてはっきりとしたシグナルを送ったことに敬意を表する」「イールドカーブをコントロールする手法は潜在的に建設的だ」などとした。
過度の円高局面では日銀の外債購入も選択肢としたが、競争的な通貨切り下げへの反対論を考慮すると実行は難しいとの見方を示した。
サマーズ氏は「現在の国際情勢からみて競争的な切り下げ政策にはかなりのリスクが伴うと考えている。現状では非常に慎重だ」と述べた。そのうえで、可能性を排除すべきではないが実施に適切な時期ではないとの見方を示した。
現在ハーバード大学経済学教授のサマーズ氏はこの日の講演で、金融危機後の米国の需要低迷、低成長、低水準の雇用を説明するために2013年に取り上げた「長期停滞論」や、政策当局者がいかに対応すべきかについても語った。
同氏は先進国では、自然利子率はかなり低下しているため、従来の金融政策では完全雇用を生み出すために金利を十分低くすることができないと指摘。
家計や企業の貯蓄率の上昇、人口の伸び鈍化、技術発展による効率化が自然利子率を低下させていると述べた。
また、財政支出はインフレ期待を押し上げることで自然利子率の上昇を助けるとし、各国中銀は政府の借り入れを容易にするために低金利を維持することを基本的な責務とすべきとの考えを示した。
それでも、日銀などすでにマイナス金利を導入している場合、国民が利下げに対抗してタンス預金を始めかねず、マイナス金利をさらに深掘りする余地はあまりない可能性があるとの見解を示した。
同氏は、企業投資における障壁を取り除くなどの一部の構造改革を通じて自然利子率が上昇する可能性があるとの見方もあるが、経済対策は財政および金融政策の協調によって進めるべきだと語った。
*内容を追加しました。
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