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焦点:日銀、YCC効果極大化狙う 米欧物価上昇で目立つ緩和姿勢 
2017年3月16日 / 01:50 / 8ヶ月後

焦点:日銀、YCC効果極大化狙う 米欧物価上昇で目立つ緩和姿勢 

[東京 16日 ロイター] - 日銀による長期金利を誘導対象とした「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」政策の導入から半年、市場の関心は当初の緩和長期化から誘導水準の引き上げへとガラリと変化した。

 3月16日、日銀による長期金利を誘導対象とした「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」政策の導入から半年、市場の関心は当初の緩和長期化から誘導水準の引き上げへとガラリと変化した。写真は日銀本店。2009年11月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

米欧で物価が上がりだす中で、日銀は今こそYCCの緩和効果を最大限に発揮できるチャンスとみているようだ。日銀の狙い通りに物価が上昇し始めるのか、年後半に向けYCCの真価が問われる。

<長期金利ゼロ%維持、これまでよりも効果増大へ>

「待ち過ぎるリスクよりも、早過ぎるリスクの方が大きい」──。市場にくすぶる長期金利目標の早期引き上げ観測に対し、日銀関係者はこう断言する。

市場で目標引き上げの思惑がくすぶるのは、昨年11月の米大統領選でトランプ氏が当選し、「トランプ相場」が出現、ドル高と米株高が進行するとともに米長期金利も上昇してきたからだ。

東京市場では、円安と日本株高が続き、日本の長期金利にもジワリと上昇圧力がかかり出す。そこにトランプ大統領の円安批判が加わり、長期金利が一時0.15%に急上昇。日銀は初の実弾を伴う指し値オペまで繰り出して、鎮静化に追われた。

おりしも米国では2月のコアCPIが前年比プラス2.2%となり、2月のユーロ圏CPIは同2.0%と4年ぶりの高水準を記録。米欧での物価上昇圧力が、ようやく高まってきた。

日本の長期金利上昇圧力には、このような外的環境の変化も影響している。ただ、足元のコアCPIは、1月に前年比0.1%上昇と1年1カ月ぶりにプラス圏に浮上したばかり。

だが、日銀幹部の頭の中には、長期金利目標をゼロ%に固定しているYCCの効果が、今こそ強化されていくという「プラスイメージ」が大きくなっているもようだ。

実際、今後のコアCPIは、エネルギー価格を中心にプラス幅を拡大していく可能性が高まっている。

<ドル/円ボックス相場、物価上昇のチャンスに>

こうした中で、米連邦準備理事会(FRB)が15日に利上げを決定。年4回の利上げ観測さえあった中で、緩やかな利上げペースを明確にしたイエレン議長の発言で、ドル/円JPY=EBSは113円台へとドル安/円高方向に動いた。

ただ、市場では急激な円高を予想する声は少なく、112円─115円のボックス相場の想定が主流のようだ。

日銀内では、この水準でドル/円が安定推移すれば、企業マインドをサポートし、ゆっくりしたテンポながら景気の前向きの循環メカニズムが働き出し、物価も次第に水準を切り上げて行くとの見方が出ている。

このように見てくると、YCCは、導入当初に市場でささやかれていた「超緩和策の長期化」を狙ったとの見方が大幅に後退。世界的に注目されだした金利上昇圧力をYCCによって抑制することで、緩和効果を最大化するという日銀の戦略に現実味が増す可能性も出てきた。

ただ、このシナリオには、いくつかの弱点もありそうだ。1つは、日銀自身が示している17年度のコアCPIプラス1.5%の達成可能性が高まった場合、年度内の長期金利目標引き上げ検討の思惑が高まることだ。

思惑の強さが金利上昇と連動すれば、緩和効果は減殺され、日銀が懸念する円高方向への為替の振れを誘因することになりかねない。

その場合、日銀は長期金利ゼロ%程度の死守に向けて長期国債の買い入れをさらに増やさざるを得ず、政策の持続性に対する疑念が高まる可能性もある。

もう1つのリスクシナリオは、緩和効果の高まりによって円安が進み過ぎ、125円を超えてしまった場合、トランプ大統領の「指先介入」で円安批判が表面化するケース。

市場が急激に反応し、110円台で止まらず100円近辺やそれを超えて円高が進むことになれば、株安と企業マインドの悪化を伴って、連鎖的な収縮局面にぶち当たるリスクが増す。

元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長は、ロイターとのインタビューで、現在は約2%台の日米金利差が4%程度に拡大した場合、日本がキャリートレードの資金供給源として着目され、海外から批判される可能性があると指摘。

「日本の長期金利が0.5%や1%程度に上がっても、日銀が金融を引き締めたとは言われない」とし、海外金利の上昇に合わせた緩やかな長期金利目標引き上げは自然、と主張する。

黒田東彦総裁は「海外の金利が上がったからといって、日本の長短金利操作目標を上げるのは時期尚早」(2月21日、国会答弁)との立場を崩していない。

複数の日銀幹部は、長期金利目標の引き上げが可能となる経済・物価情勢について「持続的な物価2%の実現に確信を持てるかが重要だ」と語る。

だが、「変調」に勘付くと、先回りするのが市場の常。日銀の佐藤健裕審議委員が今月1日の会見で「年末には消費者物価指数が1%程度まで上昇し、その際、長期金利をゼロ%に維持するのは難しい」と年内利上げの可能性に言及したことも、一部の市場関係者の注目を集めた。

日銀が示している「消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、(マネタリーベースの)拡大方針を継続する」との枠組みも、2%と量を関係付けているが、金利水準には言及していない。

そこで、一部の市場関係者からは、コアCPIが1%台に乗せれば、長期金利ゼロ%を引き上げるのではないか、との思惑も出ている。

イエレン議長は15日の会見で、資産圧縮の議論はまだ始まったばかりであるとし、具体的な言及を避けた。引き締め方向のかじ取りは、かなり慎重な対応が求められるということをあらためて印象付ける発言とも言える。

YCCで緩和効果を極大化させ、実際に物価が上がり出した際に、どのようなイールドカーブの形成を目指すのか──。黒田日銀の手腕が問われるのは、まさにこれからと言えそうだ。

伊藤純夫、竹本能文 編集:田巻一彦

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