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アングル:黒田総裁、YCC継続に自信 市場の「ひずみ」顕在化

[東京 17日 ロイター] - 海外金利の上昇で日本の長期金利に強い上昇圧力が掛かる中、日銀の黒田東彦総裁は10年物国債金利を引き続き許容上限の0.25%で抑制する姿勢を明確にし、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運営継続に自信を見せた。しかし、10年金利が許容上限を上回ることも目立ち始め、流動性の低下などYCCがもたらす「ひずみ」も顕在化している。専門家からは、より柔軟な制度運営に転換すべきとの声が出ている。

日銀の黒田東彦総裁は17日、10年物国債金利を引き続き許容上限の0.25%で抑制する姿勢を明確にし、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運営継続に自信を見せた。しかし、流動性の低下などYCCがもたらす「ひずみ」も顕在化している。写真はインタビューに答える黒田総裁。米ワシントンで2019年撮影。(2022年 ロイター/Carlos Jasso)

<限界は生じていない>

イールドカーブ・コントロールに限界が生じているということはない――。黒田総裁は17日の会見でこう述べ、現在の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが実現するよう、指し値オペや国債買い入れの増額、オファー日程の追加など必要な措置を講じていくと説明。適切なイールドカーブの形成は今後も出来ると思うと明言した。

海外金利の上昇もあり、ここにきて10年物金利が許容上限の0.25%を上回る場面が増えているが「ごくわずかなことだ」と一蹴。現時点でYCCを点検する必要はないとした。

しかし、海外の投機筋を中心に債券売りが強まる中、円債市場などには、いくつかの「ひずみ」が顕在化している。その1つが国債市場の流動性問題だ。

<チーペスト銘柄が不足>

大量のショートポジションを組んでいるとみられる海外ヘッジファンドなどは、空売りや先物取引の受け渡しに現物債が必要だが、チーペスト(最も割安)銘柄と呼ばれる国債が少なくなっている。

日本国債の金利曲線では7─9年金利が10年金利よりも高い逆イールドカーブが発生。日銀は国債先物の受け渡しチーペスト銘柄の356回債を対象とした指し値オペを新たに実施し、修正を図った。国債先物の年限は、7年程度の現物債に相当し、現在のチーペスト銘柄が356回債だ。

そのチーペスト銘柄を日銀がオペで大量に購入している。

業者と呼ばれる証券会社も、国債購入の注文を受けた場合、リスクヘッジのショートポジションを作る際に現物債が必要で、流動性低下に直面している

一方、バイサイドなど国債の買い方にとって、流動性の低下は限定的という。「10年債は指し値オペの対象銘柄であっても売るのには困らない。30年や40年債の流動性が低下しているが、日銀による大量購入の影響よりも、世界中の債券市場が混乱しているせいだろう。流動性問題は、立場によって見方が異なる」と、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は指摘する。

<金利上昇抑制と流動性維持>

日銀は17日、チーペスト銘柄に当たる10年利付国債356回債について、0.25%の利回りで無制限に購入する連続指し値オペを「20日以降当分の間」実施すると発表したが同時に、チーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置を実施することも明らかにした。

緩和措置によって、チーペスト銘柄の流動性は改善するとみられている。しかし、金利上昇抑制と流動性維持はトレードオフの関係にある。金利上昇を抑制するために、国債を大量に購入すれば流動性が低下するからだ。10年金利は17日夕方時点で、0.210%まで低下しているが、世界的な金利上昇圧力が続き、日銀が現行のYCC政策を維持する限り、流動性問題が再び起きる可能性は高い。

<YCCの枠組みは「末期症状」>

日銀は10年物国債0.25%での指し値オペについて、原則毎営業日実施することを決定会合後の声明文に改めて明記。会合後、17日では2回目となる指し値オペを実施したほか、20日から当面、チーペスト銘柄の連続指し値オペを実施することも発表し、10年金利を0.25%で抑える強い決意を示した。

しかし、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは10年物国債金利を0.25%に抑え込むことを続けることで「市場機能が低下するばかりか金利のフェアバリューがわかりづらくなる。社債の起債など企業金融への影響が懸念される」と話す。

市場では「日本の10年債の0.25%は海外の投機筋にとって異様に低く見えるようだ。今回、思惑に反し日銀は現状維持を決め、いったん引き下がったが、機会をみて、再びアタックを仕掛けてくるだろう」(外資系投信)との声も出ている。

野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(元日銀審議委員)は「市場の動きをみると、10年国債利回りの変動レンジの上限を死守することはもはや難しくなってきており、枠組みは末期症状の様相を呈している」と指摘。厳格なターゲット設定が、市場に明確な攻撃対象を提示しており、ターゲットを外して緩やかな利回り上昇を一定程度認める柔軟姿勢に転じれば、市場の投機的な動きは弱まり、急激な円安進行のリスクを低下させることもできると提案している。

(和田崇彦 伊賀大記 編集:石田仁志)

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