April 18, 2018 / 7:17 AM / 7 months ago

コラム:日米首脳の結束高める「中国の影」

[17日 ロイター] - トランプ氏が、2016年の米大統領選以来7度目の会談に臨んだ安倍晋三首相は、彼が当選後最初に会った外国首脳であり、両国の同盟関係は過去60年以上にわたり、東アジアの平和維持に寄与してきた。

4月17日、トランプ氏(右)が、2016年の米大統領選以来7度目の会談に臨んだ安倍晋三首相(左)は、彼が当選後最初に会った外国首脳であり、両国の同盟関係は過去60年以上にわたり、東アジアの平和維持に寄与してきた。米フロリダ州ウェストパームビーチで撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

しかし、トランプ大統領が最近、日本の首相を軽んじていることを踏まえれば、今回の日米首脳会談は、これまでに比べ緊張を伴う内容になるだろう。トランプ氏は、新たなアルミニウム・鉄鋼関税の適用除外リストに日本を加えなかったほか、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談する決断についても、事前に日本側に知らせなかった。

安倍首相の訪米は、米朝会談が決まったことを受けて急きょ設定されたものだが、日米首脳には、少なくともほかに2つ協議すべき課題がある。それは通商問題と東アジアで加速する中国の軍事活動だ。

日米が協議するテーブルには、毎回のように「中国」が議題にのぼる。2013年に習近平国家主席が権力の座についてからは、特にその傾向がみられる。

安倍首相は、中国に対抗するためにトランプ大統領を必要としている。そのため、これまでのトランプ氏の振る舞いにほぼ目をつぶらざるを得なかった。2日間の日程で行われる今回の日米首脳会談が、友好的なムードで終わる可能性が高いのも、そのためだ。それ以下の結果ならば、地域の不安定さが増すことを、両首脳は理解している。

通商面で、米国が中国に対して抱えている問題は、1980年代から90年代にかけて、日本に対して抱えていた問題に似ている。

中国と日本は両国とも、数十年にわたり、それぞれ手におえないほど巨額の対米貿易黒字を出してきた。大統領選で、トランプはこの点で日本を批判していた。

だが日本は、常に米国との全面衝突を回避し、自然に問題が解消するのを待った。1990年代半ば以降、中国が米国最大の貿易問題として関心を集めるようになったことにも助けられた。その後、米中の通商問題は、拡大の一途をたどった。

米中の貿易戦争は、もはや通商の問題ではない。今後数十年の世界の指導権を握るのが、資本主義的民主主義制度なのか、それとも中国政府なのか、という問題だ。

中国政府は、輸出拡大と貿易統制を柱とする重商主義と、ほとんど守れらていない市場開放と知的財産保護の空手形を武器に、1990年代からこの「戦争」を戦い始めた。

2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加入したことで、同国がよりアメリカ的に変わると米国民に過大な期待を抱かせたが、問題は拡大する一方だった。

外貨を蓄えた中国政府はいまや、西側システムのルールで動く意思はないことを明確にしている。「交渉」によって、これを変えることはできない。

評価はどうあれ、トランプ氏がこの問題について行動を起こしている最初の大統領であることは間違いない。関税方針を打ち出したことで、西側では、中国を巡る現実について遅ればせながら議論が噴出している。

中国政府がトランプ氏について否定的な評価を抱いていることから、習主席が譲歩することは政治的に困難かもしれない。いずれにしても、中国側が繰り出す新たな約束を信じる人は、トランプ政権内では誰もいないだろう。中国の混乱、もしくは必死さを象徴するかのように、同国はいまや、鉄鋼関税を巡る対応に日本政府の助けを求めようとしている。だが、それは有望だろうか。

日米は、鉄鋼関税問題では何らかの一時的妥協に達すると同時に、2国間または米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰という形での、より長期の通商協定の交渉を行うだろう。トランプ氏は、選挙戦での主要公約の1つを守り、就任直後にTPP脱退を表明していた。

だがTPP再加入は、必ずしも公約破りにはならない。トランプ大統領を支持する地域からの輸出産品を狙って報復関税を課し、政治的な狙い澄ました対応を中国が見せたことで、トランプ支持層も、(TPP再加入の必要性を)理解するだろう。経済が成長し、失業率が低水準にあることも大きい。

何年か時間がかかるかもしれないし、経済的な痛みもあるだろうが、アメリカ人はそれを受け入れ、先に進むだろう。日本人も同じだ。彼らが受け入れないのは、中国政府が支配する世界だ。

米国がTPPに復帰する最大の理由は、習主席が権力の座に就いて以降の中国の軍拡をけん制するために必要な、地域の友好関係と同盟関係を強化することにある。

中国政府は、口約束とは裏腹に、南シナ海において近隣国の排他的経済水域(EEZ)に作った人工島の軍事化を進めている。

この海域での拡張政策に加え、中国が強硬姿勢を崩さないことが、日本だけでなく、ベトナムやフィリピン、マレーシアにとって懸案となっている。中国は、資源豊かな東南アジア諸国の領域に侵入してきている。安倍首相は、この問題では全面的に米国を支持するだろう。

米朝両国が史上初の首脳会談実施で合意したとのニュースを受けた日本側の要請で今回の日米会談は実現した。米国自身の安全を取り付けただけで、日本を北朝鮮のミサイルの脅威にさらしたまま、米朝が合意に至ることを日本は懸念している。日本は、北朝鮮弾道ミサイルが数分で届く近距離にあり、金正恩氏の脅しは日本の大都市の存続を脅かす。

安倍首相は、北朝鮮の核・ミサイル能力の解体を要望しており、今回トランプ氏が北朝鮮に対する強硬派2人を自身の政権に加えたことに安堵しているだろう。

米国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官と、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任したボルトン氏が、核とミサイル問題を巡り北朝鮮との交渉に臨む意気込みの強さは、中国との通商問題に賭けるトランプ大統領のそれに似ている。

安倍首相とトランプ大統領は、カメラの前では団結と友好以外のものは見せないだろう。したがって、会談は具体的な前進には乏しくとも成功裏に終わるだろう。

このような、一見解決不能な問題を解決するには、中国もこの2人の協議に同席する必要があるだろう。そして、安倍首相とトランプ大統領のように、見解が一致することはまずないだろう。

*筆者は経営コンサルタント会社オペラ・アドバイザーズ(クアラルンプール)取締役。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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