October 10, 2019 / 6:45 AM / a month ago

焦点:アマゾン奥地で道路再建、住民の夢か熱帯雨林の枯死か

[レアリダード(ブラジル) 2日 ロイター] - ブラジルにおける森林破壊は常にハイウェイの建設によって引き起こされてきた。50年以上にわたり、森林破壊の第一歩は、アマゾン川流域に密生する熱帯雨林に穿たれる道路だった。舗装道路ができると、続いて木材の伐採が起こり、放牧が始まり、やがて農場経営と街が広がっていく。

アマゾナス州内にある寂れた林業地区、レアリダードでは、その歴史が再び繰り返されそうだ、と環境学者たちは言う。

わずか数十戸のこの集落は、かつて1970年代に軍が建設し、使われないまますぐに荒廃した国道BR319号線の残骸に阻まれている。

約6カ月続く雨期のあいだは、ルートの大半が通行不可能だ。乾期に何とか通ろうとしても、車両は大きな陥没や、ジャングルの瓦礫を避けながら、ボロボロの舗装を何とか乗り越えなければならない。

「ジャガーに襲われないように注意しろ」と、レアリダードの北側区域では地元住民が訪問者に警告する。

<2021年までに道路再建>

今、ブラジルのボルソナロ大統領はBR319の再建という公約を掲げている。一部の科学者は、このプロジェクトは世界最大の熱帯雨林であるアマゾンの将来を左右しかねないと指摘する。

ボルソナロ政権は、この地域の経済を活性化する大掛かりな戦略の一環として、2021年までにBR319再建への着手を計画している。プロジェクトが完成すれば、レアリダードはマナウスと再び接続されることになる(本文はグラフィクスの後に続く)。

(本文続き)マナウスはレアリダードの北東600キロ、アマゾン川に面した人口200万人の大都市だ。これまで、人々はBR319が1年のかなりの期間にわたって不通になるため、ブラジルの他地域からマナウスへの安定した交通は水路か空路に頼るしかなかった。

ボルソナロ大統領は7月、マナウスで催された公開のイベントで「BR319が再舗装されるのは確実だ」と述べた。

大統領府は、ボルソナロ大統領が同プロジェクトについてインフラ担当相タルシジオ・フレイタス氏と協議したことを認めたが、それ以上のコメントは拒否した。

<「枯死サイクル」に入る恐れ>

アマゾン川流域の研究者らは、BR319の再舗装事業が行われれば、アマゾナス州内での森林破壊が急拡大する可能性があるという。同州はブラジル国内で最もよく保全された熱帯雨林を抱えるが、その理由はまさに整備された道路が乏しいからなのだ。

マナウスのブラジル国立アマゾン研究所に所属し、道路と森林破壊の関連を検証してきた米国出身の環境学者フィリップ・ファーンサイド氏によれば、マナウスまでの幹線道路ができれば、自給自足の農家や土地投機業者、伐採事業者がジャングルの奥深くにまで到達できるようになる、という。

ミナスジェライス連邦大学が中心となった調査によれば、このプロジェクトの結果、2030年までに[森林伐採による]更地の面積は5倍に増大すると試算している。これは米フロリダ州よりも大きな面積に相当する。

今年はアマゾン川流域で森林火災が猛威を振るい、ボルソナロ政権が十分に熱帯雨林の保護を行っていないという国際的な批判が浴びせられた。ボルソナロ大統領は自政権の環境政策について弁明する一方で、ブラジルは他の先進国同様に自国の領域を開発する権利を有すると主張した。同氏は各国首脳に対し、ブラジルの内政に干渉しないよう警告している。

ブラジルの代表的な気候研究者であるサンパウロ大学のカルロス・ノブレ氏は、アマゾン熱帯雨林は回復不能点に近づいており、それを越えれば熱帯雨林がサバンナへと変貌する自律的な「枯死サイクル」に入ってしまうと話している。ノブレ氏によれば森林の約15─17%はすでに破壊されており、20~25%が回復不能点になるだろうという。

<アマゾン中心部に新たな開発領域>

こうした熱帯雨林の衰退過程では膨大な量の温室効果ガスが放出される。そのため、気候変動の最悪の影響を回避するための目標とされる、グローバルな気温上昇を摂氏1.5~2度以内に抑えることもはるかに難しくなってしまう、とノブレ氏をはじめとする科学者は言う。

「BR319の再建によって、我々はこの回復不能点を超えることになる。いや、それどころではない」と語るのは、ミナスジェライス連邦大学のブリタルド・ソアレス・フィーリョ教授。同教授は、BR319が再舗装された場合に予想される損失をモデル化したシミュレーションを行っている。「アマゾン熱帯雨林の中心部全体に、まったく新しい開拓領域を生み出すことになる」

政府は、こうした懸念は杞憂であると述べている。インフラ担当省で環境管理担当次官を務めるマテウス・サロメ・ド・アマラル氏は、計画されているBR319再開は、生態学的な破局を招くようなものではないと言う。

同氏はロイターに対し、実際にはこの道路整備によって、環境保護担当者はこれまでより簡単にアマゾン熱帯雨林を監視できるようになるだろう、と話した。「我々がめざしているのは、森林破壊をもたらすことではない」とアマラル氏は言う。

<独裁政権の思惑のツケ>

かつてのブラジルの軍事独裁政権は、人口過疎のアマゾン川流域を近隣諸国に奪われることを恐れ、1970年代にBR319を建設し、ブラジル国民の同地域への入植を促した。この道路は、西側のロンドニア州ポルトベーリョから、ブラジル領アマゾン川流域の中心部と考えられるアマゾナス州マナウスまで、900キロ近くを結んでいた。

 ブラジルのボルソナロ大統領はBR319の再建という公約を掲げている。写真はアマゾナス州ウマイタ近くを通るBR-319。8月22日撮影(ロイター 2019年/Ueslei Marcelino)

1985年に民主主義体制に戻ると、この道路に対する政府の関心は薄れた。1980年代末には、BR319の大半は、轍の刻まれた未舗装道路へと変貌し、緑の森林を走る赤茶けた切れ目に過ぎなくなってしまった。

現在では、きちんと補修された舗装部分は、ポルトベルホから、レアリダードの南方約90キロの都市ウマイタに至る約200キロ、それにマナウスに最も近い177キロの区間に限られている。

その間にあるレアリダードからウマイタまでの区間は、未舗装ながら素朴な道路保守処置により通年での通行が可能だ。しかし、レアリダードから先はほとんど補修されず、したがって文明の恩恵も及んでいない。

<何十年も待った夢を実現>

地元住民の一人、マルセロ・カバルカンテさんは、ボルソナロ大統領が北方のマナウスまでBR319を再整備すると公約したことで期待を膨らませている。中古車ディーラーのカバルカンテさんは、17人の仲間の先頭に立って、このプロジェクトへのメディアの関心と人々の支持を集めることを目的とするデモ行進に参加した。

40歳のカバルカンテさんは、「1970年代、人々は軍事政権が約束した夢を追って、この地域にやって来た」と話す。彼の両親もその時代にウマイタに移ってきた。「それから何十年も経ったが、その夢を実現するのは、彼らの権利だ」。

元ブラジル軍大尉のボルソナロ氏は極右の扇動主義者として知られ、農村地域の利害に訴えることで大統領に当選した後、すばやく行動を起こした。

就任2ヶ月目となる今年2月、ボルソナロ政権はBR319の再舗装に向けた取組みを調整するため、関連省庁すべてを集めた会議を開いた。ブラジル運輸省の国家運輸インフラ局(DNIT)で計画担当ディレクターを務め、この会議にも出席したルイズ・ギレルメ・ロドリゲス・デ・メロ氏が語った。

メロ氏はロイターに対し、法律上必要とされる環境影響調査や認可取得などは、すべて事業開始予定とされる2021年までに完了すると予想している、と語った。

<違法な森林伐採を最小限に>

このスケジュールを守るには、連邦議会で来年度への予算計上が承認される必要がある。議会内の農村地盤の議員らによる有力グループは、インフラ整備プロジェクトを強く支持している。

これまで環境保護団体や検察の告発により、ブラジルの裁判所で他のプロジェクトが阻止された例はある。だが彼らも、地元の強い支持がある以上、BR319の再舗装は実施されるものとほぼ諦めている。阻止に向けた戦いよりも、むしろ環境保全の取組みをプロジェクトに盛り込んでいくことに力を入れると彼らは言う。

ブラジル国内及び国外の6つのNGOによる合同組織「BR319オプサバトリー」の事務局長を務めるフェルナンダ・メイレリス氏は、政府機関に対し、道路整備プロジェクトの後で生じがちな違法な森林伐採を最小限に留めるよう、政府機関に働きかけている、と話す。

アマゾナス州担当の連邦検察官ラファエル・ダ・シルバ・ホシャ氏は、彼の部署では環境関連法の執行について政府に説明責任を求めることを予定している、と話す。

「この道路がいずれかの時点で再舗装されることは認識している」とロチャ氏は言う。「その舗装が、持続可能なやり方で行われることが大切だ」

<ロンドンの3倍の地域で森林破壊>

BR319の再生によって、アマゾンの森林破壊がどれくらいのペースで広がっていくかという推測は多岐にわたっているが、どのような結果が考えられるか、過去の道路建設の事例が手掛りになりそうだ。

その1つが、大豆輸送ルートとして重要なBR163だ。1970年代に建設が開始されたBR163は、ブラジル南部から、北部のパラ州にあるミリチツバ・サンタレンの2つの港湾まで、総延長3000キロ以上に渡っている。BR163経由でミリチツバ港に運ばれる大豆は、収穫の最盛期には1日約4万トンにも達する。ほとんどは欧州・アジア向けだ。

この道路はアマゾン川流域にまったく新しい都市をいくつか誕生させた。その1つが人口約2万5000人のパラ州ノボ・プログレッソで、1980年代初めに入植が始まった辺境の街である。

政府統計によれば、この街の周辺では、2000年から2018年にかけて約4500平方キロの熱帯雨林が更地となった。これはロンドンの3倍近い面積に相当する。

ノボ・プログレッソは、今年のブラジルで森林破壊・火災が多かった上位10地域の1つである。当局は、農民による放火が原因とされる8月の一連の火災について捜査を進めている。

ボルソナロ大統領はノボ・プログレッソをはじめとするアマゾン各地に、消火活動支援のために連邦軍を派遣した。ヒカルド・サレス環境相によれば、ボルソナロ大統領は、ノボ・プログレッソにおける大火災の「責任者を取り調べ、罰する」ための捜査を約束したという。

それでもなお、就任してから環境保護政策が大きく後退したとして、ボルソナロ大統領はブラジルの環境保護当局の関係者から厳しい批判を浴びている。8月、ブラジル環境・再生可能天然資源院(Ibama)の職員約700人は、予算・人員の縮小に対する救済を求める大統領宛ての公開書簡に署名した。

大統領府はこの書簡についてコメントを拒否している。

BR319の近くに住むブラジル国民のなかには、再建がいつ始まっても早すぎることはないと考える人もいる。人口5万5000人のウマイタ市のエリバネオ・セイシャス市長は、BR319が補修されれば、地域の農家は採れたての作物を迅速にマナウスに運ぶことができ、農業が好況を迎えることになると話す。

Slideshow (3 Images)

「BR319は発展のための切り札だ」とセイシャス市長は言う。「BR319がなければ、我々は時代に取り残されてしまう」

(翻訳:エァクレーレン)

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