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焦点:ブラジル、アマゾン保護再始動も課題山積み 前政権のツケ重く

[ウルアラ(ブラジル) 2日 ロイター] - ブラジルではアマゾン熱帯雨林保護に積極的なルラ氏が今年初め大統領に就任し、政府の環境保護機関でも職員が士気を取り戻しつつある。しかしこうした機関はボルソナロ前政権下で予算が大幅に削られ、人員や装備が極端に不足しており、闘いの道のりは遠い。

 ブラジルではアマゾン熱帯雨林保護に積極的なルラ氏が今年初め大統領に就任し、政府の環境保護機関でも職員が士気を取り戻しつつある。しかしこうした機関はボルソナロ前政権下で予算が大幅に削られ、人員や装備が極端に不足しており、闘いの道のりは遠い。写真は1月20日、パラー州プラカスで、アマゾンから伐採された木を調べる環境・再生可能天然資源院(IBAMA)の担当者(2023年 ロイター/Ueslei Marcelino)

ロイターはブラジルの環境保全機関、環境・再生可能天然資源院(IBAMA)が1月に北部パラ州で実施したルラ政権下初の森林破壊取り締まり作戦に同行。IBAMAの抱える課題が浮き彫りになった。

ウルアラ近くで行われた今回の作戦に参加した職員は12人だが、このうち「実戦」経験者はわずか2人。ヘリコプターが整備中のため移動はトラックとなり、森林が伐採された5カ所を回るのに12時間かけて悪路を200キロ走った。このうち1カ所ではIBAMAの到着直前に違法伐採者が逃走したとみられる。見張り役が警告を出したようだという。

作戦の指揮を執ったジバニルド・ドス・サントス・リマ氏は「人員も装備も最低限だった」と悔しさを隠さない。ヘリコプターがあれば作戦は2時間で済み、伐採者を急襲できただろうという。

ルラ大統領は環境保護で高い目標を掲げ、世界的に賞賛を浴びている。しかし現職の政府関係者や元政府関係者など9人を取材したところ、アマゾンを保護する闘いが大きく進展するのは早くて2024年以降になりそうだ。

それまでに森林が急速に減少すれば膨大な量の二酸化炭素が放出され続け、気候変動が進むと環境保護推進派は訴えている。政府のデータによると昨年の熱帯雨林の伐採ペースは1分間にサッカー場3面分ほどで、ボルソナロ氏の大統領就任前年より54%も速くなっている。

<実戦部隊>

ブラジルの森林破壊に対抗する目先の最も強力な武器がIBAMAだ。違反者に罰金を科し、森林破壊地域で農業を禁止できるほか、違法伐採に使われる高価な機材を破壊する権限を持つ。

前回ルラ氏が大統領を務めた2003年から10年にかけてIBAMAは人員と装備が増強され、アマゾンの森林破壊を72%削減する実績を上げた。しかしその後は人員と装備が劇的に縮小している。

ルラ氏からIBAMAのトップに指名されたロドリゴ・アゴスティーニョ氏がロイターのインタビューで語ったところによると、IBAMAの現在の人員はブラジル全土で約350人。これはボルソナロ前政権発足時の半分以下で、全盛期の2000人を大幅に下回っている。「環境犯罪の阻止にはまったく不十分な数」だが、「人員の回復はかなり難航する見通しだ」という。

アゴスティーニョ氏によると、政府は4月上旬までに新規採用の募集を開始する予定。しかし公務員の採用に関する規則は多く、危険な任務のための訓練も必要なため、新しい職員が現場に出るまでに10カ月かかると見られる。

<職員への脅迫も>

IBAMAではベテラン職員の多くが過去4年間のボルソナロ前政権下で、環境破壊に対する罰金という主な執行手段を妨害され、違法な採掘・伐採設備の破壊を制限されたことに不満を抱き、退職した。

ボルソナロ氏はアマゾン保護のためIBAMAの代わりに軍を投入した。しかし多額の予算をつぎ込んだにもかかわらず、自然保護活動に不慣れな軍は森林破壊を抑止できなかった。

1月の作戦を指揮したリマ氏は、3年前の作戦で疑わしい木材を積んだトラックを確保した後、怒った暴徒に囲まれ、瓶で頭部を殴られた。ロイターが事件のビデオを確認したところリマ氏はこめかみから出血していた。病院で3針縫ったという。

2021年にはロンドニア州の作戦の際にリマ氏の殺害をあおりたてるようなメッセージが地元の交流サイトに流れた。

リマ氏は「重武装化が進み、暴力がエスカレートしている」と述べ、警察の護衛を厚くする必要があると強調した。「暴力はもっとひどくなる」という。

<予算増強>

ルラ氏はすでにIBAMAの強化に着手している。政権移行チームは昨年12月、IBAMAの執行予算を前年の2倍の3億6200万レアル(約92億円)に引き上げることで議会と合意した。

国立公園を監督する姉妹機関、シコメンデス生物多様性保全院(ICMBio)はルラ政権が予算で合意した後、保護区を守るための予算が55%増えた。しかしICMBioによると人員はなお1367人不足しており、過年度の受験者に声を掛けるなどして年内の採用を目指している。

アマゾンに近いトカンチンス州のIBAMA事務所を率いるウォレス・ロペス氏によると、ボルソナロ前政権下では捜査対象を選ぶ際の主導権が軍や法務省にあったが、今ではIBAMAに戻った。しかしそれでも、今年中に森林破壊削減で実際に成果を上げるには「とんでもない」努力が必要だとし、大きな成果が得られるのは2024年になるとの見通しを示した。

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