[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米大手銀行にとって金利上昇は天の助けだ。しかしゴールドマン・サックスだけはこの恵を受けられずにいる。ゴールドマンが18日発表した第1・四半期決算は収入が前年同期比5%減少した。トレーディング部門と投資銀行部門の業績が前年を下回ったためだ。デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は経営改革に取り組んでいるが、当面は利益確保に苦労せざるを得ない。
貸し出し残高が大きく、愛着心を持ってくれる預金者を抱えた金融機関にとって金融引き締めは、思いがけない追い風だ。こうした顧客に貸し出す際の金利は高く、顧客から借り入れる金利は低い。JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループなど米大手行の1-3月期金利収入は前年同期から34%増加した。しかしゴールドマンは違う。収入に占める金利の割合がたった15%と、同業他社の半分程度しかないからだ。ゴールドマンは預金残高を増やそうとしているが、こうした試みはコストを伴うことが明らかになった。アップルと組んで同社の国内のクレジットカード利用者向けに貯蓄口座の提供を始めたが、この口座は金利がかなり高く設定されている。
一方、金利上昇で企業経営者やプライベートエクイティ(PE)企業がリスクテークに消極的になり、その結果、ゴールドマンの投資銀行部門は不振に陥った。同部門は好調時に全収入の約4分の1を稼ぎ出し、この比率はJPモルガンやシティグループの2倍を超える。だが今年第1・四半期は債券トレーディングの収入が17%減少するなど、証券トレーディング部門も足を引っ張った。商品(コモディティー)トレーディングが前年同期に好調だったことで、業績が実際より悪く見えている面もある。ソロモン氏はトレーディング部門の顧客について、単に証券を取引するのではなく融資を重視して金利上昇の恩恵を受けられるようにするべく改革を進めている。しかしこの事業はまだ比較的規模が小さい。
最後が消費者金融部門で、相変わらず赤字の発生源だ。ソロモン氏は1年前に買収した新興フィンテック企業のグリーンスカイの売却を検討中で、第1・四半期にクレジットカードや分割払いのローン残高の4.6%を償却処理した。消費者金融市場は好調で、JPモルガンのリテールバンキング部門の自己資本利益率(ROE)は40%に達している。しかし信用サイクルが変化するタイミングでこうした事業を一から立ち上げるのは高くつく、大胆な取り組みであり、投資家の忍耐力が試される。
消費者金融部門に舵を切ったことは別にして、ゴールドマンの不振の責任がソロモン氏にあるわけではない。今のところ、ゴールドマンが得意とするのは金利が低く、売り込むような高利回りの投資先がなかなか見つからない時ほどよく見える分野だということだ。ソロモン氏はゴールドマンをどんな局面でも手堅い業績が上げられる銀行に生まれ変わらせたいと考えているが、まだ実現していない。
●背景となるニュース
*ゴールドマン・サックス・グループが18日発表した第1・四半期決算は、純利益が前年同期比18%減の32億ドルだった。投資銀行業務とトレーディング業務の収入が落ち込んだ。
*個人向けネット銀行「マーカス」の貸出債権の一部売却で収入が4億7000万ドル目減りしたが、その一部は過去に不良債権として計上した4億4000万ドルの資産区分を見直すことで穴埋めすることができた。
*トレーディング業務の収入は債券が17%減少し、通貨と商品(コモディティー)も「大幅に落ち込んだ」。株式は7%減った。
*バンク・オブ・アメリカ(BofA)が18日発表した第1・四半期決算は、債券トレーディングの収入が29%増加した。住宅ローン関連と金利関連の商品が好調だった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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