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コラム

コラム:対話型AI革命、ビッグテックが勝ち組 弱者はたちまち敗退か

[ニューヨーク 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 昨年11月、米新興企業オープンAIによる対話型人工知能(AI)「チャットGPT」の公開により、強大なテクノロジーが解き放たれた。大規模言語モデル、つまり多くのパラメーターを持ち、自主的な学習による改善が可能で、人間の行動や音声を模倣することができるモデルは既に、ビジネス環境を根本から変え始めている。小規模な企業が将来を案じ始めている一方、またしてもビッグテック(巨大IT企業)が利益を得やすい環境が生じている。

 昨年11月、米新興企業オープンAIによる対話型人工知能(AI)「チャットGPT」の公開により、強大なテクノロジーが解き放たれた。写真はマイクロソフトのロゴのイメージ。2021年7月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

オンライン教育企業チェグのダン・ローゼンスワイグ最高経営責任者(CEO)は最近、学生の間でチャットGPTの利用が急増し、自社の収益の伸びを鈍化させていると語った。投資家はこの発言を嫌気し、チェグの株式時価総額はたちまち半減して11億ドル(約1500億円)になった。同業のピアソンとデュオリンゴの株価も打撃を受けた。

他の企業も脅威にさらされている。IBMのアーバインド・クリシュナCEOは、今後数年で同社の労働力の30%をAIに置き換える計画をブルームバーグに語った。これは同社の経営に恩恵をもたらす一方で、クリシュナ氏によると人事のようなバックオフィス機能が最も自動化の標的になりやすい。ネットワーキングや職業訓練などの雇用関連サービスを開発するプロフェッショナル・ダイバーシティー・ネットワーク社がAI投資を急速に強化しているのも無理はない。

危険にさらされているのは平凡な事務処理の仕事だけではない。ハリウッドでは脚本家がスタジオに抗議するストライキを行い、ロボットに仕事を代替させるなと主張している。

かたや祝杯を挙げているのがマイクロソフトとアルファベットだ。両社の株価は今年、それぞれ32%と18%上昇した。両社とも今年に入って対話型AIをリリース。グーグルの「バード」は不安定なスタートを切ったが、同社はすかさず検索エンジンへのAIの組み込みをさらに強化すると表明し、軌道修正を図った。メタ・プラットフォームズは自社のAIモデルの一部を外部の開発者に公開し、開発者はそれを使って消費者向けのアプリを作ることができるようになった。またリフィニティブのデータによると、オープンAIに投資したマイクロソフトの業績予想に基づく株価収益率(PER)は28倍と、業界中央値の12倍をはるかに上回っている。

これら巨大IT企業間の競争は熾烈(しれつ)を極めるだろうが、大規模言語モデルをゼロから開発するには信じられないほどのコストと時間がかかる。対話型AIに対する投資家の熱狂にもかかわらず、挑戦者がほとんど出てこないのもそのためだ。

ビッグテック企業はバランスシート上に合計2500億ドル以上の資金を保有している。そして規模とデータは重要な鍵だ。クラウドコンピューティングや、その前で言うと電子商取引の初期と同様に、AIの台頭によって生み出される価値の大半を享受するのは巨大企業だろう。それ以外の多くの企業にとっては、生き残りをかけた戦いが始まったばかりだ。

●背景となるニュース

*アルファベット傘下のグーグルは10日の開発者会議で、生成AIを搭載した複数の新製品を発表した。反応を人間らしくするべく刷新した検索エンジンなどが含まれる。リフィニティブのデータによると、この発表を受けてアルファベットの株価は7%余り上昇した。

*教育技術企業チェグのダン・ローゼンスワイグCEOは第1・四半期の決算説明会で、チャットGPTが新規顧客の増加率に影響を与えていることに言及。2日の取引開始直後にチェグ株は47%急落した。教育企業のピアソンと言語学習プラットフォームのデュオリンゴは、このニュースで株価が10%余り下落した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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