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コラム

コラム:マー氏アント経営権放棄の意味、中国ネット業界に薄日か

[香港 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国電子商取引大手アリババ・グループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が、傘下の金融会社アント・グループの経営権を手放すと発表したことで、中国の消費者向けインターネット業界は「懲罰小屋」から抜け出せそうだ。発表後の9日、アリババ株は香港市場で7%上昇した。

 1月9日、中国電子商取引大手アリババ・グループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が、傘下の金融会社アント・グループの経営権を手放すと発表したことで、中国の消費者向けインターネット業界は「懲罰小屋」から抜け出せそうだ。写真は上海で2018年11月撮影(2023年 ロイター/Aly Song)

アントは2020年末、規制当局の指導により370億ドル規模の新規株式公開(IPO)の延期を余儀なくされて以来、当局をなだめようと努力してきた。今回の決定でそれが決着したのかもしれないが、ネット業界に大きな意味をもたらすかはまだ定かでない。

アントは7日、馬氏の議決権が50%強から約6%に低下するとともに、5人目の外部取締役が加わると発表した。議決権の希薄化は予想されていたことであり、馬氏の経済的影響力は今後も変わらない。それでも投資家は今回の措置によって、巨大ネット企業に対する中国当局の取り締まりが一段落すると見なすかもしれない。当局は強大なネット大手、特にアント株を3分の1保有するアリババのような巨大企業への締め付けを強めていた。

アリババの株式時価総額は2020年のピーク時の3分の1に縮小し、5000億ドル以上の価値が吹き飛んだ。金融情報会社リフィニティブによると、現在の予想株価収益率(PER)はわずか12倍と、5年平均の21倍を大幅に下回っている。他の中国ネット企業も同程度に株価が下落した。

馬氏の経営権放棄を受けて、アリババやアント関連企業の株価が上昇したことは驚くに当たらない。折しも中国のインターネット業界全般について取り締まりが緩和されており、「ゼロコロナ政策」の緩和も最終的に利益を押し上げるはずだ。例えば当局は昨年12月末、輸入ビデオゲームの承認を再開。騰訊控股(テンセント)の株価は年初から既に10%余り上昇している。

ただ、巨大ネット企業に対する中国当局の規制緩和は、恒久的な措置というよりは急場しのぎの色彩が濃いかもしれない。新型コロナウイルス感染封じ込めのために数年続いたロックダウン(封鎖措置)で景気が悪化し、海外需要も冷え込んでいる今、当局としては巨大ネット企業に人員削減を止めてもらう必要がある。リフィニティブのアナリスト平均予想によると、アリババは今会計年度の売上高が3%増にとどまる。

アントは経営構造の改革により、金融持ち株会社に近づく見通しだ。そうなると従来型金融機関を対象とする融資・資本規制の対象となり、収益力は弱まる。

他の分野では国有企業が開発の主導権を握ろうとしている一方、サイバーセキュリティーや検閲上の規制が引き続き民間投資の足かせになっている。ぬか喜びのリスクはつきまとうが、踏んだり蹴ったりだったネット業界の将来を再評価するぐらいのことは許されるだろう。

●背景となるニュース

*中国金融会社アント・グループは7日、創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が広範な「コーポレートガバナンス最適化」の一環として、経営支配権を放棄すると発表した。

*馬氏は自身の投資会社を通じてアントの議決権50%超を保有していた。今回の改革により、これが6.2%に低下する。

*ロイターは11月、アントの2年間におよぶ改革が終結に近づいており、中国当局は同社に10億ドル以上の罰金を科す方針だと報じた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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