November 8, 2019 / 10:45 PM / 10 days ago

コラム:サウジアラムコ株、ESG視点で投資できない理由

[トロント 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビア国営石油会社・サウジアラムコ(IPO-ARMO.SE)が新規公開する株式を買うかどうか思案中の外国投資家にとって、最も重要な意味を持つ書類は、アラムコの目論見書ではない。

 数週間以内にサウジ国内で始まるアラムコの新規株式公開(IPO)、ァンドマネジャーが読むべきは目論見書ではなく国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が公表した直近のサウジに関する報告書だと、Reuters Breakingviewsのコラムニストは指摘する。写真はサウジアラビアのアブカイクにあるサウジアラムコの石油施設。10月12日撮影(2019年 ロイター)

国営企業・アラムコに同国のムハンマド皇太子が主張する2兆ドルの価値があるのかどうかを決めるのは、確かに事業のファンダメンタルズだろう。

しかし、数週間以内にサウジ国内で始まるアラムコの新規株式公開(IPO)を後押しすることが何を意味するのか、もっと幅広く理解するには、非営利国際人権団体・ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が公表した直近のサウジに関する報告書こそが、全てのファンドマネジャーにとって必ず読まなければならない文書だ。

HRWが明らかにしているように、サウジの反体制派記者、ジャマル・カショギ氏が昨年、当局の手にかかって拷問(ごうもん)の末に殺害された事件は、自由主義諸国が受け入れている基本的規範をサウジが破った唯一の事例ではない。

同国内では、平和的な反政府活動をしている人が正当な事由によらずに逮捕されたり、女性がさまざまな差別を受けたり、あるいは何百人もが斬首されるといったひどい行為が枚挙にいとまがないほど起きている。また、HRWによると、サウジは隣国イエメンに軍事介入し、国際法違反の空爆によって多数の市民を殺傷してきた。

これは、環境・社会・企業統治(environment、social、governance=ESG)に配慮している企業を選別して資金を振り向けようとする投資家が考えるべき要素として、まさに「社会」の部分に相当する。当然ながら「環境」と「企業統治」も考慮の必要がある。

その点で何よりもまず、アラムコのビジネスモデルは、人類が今後も大気中に二酸化炭素を排出し続けることを大前提としている。

また、IPO後も、アラムコ株式の95%強はサウジ政府が保有し続けるので、企業統治も緩いように見える。

つまり何らかの良心を持つファンドマネジャーなら、アラムコへの投資は避けるべきだ。彼らがそうしないのなら、ファンドに出資している顧客が、資金引き揚げを検討する必要がある。

もちろんアラムコにサウジ政府の数々の問題行為の直接的な責任はない。HRWが引用したサウジ内務省の発表資料に基づくと、139人の斬首刑(うち54人は非暴力的な薬物犯罪での受刑者)が執行されたが、アラムコが手を下したわけではない。イエメンにおける軍事作戦に外相として関与したイブラヒム・アルアサフ氏がアラムコの取締役に連なっているとはいえ、同社は直接空爆を行ってはいない。

しかし、アラムコが、ムハンマド皇太子を実質的な頂点とするサウジの支配体制にとって、軍事予算や国内の抑圧的な各種政策の原資を提供する形で、資金面のエンジンになっているという事実は動かしがたい。

米中央情報局(CIA)によると、アラムコが根幹部分を占めるサウジの石油セクターは政府予算歳入の87%を占めており、輸出収入では90%を賄っている。

これらの状況は、株式引き受けを要請されているサウジ国内の機関投資家や個人投資家にとっては、大した意味を持たないかもしれない。リフィニティブによると、アラムコ株の2-3%が国内で吸収される見込みだ。

中核的な投資家になる可能性がある中国の「シルクロード基金」や、中国石油化工(シノペック)(600028.SS)、中国投資有限責任公司(CIC)なども意に介さないだろう。ブルームバーグの報道では、中国勢は最大で100億ドル相当のアラムコ株購入に向けた協議に入っている。

ただ、米国では重大な問題になるはずだ。2018年に「運用のプロ」が手がけた資産47兆ドルのうち、4分の1強はESG投資に向けられたことが、米非営利団体のSIF財団の報告で示された。

米国のESG投資は、過去2年間で38%も増加した。欧州も似たような傾向で、今年上半期にESG関連ファンド2232本に流入した資金は370億ユーロと、昨年全体の380億ユーロに匹敵したことがモーニングスターのデータから分かる。

ただ、いくつかの注視すべき点も存在する。アラムコのIPOはムハンマド皇太子が推進するサウジの化石燃料依存引き下げ計画の一環であることだ。また、アラムコも、地球温暖化の解決に「一役買いたい」と強調している。

それでも人類が二酸化炭素を減らし、環境面で取り返しのつかない事態を避けようとする上で、アラムコが保有する2270億バレル相当の原油埋蔵確認量は、まとまった地域の規模として最大の脅威になる。

ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)、エクソンモービル(XOM.N)、シェブロン(CVX.N)、BP(BP.L)、トタル(TOTF.PA)も温暖化防止に貢献するよう迫られているものの、アラムコが抱える資源量はこのメジャー5社合計の5倍もあるのだ。

たとえアラムコが社会的、環境的に有害な存在であることが、株式を購入しない理由として不十分だとしても、企業統治という別の火種がある。ベネズエラやメキシコなどを含めた多くの国営石油会社と異なり、アラムコはプロフェッショナルな経営が行われているのだが、やはりサウジ王家の利益が他の全ての要素よりも優先される。

「練達」した新興国投資家であるマーク・モビアス氏が今年、ロイターにいみじくも語ったように、サウジにとって資金が必要になる不測の事態が起きれば、アラムコは資産を政府に移管する必要が出てくる。

以上を総合して考え、また、ESG投資の領域で考えられるほぼ全ての指標に基づくと、アラムコはあらゆる悪条件に当てはまる。その上、引き受け金融機関がムハンマド皇太子の「主観的な」アラムコの評価を満たそうとIPO価格を押し上げようとするのはまず確実だと思われる。

さらに同社の生産施設が今後、新たなドローン攻撃に見舞われるといった別のリスクも存在する。

それでもなお、投資する外国機関投資家にとって、こうした事態になるとははっきり分からなかったと言える根拠はなくなる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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