November 18, 2019 / 3:04 AM / 24 days ago

コラム:アラムコIPO価格は妥協の産物、得するのは誰か

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコIPO-ARMO.SEは、最適とは言えない妥協を選択した。17日に発表された待望の新規株式公開(IPO)の仮条件レンジでは、誰もが既に知っていた事実が確認された。つまりアラムコにはサウジ政府が当初求めていた2兆ドルの企業価値はないということだ。だが同レンジに基づく1兆6000億―1兆7000億ドルという評価でも、外国投資家にはなお割高過ぎるのではないだろうか。

 11月17日、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは、最適とは言えない妥協を選択した。写真はIPOの発表会見。11月3日、サウジのザフラーンで撮影(2019年 ロイター/Hamad I Mohammed)

仮条件レンジを30―32リヤル(8-8.5ドル)に設定したのは、一歩前進だ。レンジの狭さは、IPOにきっと需要があるとの強い確信を示している。調達される約250億ドルは政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンドの手に渡り、サウジ経済の脱石油化への取り組みに役立つ。ムハンマド皇太子が、望んでいた水準よりも低い評価額を積極的に受け入れたことからは、現実的な落としどころを見極める能力が異例なほど高いと分かる。

それでも、誰も欲しいものを手に入れていない。まずムハンマド氏は、自分の意のままに市場を操れるというこれまでの名声に傷がつくだろう。一方海外の機関投資家は、アラムコの評価額を1兆2000億―1兆3000億ドル程度に抑えてほしいと考えていた。この水準なら、アラムコが今後5年で最低750億ドルの年間配当を支払うと約束している点を踏まえると、同社株の利回りはおよそ6%となり、他の大手石油会社の平均的な利回りに一致するからだ。そして実際には今回、ほとんどの外国投資家はIPOへの参加を見送るとみられ、だからこそアラムコが売り出す株式は全体の2%や、ましてや3%ではなく、1.5%分にすぎない。

外国投資家へのアピールよりバリュエーションを優先したとはいえ、サウジ政府は最もうまくいった場合、中国アリババが2014年の上場時に調達した250億ドルをやや上回る規模の資金を得られるはずだ。一部ながらもサウジ国外の投資家が参加する可能性はあり、アラムコ株の取引が始まれば、新興国株指数に追随している外国ファンドは購入せざるを得なくなる。原油価格が高止まりするようなら、地元銀行からの融資を追い風にアラムコ株の0.5%を引き受けようとしている個人投資家も、保有する動機が国家の威信以外にも出てくるだろう。

ただIPOは、サウジ資本市場の開放や低迷している外国からの直接投資の復活、同国経済の多様化につながるとも想定されていた。それなら価格をもっと低くすれば、売り出し株の規模をより大きくして、海外の有力投資家の購入意欲をずっと高めることができたかもしれない。こうした投資家の活発なアラムコ株購入は、サウジ国内の人権侵害問題は言うに及ばず、石油需要の頭打ちを巡る懸念までも解消してくれたことだろう。アラムコはせっかく妥協したものの、これらの目標は達成できないままだ。

●背景となるニュース

*アラムコは17日、株式の1.5%を1株当たり30―32リヤルで売り出すと発表した。これに基づくと新規株式公開(IPO)の規模は最大960億リヤル(256億ドル)で、企業評価額は1兆6000億―1兆7000億ドルに上る。

*9日に公表した当初の目論見書では、国内向けIPOを米国外の機関投資家に対しては米証券法の「レギュレーションS」に、米国の投資家には「ルール144A」にそれぞれ従って実施すると記されていた。

*しかし17日に目論見書が修正され、米証券法に関する記述がなくなった。3人の関係者がロイターに語ったところでは、これによって株式売り出しのための海外における投資家説明会が開催されないことが分かるという。

*S&Pダウ・ジョーンズとFTSEラッセルは顧客に対して、アラムコ株を早ければ12月にも指数に組み入れる方針を伝えており、指数算出で世界最大手のMSCIも追随する。ロイターが15日伝えた。

*MSCIは、アラムコ株の取引が12月12日以前に始まる場合、同17日から株価指数に採用すると明らかにした。

*アラムコはまだ、「コーナーストーン投資家」を指名していない。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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