for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:ベラルーシ、領空を政治的武器にできない現実

[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ベラルーシのルカシェンコ大統領は今、領空を手札にしてポーカーゲームを戦うことのデメリットを学びつつある。反政権派ジャーナリストの拘束を狙ってアイルランドの旅客機を強制着陸させたルカシェンコ氏が、領空を政治的な武器に使った初めての国家指導者というわけではない。しかし、残念ながら同氏がこのゲームで優位に立つのは難しいのが現実だ。

 ベラルーシのルカシェンコ大統領は今、領空を手札にしてポーカーゲームを戦うことのデメリットを学びつつある。写真は23日、リトアニア・ビリニュスの空港に到着するライアンエア機。ベラルーシの反体制派ジャーナリストが搭乗していた同機は、途中でミンスクの空港に緊急着陸させられた(2021年 ロイター/Andrius Sytas)

今回のベラルーシの行為のように、憤激した西側の大国が「空賊」とまで呼ぶのは非常に珍しい。各国には領空管理に関して国際法に沿った立派な振る舞いをする十分な動機もある。なぜなら航空会社から領空通過料を徴収することで、多ければ年間で何億ドルもの収入が入ってくるからだ。ただ、国土が広過ぎて迂回飛行が面倒な場合、あるいは航空会社から領空通過料支払いを拒否されても痛くもかゆくもないほど財政が豊かな場合に限り、その国は居丈高な態度を取ることができる。

そうした高圧的な姿勢で臨める条件が最も整っているのは、ベラルーシの同盟国で陸地面積が世界一の広さを誇るロシアだ。冷戦期に現実に起きたように、欧州から香港や日本などに飛行する際に、航空会社がシベリア上空を迂回すると4時間ほど余計な時間がかかる。ロシアは2014年、クリミアの強制編入後に領空閉鎖をちらつかせたこともある。ところが、このロシアでさえ、結局は領空通過料がなくなる道を避け、閉鎖を見送った。欧州連合(EU)によると、08年にロシアが獲得した領空通過料は4億2000万ドルだった。

サウジアラビアは17年、断交したカタールの飛行機に対して領空を閉ざした。その結果、カタール航空はサウジとその同盟諸国に50億ドルの損害賠償を申し立て、アラビア半島上空を迂回する負担の大きさが浮き彫りになった。それでも天然ガス収入が豊富なカタールは、こうしたショックを吸収する体力があった。

ルフトハンザ航空、KLM航空、シンガポール航空などは、いずれもベラルーシ領空を避けて飛行すると表明している。ある関係者がロイターに語った各社の領空通過料は500ドルで、欧州航空航法安全機構のデータに基づくと19日までの週にベラルーシ領空を通過した便数は、国営ベラビアを除いて2081便に達した。これは同国が得る領空通過料が年間約5400万ドルに上ることを意味しており、国内総生産(GDP)がたった600億ドルの国としては大事な収入源だ。

その他の国が領空を政治利用することに消極的ということはない。米国は2013年、欧州諸国に圧力をかけ、モスクワに滞在していたボリビア大統領が帰国するに当たって専用機をオーストリアに着陸させることなどを求めた。

これは、米政府の情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン元米国家安全保障局契約社員が同乗しているという誤った情報が流れたためだ。こうした事実から、領空を武器にするにはその国が大国もしくは金持ち、できれば両方を兼ね備えていることが不可欠だと確認できる。もちろんベラルーシは、どちらでもない。

●背景となるニュース

*KLM航空は24日、ベラルーシ路線の運航を一時停止すると発表した。ベラルーシがアイルランドのライアンエア機を強制着陸させて反政権派ジャーナリストを拘束したためだ。

*欧州連合(EU)は24日の非公式首脳会議で、ベラルーシの個人制裁対象範囲を広げることに合意し、国際民間航空機関(ICAO)に対して強制着陸問題の早急な調査を求めた。

*ルフトハンザ航空は、この件で当面ベラルーシ領空を飛行しない。同社広報担当者が24日夜、インタファクス通信に語った。

*シャップス英運輸相は24日、国内航空会社にベラルーシ領空の飛行を避け、乗客の安全を確保するよう指示したと述べた。また、ベラルーシ国営のベラビア航空の運航許可を停止した。

*拘束されたジャーナリストのロマン・プロタセビッチ氏は、投稿された動画を通じて、健康状態は良好で、ベラルーシ首都・ミンスクの拘置所に収監されていると明らかにするとともに、昨年ミンスクで「大規模暴動」を組織したと認めた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up