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コラム

コラム:バイデン氏の現実的な対中経済政策、過去の失敗が教訓

[ワシントン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - バイデン米大統領は、中国に対して積極的行動を控えることによって経済的により大きな成果を得ようとしている。一見したところでは、バイデン氏が打ち出した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」はインドや日本、ベトナムなどが参加する新たな経済圏構想だが、本質部分に踏み込まず、扱いが難しい問題を避けているようだ。ホワイトハウスは、中国に課している関税の大部分も撤廃するかもしれない。こうした動きは、ゴールがかなり低めに設定され、バイデン氏が過去の政権による失敗から学習しているのだということが分かる。

 バイデン米大統領は、中国に対して積極的行動を控えることによって経済的により大きな成果を得ようとしている。写真は23日、都内で行われた「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の式典で撮影(2022年 ロイター/Jonathan Ernst)

米国が何年にもわたって続けてきた中国を仲間に誘う、あるいは中国に有効な罰を与えるという試みはどちらも目的を達成できなかった。オバマ元大統領は中国との投資協定締結を推進したがうまく行かず、中国の影響力に対抗するために提唱した経済貿易圏、環太平洋連携協定(TPP)はついにゴールに到達しなかった。一方、トランプ前大統領が中国に仕掛けた貿易戦争はサプライチェーン(供給網)を構築するどころか破壊してしまった。しかも最も被害を受けたのは、どちらにつくか選択を迫られた非中国企業や中国以外の諸国だった。

そこでバイデン氏は、中国が変化する公算は乏しいという認識を踏まえ、風呂敷を広げすぎない計画を推進している。これは与野党勢力が伯仲する米議会で自身の政策を盛り込んだ法案を通すのに苦労しているという国内政治面の制約も反映した形だ。つまりバイデン氏が23日に表明したIPEFには恐らく、TPPが想定していたような経済成長のビジョンは含まれていない。参加する13カ国は、モノの貿易に関する障壁を直接取り除く代わりに、デジタル貿易促進とサプライチェーン強化に取り組むことになる。

バイデン氏が議会への働きかけをせずに動ける余地があるのは、関税の調整という分野だ。トランプ氏はイースター(復活祭)の卵に使う染料から鋼管まで、実におよそ1万1000もの製品に関税を発動した。これらについてバイデン氏の専門チームは、米国の利益にそぐわない関税は撤廃する考えで見直しを進めている。

もっともこうした穏やかなやり方を用いてさえ、より協力的な多極化した世界がもたらされるという保証はない。それなのにバイデン氏は大統領として初めての日本訪問中の23日、中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事的に関与する考えを示した。これは台湾問題で長年にわたって米政府が維持しきた、いわゆる「あいまい戦略」から逸脱する形だ。このような失策は、米国の経済的な活動領域拡大に向けた取り組みに打撃を与えかねない。時には言葉や行動を慎むことが実を結ぶのだ。

●背景となるニュース

*バイデン米大統領は23日、中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事的に関与するとの考えを示した。ホワイトハウスはその後、米国の中国および台湾に関する政策に変更はないとコメントした。

*バイデン氏は、米国を含む13カ国が参加する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を打ち出した。インド、日本、韓国、ベトナムなどが名を連ねている。市場アクセス問題は対象外で、サプライチェーン(供給網)強化やクリーンエネルギー、デジタル貿易、税制に焦点を当てる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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