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コラム

コラム:ポストコロナ、「夢のエレベーター」開発競争に号砲

[ロンドン 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 児童文学「チョコレート工場の秘密」や「グレムリン」の英作家ロアルド・ダールだったら、悔しがることだろう。新型コロナウイルス後の将来、会社ビルの地下でいらいらしながら待つ労働者たちはエレベーターに乗ったとたんに苦痛から解放される。

 金融センターは超高層ビルだらけで、対人距離を確保しなければならないことによって、いわば垂直な隘路とも言うべき渋滞にとりわけさらされる。問題は、オーチス・ワールドワイドの創業者が1850年代に自分の設計を世の中に広めて以来、エレベーターの基本設計がほとんど変わっていないことだ。写真は2019年11月、ドイツのエッセンにあるティッセンクルップ本社で撮影したエレベーター(2020年 ロイター/Leon Kuegeler)

エレベーターは素敵なガラスか何かでできていて、電線ケーブルがない。磁石で浮上し、垂直円周状にシュッと上がっていくのだ。難儀しながら昇降路を上下に往復するのではない。こんなエレベーターは、これまではダールの小説の想像の産物でしかなかった。

ビル所有者にとってはスペースを省くことができるし、感染症流行にまた見舞われた際も人を運ぶ能力を容易に高められる。

ニューヨーク、ロンドン、香港といった金融センターは超高層ビルだらけで、対人距離を確保しなければならないことによって、いわば垂直な隘路(ボトルネック)とも言うべき渋滞にとりわけさらされる。問題は、世界首位の米エレベーター会社オーチス・ワールドワイドOTIS.Nの創業者で実業家のエリシャ・オーチス氏が1850年代に自分の設計を世の中に広めて以来、エレベーターの基本設計がほとんど変わっていないことだ。

定員20人用として設計されても感染防止で3人しか乗れないとなると、このエレベーターシステムはぎこちなく停止していくしかない。会社の重役らに階段を使って特別役員室まで上がらせるのは気がめいる話だ。それが重役らの減量につながるとしてもだ。

短期的には、基礎的な仕掛けで乗降者を新型コロナから守ることができる。顔認識や音声認識のソフトを使えば、開閉や行き先フロアのボタンを押さなくても済む。足で蹴る方式の操作パネルを床の高さに設置する方法もある。検温カメラで高熱の人を検知できるかもしれない。重量センサーを設置すれば、週末金曜日のランチタイムに、乗り過ぎ規制を無視してがやがやと乗り込もうとする外為トレーダーたちを阻止できる。

しかし長い目で見ると、テクノロジーがはるかに賢い解決策をもたらす。日本のリニアモーターカー計画に似た磁気浮上技術によって、電線ケーブルがなく昇降路を使わないエレベーターが多数、らせん状に高速で高下できるようになるという。

ドイツの鉄鋼大手ティッセンクルップTKAG.DEのエレベーター事業、ティッセンクルップ・エレベーター・テクノロジー(TET)は既にテストに乗り出している。中央電線ケーブル式のエレベーターが昇降していく、場所のかさばる「立坑口」がなくなることで、超高層ビルで使えるフロア面積を最大40%拡張できるという試算だ。これはビル所有者には大きなメリットだ。

TETは今年2月、プライベート・エクイティの米アドベント・インターナショナルと英シンベンに計170億ユーロ(約2兆円)で売却された。

ソーシャルディスタンス(社会距離)の登場で、エレベーター利用者にもメリットが増えることになる。電気ケーブル式と違い、磁気浮上技術を使ったエレベーターなら新たな感染症流行の際にカゴの数を増やしやすいので、人の流れのボトルネックを減らせる。TETはこの点で他より一歩抜き出ていると自負する。上海空港の磁気浮上式鉄道建設プロジェクトでノウハウを得たおかげだ。

一方で米オーチスやスイスのシンドラー、フィンランドのコネがそれぞれ、独自の開発を進めているのも疑いない。新型コロナはまさに、次期エレベーターで最初に成功に上り詰めるメーカーが得る「一等賞」の価値を倍増させている。

●背景となるニュース

*ロンドンやニューヨークといった主要な金融センターで働く従業員は今年6月から徐々に職場復帰する際、検温やエレベーターの利用制限が課される。

*オーストラリア政府は今月21日、エレベーター利用指針で4平方メートル当たり1人とした制限を撤廃した。ただし、利用者に対しては引き続きエレベーター内での混雑や咳、くしゃみを避けるように勧告した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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