[サンフランシスコ 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の連邦議会選挙という「ビジネス」は、ますますカネがかかるようになっているが、政治献金では大富豪の方が企業よりも大きな影響力を持っている。先週の連邦議会議事堂乱入事件を受けてJPモルガンやAT&Tなどは、政治献金の見直しを進めている。しかし、はるかに潤沢な資金を有しているのが、米カジノ運営会社の創業者で先日死去したシェルドン・アデルソン氏や金融通信会社の創業者であるマイケル・ブルームバーグ氏のような人々だ。
議事堂乱入事件は、米企業の対応を一変させた。先の選挙で企業として政治献金が最大だったAT&Tは11日、証拠がないのにバイデン氏の大統領選勝利認定に反対した共和党議員への献金を停止すると発表。JPモルガンなど他の企業も、政治献金の方針を見直すために資金提供を中止した。
献金停止が続けば、2022年の中間選挙で過半数議席の奪還を狙う共和党には、特に大きな打撃となる。政治資金を監視する非営利団体「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス」によると、AT&Tは前回の選挙で政治活動委員会(PAC)を通じて候補者に260万ドル余りを寄付、JPモルガンは約100万ドルを寄付した。
しかし、富裕な個人の政治献金は、こうした額をはるかにしのいでいる。2020年の選挙で献金額がトップだったのは、「カジノ王」と呼ばれ11日に死去したアデルソン氏と妻のミリアム・アデルソン氏で、共和党に2億1800万ドルを寄付した。2位はブルームバーグ氏で、民主党に1億5200万ドルを寄付した。
こうした大富豪が献金を休止あるいは停止すれば、候補者に対して直接大きな影響を与えるだろう。ブラックストーンのスティーブ・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は、昨年の選挙に向けた数カ月間に共和党系の政治資金管理団体「上院リーダーシップ基金」に2000万ドルを寄付。その後も、今年1月に実施されたジョージア州の上院選決選投票で共和党候補2人を支援するため、同基金にさらに1500万ドルを寄付した。
焦りを感じている1人が、共和党のジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州)だ。ホーリー議員は大統領選結果に異を唱える動きを主導し、議事堂乱入事件の前にトランプ支持者らへの支持を表明していた。グリーティングカード大手のホールマーク・カーズは、ホーリー議員に対し、過去2年間の献金7000ドルの返還を求めた。
しかし、この額は、ヘッジファンド運営会社・シタデルの創業者、ケン・グリフィン氏がいわゆる「特別政治活動委員会(スーパーPAC)」に寄付した25万ドルに比べればあまりにも影が薄い。同委員会は2018年の議会選でホーリー議員を支援した。選挙戦からこうした大富豪の献金が消えれば、候補者は本気で耳を傾けるようになるだろう。
●背景となるニュース
*トランプ米大統領の支持者が連邦議会議事堂に乱入した事態を受けて、バイデン氏の大統領選勝利認定に反対した共和党議員への献金を一時的に停止したり、打ち切ったりする企業が相次いでいる。11日にはアマゾン・ドット・コム、AT&T、ゼネラル・エレクトリック(GE)などが資金提供の停止を発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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