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コラム

コラム:焦眉の急のビットコイン会計整備、静観にはリスク

[ニューヨーク 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)を巡って大騒ぎが続いている。しかしこれは会計基準の策定を担う米国財務会計基準審議会(FASB)が懸念すべき事態を示しているのだろうか。実は、電気自動車(EV)のテスラ、電子決済のスクエア、ソフトウエアのマイクロストラテジーなど仮想通貨を導入している企業にとって、決算報告の規則は本来の目的に合っていない。今のところごく限られた範囲の問題だが、いずれそうではなくなるかもしれない。

ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)を巡って大騒ぎが続いている。しかしこれは会計基準の策定を担う米国財務会計基準審議会(FASB)が懸念すべき事態を示しているのだろうか。写真はイメージ。14日撮影(2021年 ロイター/Edgar Su)

ビットコインの保有を決めた企業は、現行の会計処理方法に従ってビットコインを特許や商標と同じ長期性無形資産に分類している。つまりビットコインは、売却して実現益を計上しない限り資産上の評価額というのは下がる一方だ。元来が投機的金融資産であるビットコインにとって、これは直観に反する。それでも会計基準を監督する立場のFASBは今年初め、今すぐには仮想通貨を基準設定の対象には加えないことを決めた。

一方、時価総額1000億ドル(約11兆円)で、米ツイッターのジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)が率いるスクエアは、損益計算書の面でもビットコインに絡む問題を抱えている。スクエアは顧客がビットコインを買えるサービスを提供しているが、その際、まず顧客のためにビットコインを取得し、顧客の購入分は収入として、顧客のために自社で購入した分は費用として計上する。第1・四半期のビットコイン収入は35億ドルで前年同期の11倍に急増したものの、自社の取り分はその2%程度に過ぎなかった。

こうした決算報告は、例えば金融機関が自社のプラットフォームで顧客の株式取引から得た収入を報告する方法とは異なっている。スクエアは以前、ビットコインに絡む経費を除いた、事業の実態をより良く反映した非標準的な収入の指標を発表していた。ところが2019年に米証券取引委員会(SEC)からのコメントを受けて、この指標の発表を停止。今では人々を、このビットコインが絡む問題を相殺してくれる指標である粗利益に目を向けさせている。

FASBなど基準設定機関が様子見を決め込んでいられるのは、これほどの喧噪の割には、問題の規模がまだ小さいのが理由の1つだ。ビットコインを保有している上場企業は非常に少なく、テスラ、スクエア、マイクロストラテジーはその代表格。いずれも、直観に反するとはいえ、同じ会計処理を行っており一貫性はある。

逆に、ビットコインを含めた仮想通貨の会計処理が非常に大きな問題に発展する可能性があることも、基準設定機関が手をこまねいている理由になっている。デジタル資産は種類ごとに特徴が異なる。ビットコインに適した処理が、他の暗号資産には合わないかもしれない。全体に通用する仕組みを作るのは大変な作業だ。デジタル通貨が今後も存続すると想定するならば、これは当然の懸念と言える。しかしだからこそ、リスクがさらに大きくなる前に、今すぐ対応に着手すべきだ。

●背景となるニュース

*電子決済大手スクエアは15日に年次株主総会を開催。

*スクエアが5月6日発表した第1・四半期決算は総純収入が50億6000万ドルで、前年同期比266%増えた。ビットコインを除く純収入は44%増の15億5000万ドル。

*スクエアは2019年第3・四半期以降、米証券取引委員会(SEC)からのコメントを受けて、取引コストやビットコインの費用を除く調整後収入という非標準的指標の投資家への提供を停止した。同社は当時、この指標は決済分野で業績を評価し、事業を比較するのに有用だと考えていると説明していた。

*米国財務会計基準審議会(FASB)は今年初め、デジタル通貨を基準設定の対象に加えるかどうかを検討したが、見送りを決めた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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