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コラム

コラム:英中銀がG7初の利上げ、伝統手法に「賭ける」価値あり

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国の金融政策担当者は「今日の1針、明日の10針」という古い英国の格言を認めているようだ。

英国の金融政策担当者は「今日の1針、明日の10針」という古い英国の格言を認めているようだ。写真はロンドンの英中銀前で16日撮影(2021年 ロイター/Toby Melville)

イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は16日、政策金利を0.1%から0.25%に引き上げて、主要中銀で初めて利上げに動いた。英国はまだ景気回復の足場が弱く、新型コロナウイルスの新たな感染の波に見舞われているだけに、これは一種の賭けと言える。だが物価高に利上げで応じるという古くからの政策手法を駆使したことは、最終的に実を結ぶのではないか。

物価圧力に応じて政策金利を引き上げるというのは、金融政策担当者にとって伝統的なやり方だった。BOEは来年4月に物価上昇率が6%付近でピークに達すると見込んでいるが、この種の問題に直面する中銀はほかにも存在する。特に米国では既に消費者物価指数の前年比上昇率が、英国で来年予想される伸びにいち早く到達している。それでもBOEのベイリー総裁がまず、利上げの先鞭(せんべん)をつけた。

そうなった理由は幾つかある。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁の場合、ユーロ圏の物価圧力が相対的に小さいため、来年3月にパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を打ち切った後、ドイツと南欧の国債利回り格差が急拡大しないことに万全を尽くす方をより重視している。一方、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレだけでなく雇用にも配慮しなければならない。そこでECBとFRBはいずれも、一時的な物価上振れの許容度を高める形に金融政策運営の枠組みを軌道修正した。

問題なのは物価圧力が、中銀当局による従来の想定よりずっと長く続いている点だ。だからBOEの利上げは、ベイリー氏がインフレとの闘いに真剣な姿を示すことで、人々の予想物価とそれに伴う賃上げ要求を抑える上で有効な予防措置になる。

BOEは今動くことで、後になってより急速かつ大幅な利上げを避けられるかもしれない。短期金融市場は英国の今回の利上げサイクルにおける政策金利の最終到達点を2023年末の1.25%前後と見込んでいる。これに対して米国では、政策金利が24年に2.1%、長期的に2.5%まで上昇すると予想されている。各国政府は世界金融危機当時よりも財政拡張に積極的だ。それを踏まえると、景気支援の面でもはや中銀が全ての責務を負う必要はない。となればベイリー氏の賭けは、あえて実行する価値がある。

●背景となるニュース

*イングランド銀行(BOE)は16日の金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.1%から0.25%に引き上げることを、8対1で決定した。事務方が公表した最新の物価上昇率見通しによると、冬場の大半は5%前後で推移し、来年4月に6%近辺でピークに達する。

*BOEの説明では、労働市場は現状引き締まっており、今後も引き締まり続ける。国内のコスト・物価上昇圧力はより根強くなる兆しも幾つかある。オミクロン株は短期的な経済活動を圧迫する公算が大きいが、中期的な物価圧力への影響は今の段階ではよく分からない。

*欧州中央銀行(ECB)は16日の理事会で、来年1-3月にパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)に基づく債券買い入れを減額し、3月末までに新規買い入れを停止する方針を決めた。ただ来年を通じて金融政策の面で大規模支援をすると約束し、超緩和姿勢からの脱却をゆっくり進めることを示唆した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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