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コラム

コラム:中国版ナスダック、既存企業殺到でかすむ本来の趣旨

[香港 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 「中国版ナスダック」と呼ばれる株式市場は、新興ハイテク企業支援という本来の趣旨から外れてしまう恐れが出てきた。自動車大手の吉利汽車0175.HKが上海証券取引所の「科創板(STAR)」に上場して約30億ドルの調達を目指すなど、青天井のバリュエーションを追い求める成熟企業が、新興ハイテク企業向け市場に次々押し寄せる動きが見られるからだ。これでは、より規模が小さく、資金繰りが苦しい企業を後押ししようとする中国政府の狙いが台無しになりかねない。

 「中国版ナスダック」と呼ばれる株式市場は、新興ハイテク企業支援という本来の趣旨から外れてしまう恐れが出てきた。写真は吉利汽車の車。2019年4月、上海で開かれた自動車ショーで撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

科創板は、厳格な収益基準がある主要取引所から締め出されている、創業から間もない企業のために設立された。中国は国家的な見地から、バイオテクノロジーや人工知能(AI)などを手掛ける次世代の新興企業に十分な資金が回るようにする必要がある。これらの企業は現金を急速に費消する半面、借り入れの担保を持っていない。

ただ、科創板は各種の上場基準を緩めるのと同時に、中国本土の主要取引所で非公式ながら幅広く採用されている、利益の約23倍というバリュエーションキャップを撤廃した。これに引き寄せられたのが既存の有力企業で、経営陣は賢明にも、科創板で取引されれば企業価値がさらに膨らむとの結論を下した。例えば半導体受託製造最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)0981.HK688981.SSは科創板の初値が昨年の利益の109倍に達し、香港上場の同社株もつれ高となった。科創板のSTAR50指数銘柄で見ても、上場以降の株価は平均で3倍超に上がり、足元の株価収益率(PER)はおよそ90倍で推移している。これは上海証取の主要銘柄の6倍だ。

今のところ、科創板の上場企業は大半が黒字基調だ。本市場に十分アクセスが可能な、既に一定の地位を確立している企業の方が、新興企業よりも大きな恩恵に浴していることがうかがえる。SMICは、香港と科創板の重複上場の選択からさかのぼって15年も前から、ニューヨーク市場で取引されていた。吉利汽車と、アリババBABA.N9988.HK傘下企業で、資金力のあるスポンサーが既に付いていることで知られる金融会社アント・グループも同様の上場方式を視野に入れつつある。さらに1969年創業の老舗国有自動車メーカーの東風汽車0489.HKでさえも、深セン証取の新興ハイテク企業向け市場「創業板」が科創板に対抗して上場基準緩和を打ち出すとすぐに、創業板での新規株式公開(IPO)計画を発表した。

吉利汽車とアントは確かに興味深いビジネスモデルを持っている。だが、成熟企業があたかも最先端のイノベーターであるかのように科創板や創業板に上場するのを放置すれば、そもそもの目的が希薄化し、指数のウエートにゆがみが生じてしまう。全員を特別扱いにすれば、誰も特別ではなくなる。

●背景となるニュース

*香港上場の吉利汽車は、上海証券取引所の科創板に上場して200億元(29億ドル)を調達する計画だ。1日に取引所への届出書類が公表された。

*吉利汽車は富豪の李書福氏が会長を務める浙江吉利控股集団の傘下企業で、上半期の純利益は前年同期比43%減の23億元、販売台数は19%減の53万0446台だった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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