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コラム

コラム:ユーロ分断防止へ、ECBが学ぶべき90年代の教訓

[ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ユーロ圏諸国の国債利回り格差を抑制するための「分断化防止」策を近く発表する。ラガルド氏は2つの重要な問題に対処しなければならない。(1)ある国の国債利回りが経済情勢に照らして正当化できない水準に達した、と判断する際の基準(2)ECBの対処方法――の2点だ。過去の欧州通貨危機に学ぶなら、新たな措置の詳細を固め過ぎることは控えるべきだろう。

 ECBのラガルド総裁は、ユーロ圏諸国の国債利回り格差を抑制するための「分断化防止」策を近く発表する。写真はフランクフルトで3月代表撮影(2022年 ロイター)

1990年代初頭、各国の中銀と財務当局は投機的攻撃について身をもって学んだ。ユーロ導入に先立ち、欧州各国は一種の固定為替レート制度を導入し、各通貨の変動幅を特定水準の上下2.25%以内に保っていた。緊張が高まった際には、各国中銀が介入してこのレートを守る仕組みだった。

外貨準備には限りがあるため、投資家はこの制度を攻撃したい誘惑に駆られる。そして英国は1992年9月、制度からの脱落に追い込まれた。フランスが翌年、辛くも同じ運命を逃れたのは、ドイツの中銀がフランスフラン買い支えに協力したおかげだった。

後にユーロが導入されたことで、こうした為替レート危機のリスクは無くなった。しかし当時の教訓は生きている。投機筋の攻撃を避けたいなら、制度を曖昧かつ柔軟にしておくということだ。

ECBは既に、このことを例証してみせた。6月15日、おそらくは特定の国債購入という形を取る新政策ツールの導入方針を発表すると、国債利回りは低下。10年物のドイツ国債とイタリア国債の利回り格差は数日間で2.42%から2%未満に縮小した。もっとも、その後イタリア国債の価格は急落して格差は再び拡大している。

一部の幹部は、ECBの柔軟性を制限したい決意のようだ。ドイツ連銀のナーゲル総裁は、国債利回りが上昇している国に経済・財政上の条件を課したい意向を示している。しかし、そうなるとECBは市場の混乱に対処するために素早く行動を起こせないだろう。

一方でイタリア中銀のビスコ総裁は、ドイツとイタリアの10年物国債利回り格差が2%を超えるのは正当化できないと述べている。ただ特定の数字を目標に据えれば、ECBは例えば、イタリアで新政権が発足して財政規律を放棄したような場合でも国債を買わざるを得なくなる。

ECBが先に国債購入プログラムの停止を決定していなければ、ラガルド総裁はもっとやりやすかっただろう。総裁が今取り得る最善の選択肢は、1990年代の教訓を思い出し、政策ツールの詳細をできる限り曖昧にしておくことだ。

●背景となるニュース

*ECBは21日の理事会で「新分断化防止策」の大枠を示す見通し。これはユーロ圏の中で経済状態の弱い国々の利回り上昇を抑えることを目的とした政策ツールで、導入の方針が6月に発表されていた。

*ECB理事会は6月15日、「パンデミックによってユーロ圏経済に長期的な脆弱性がもたらされた」結果、ユーロ圏内で「金融政策正常化の波及が不均衡」になったと説明している。

*7月21日のECB理事会で、0.25%幅の利上げを実施する方針も先に発表済み。同金利は2019年9月以来、マイナス0.5%に据え置かれている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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