May 15, 2020 / 7:55 AM / 18 days ago

コラム:コロナ危機に強い福祉国家、流れは「大きな政府」へ

[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 大惨事は本当に必要なことを教えてくれる場合が多い。新型コロナウイルスとの闘いでは、福祉の手厚い政府がその国の経済的ダメージを軽減するのにいかに役立つかということだ。この教訓を忘れ去ることはないだろう。

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、外にテーブルがあるレストランで食事をするスウェーデンのストックホルム市民。3月26日撮影(2020年 TT News Agency/Janerik Henriksson)

ロックダウン(都市封鎖)によって多くの人が働けなくなった。解雇が容易で政府の助成が心もとない米国は、失業率が20%を超えそうな勢いだ。欧州でも仕事をすることを禁じられた労働者の割合は似たり寄ったりだが、失業率が米国の水準に近づくとは予想されていない。

欧州と米国の最大の違いは、税金によって給与払いを維持する制度の有無だ。こうした制度があれば、雇用主が従業員の解雇を余儀なくされることは減る。財政赤字は拡大するが、通常の経済活動を再開するスピードはずっと速くなる。労働者がしばらく待機状態に置かれているだけで、完全に首を切られたわけではないからだ。

一方で、欧米いずれも高齢者への福祉は満足できる状態ではない。英国と、ドイツよりも南の欧州大陸諸国、そして米国はこうした問題で予算手当てが不十分で、新型コロナにうまく対応できる態勢ではなかった。

しかし対処の失敗に厳しい反応が出たことから、かえって、これらの国の人々が困窮する際、いかに政府を頼りにしているかが鮮明になっている。このことはコロナ後の政策のあり方を決めそうだ。既に3つのトレンドが浮かび上がってきている。

<3つの地殻変動>

第1に、政治家と官僚はノウハウを持つ分野、つまり弱者保護のための新たな措置を開拓する機会が増えるだろう。失業者保護と高齢者介護は拡充されるだろう。介護施設と公的サービスを直ちに改善する予算措置に、十分な政治的な支持が集まりそうだ。

一方、雇用助成はおおむね条件付きとなるだろう。既に福祉が手厚い国では一層の拡充をはかることにも少し関心があるため、目標は今後に備えた、さらなる制度改善に置かれそうだ。

政府への依存が高まれば、政府は情報収集を強化する必要が出てくる。各国政府はこれまでよりも綿密に所得と雇用を捕捉しようとするようになるだろう。零細中小企業や自営業にもキャッシュフローの詳細な報告が義務付けられそうだ。

第2に、米国の福祉は概して欧州型へと進むだろう。有給の病気休暇と年次休暇の義務化に抵抗してきた国だけに、進展は限られるかもしれない。しかし保守的な人々でさえ、たいがいは、政府を嫌う以上に経済的繁栄を好むものだ。失業率が途方もなく跳ね上がったことのショックによって、これまでの原理原則はある程度棚上げされ、増税に喜んで応じ始める可能性さえある。

これを一歩押し進めると、最低所得保障(ユニバーサル・ベーシック・インカム=UBI)の導入につながる。一部のリバタリアン(自由至上主義者)がUBI導入に熱心なのは、脱官僚的な響きがあるからだ。欧州でUBIを導入すれば、寛大ではあるが複雑な現在の制度が簡素化されるかもしれない。米国では、危機によって最も苦しむ人々の所得が増える。米大統領選の民主党指名争いでUBIを提唱していたアンドリュー・ヤン氏は、選挙戦から撤退したが、彼の目的は達せられるかもしれない。

最後に、欧州で所得や雇用などの個人情報の追跡捕捉が慎重ながら進められ、米国で給付制度が拡充されることになれば、正規な労働力に参入する労働者が増えるかもしれない。これにより、過去2世紀続いた大きな流れ、すなわち、ほとんど課税されることのない臨時雇いの労働から、当局に登録されるが高い税率を課される労働への移行がさらに継続するだろう。

最近はいわゆる不安定な、非登録の労働者が増え、そうした流れが反転したように見えていた。しかしこれは、単なる一時的なぶれということで終わるかもしれない。

現在は、欧米ともに、新型コロナ感染の恐れに特にさらされやすい低賃金労働者、例えば高齢者介護施設の職員などを支援すべきだとの政治的機運が強い。その動機は正義感だけではない。そうした制度が強化されれば、富裕者にとっても、感染した労働者を働かせ続けざるを得ないような経済プレッシャーが和らぐメリットがある。

しかし新型コロナの感染拡大が収束していくとともに、福祉拡充を後押しする利己的動機も消えるだろう。しかも経済的な連帯強化という約束を実行しようとすれば、政治的に不人気な移民支援になってしまう。従って、すべての移民に正規の地位を与え、賃金を引き上げるよう訴えている人々は、今のうちに素早く行動を起こす必要がある。

福祉国家はすべての人々に経済的恩恵をもたらすが、福祉は究極的に、常に政治的プロジェクトだ。そして目下のところ政治の風向きは、より積極的に動き福祉を手厚くしようとする政府に追い風になっている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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