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コラム

コラム:逆風下の天然ガスに投資、バフェット氏の眼力と皮算用

[ダラス 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 天然ガスはさまざまな試練に見舞われていると言ってしまうと、この資源を過小評価することになるだろう。今の環境は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏にとっては魅力でしかない。

 ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイのエネルギー部門、バークシャー・ハザウェイ・エナジーは7月5日、米ドミニオン・エナジーの天然ガス輸送・貯蔵事業を40億ドル(約4300億円)で買収し、加えて債務を引き受けることに合意した。写真はバークシャーの株主総会で株主らに囲まれるバフェット氏。2019年5月4日、ネブラスカ州オマハで撮影(2020年 ロイター/Scott Morgan)

案の定、バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイのエネルギー部門、バークシャー・ハザウェイ・エナジーが5日、米ドミニオン・エナジーD.Nの天然ガス輸送・貯蔵事業を40億ドル(約4300億円)で買収し、加えて債務を引き受けることに合意した。これだけでもう、天然ガス業界が目先の不安定な状況を克服できると考えるのに十分な確証になる。

天然ガス価格は既に下げ圧力に苦しんでいる。ただでさえ低迷していた市場が、副産物として天然ガスがもたらされる原油掘削によってさらに圧迫されたからだ。天然ガス生産者は販売するのをやめて燃やしてしまう措置を始めた。

一方で需要の落ち込みを受け、電力ガス会社の天然ガス貯蔵タンクは満杯になっている。米エネルギー省情報局によると、今年の米国の天然ガス消費は3.6%減少する見通しで、その主な理由は鉱工業セクターの活動がほぼ9%縮小することだ。6月末には、天然ガス先物価格は約25年ぶりの安値に沈んでしまった。

だが幾つかプラス材料がある。大手の原油生産者が投資を縮小し、足元で原油掘削活動が鈍化に転じてきたのに伴って、天然ガス供給も抑えられている。確かに、天然ガスには太陽光や風力のような将来の成長余地はないが、他の化石燃料に比べれば温室効果ガス排出量は少ないので、中期的な見通しは相対的に明るい。

例えばエネルギー源としては、石炭を代替する役目を果たし続けるだろう。内燃自動車から電気自動車(EV)への移行が原油にもたらすような需要の落ち込みにも直面しない。だから米最大のパイプライン運営会社ウィリアムズ・カンパニーズWMB.Nは、2040年までの天然ガス需要は、原油の3倍のスピードで伸びるとみている。

またバフェット氏によるドミニオンの資産買収は、値ごろ感があるように見える。債務込みで97億ドルという評価額は、バークシャー・ハザウェイ・エナジーがEBITDA(利払い・税・償却前利益)のおよそ10倍の金額を支払うことを意味する。これはウィリアムズに対する現在の評価額より15%前後低く、ブルックフィールド・スーパーコア・インフラストラクチャー・パートナーズが最近まとめたパイプライン事業買収案件の評価額に対しても2割ほど下回っている。

天然ガス価格がこれ以上下がらないと仮定すれば、バフェット氏はこの案件を通じて相当なリターンを稼ぎ出せるはずだ。

●背景となるニュース

*バークシャー・ハザウェイ・エナジーは5日、ドミニオン・エナジーの天然ガス輸送・貯蔵事業を40億ドルで買収することに合意した。債務57億ドルも引き受ける。ドミニオン・エナジー・トランスミッションとクエスター・パイプライン、カロライナ・ガス・トランスミッションを傘下に収めるとともに、イロクオイス・ガス・トランスミッション・システムの権益50%と、メリーランド州のコーブ・ポイントの液化天然ガス(LNG)施設で権益の25%を取得する。

*ドミニオンとデューク・エナジーは同日、米南部の「アトランティック・コースト・パイプライン」建設計画の中止を発表した。2014年から計画を推進してきたが、環境問題などで強力な反対運動に直面し、総費用見込みが80億ドルに膨れ上がっていた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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