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コラム

コラム:世界の中銀、今年の課題は「債務という名の怪獣」制御

[ロンドン/ニューヨーク 31日 BREAKINGVIEWS] - 2021年は中央銀行にとって、昨年生み出した債務という名の「怪獣」を手なずける年になるだろう。コロナ禍を契機とした市場の暴落に対応し、米連邦準備理事会(FRB)は初めて社債購入に踏み切り、欧州中央銀行(ECB)は1兆8500億ユーロという未曽有の規模の債券購入計画を打ち出した。しかしこうした危機対応は、次の危機の種をまくことになった。

 2021年は中央銀行にとって、昨年生み出した債務という名の「怪獣」を手なずける年になるだろう。写真はワシントンの米連邦準備理事会(FRB)本部。2019年8月撮影(2021年 ロイター/Chris Wattie)

中銀による積極的な介入と、ゼロもしくはマイナス金利を維持するという約束は、既に危うい借金レースを引き起こしている。S&Pグローバル・レーティングスによると、米石油企業オキシデンタル・ペトロリアムやクルーズ船大手カーニバルなど、ジャンク級格付けの米企業が発行した社債は、昨年初めから10月初めまでで合計3450億ドルを超え、過去最多を記録した。ICE・バンク・オブ・アメリカ指数によると、ジャンク債の利回りは米国では5%と過去最低になり、欧州は3%を下回った。

債券市場の活況ぶりは、当局側が故意にお膳立てした部分もある。しかし当局が、状況が悪くなればさらに金利を引き下げ、公的支援をすると約束していることは、企業の借金依存と投資家の野放図な貸し出しの背中を押すだろう。

当局が何らかの規制を課すなら、レバレッジド・バイアウト(LBO)から始めるのが良さそうだ。リフィニティブのデータによると、プライベートエクイティ(PE)を後ろ盾とした企業による債務は、コロナ禍前の段階で既に欧州で利払い・税・償却前利益(EBITDA)の6倍に達し、米国はさらに大きくなっていた。

しかも買収企業は往々にして、利益率の数字を調整することで債務比率に手を加えている。規制当局は、債務比率計算のルールを厳格化し、また買収向けローンを引き受ける銀行へのガイドラインを引き締めることにより、こうした動きに対抗することができる。

ただ、銀行への締め付けを強めれば、ノンバンクの貸し手、特にいわゆるプライベート・クレジット・ファンドへのリスク移転をさらに後押しすることになるだろう。こうしたファンドの資産は2012年から昨年3月までに倍以上に膨らんで8450億ドルを超えた。規制当局は念には念を入れ、銀行と保険会社によるこうしたファンド向け債権を透明かつ管理可能にしておく必要がある。ファンドに対して基準に則したシンプルな情報開示を義務付ければ、バブルを特定しやすくなるかもしれない。

信用格付けもしぶとい脅威だ。昨年は格付けが再び過大な影響力を見せつけた。格付けが投資適格級を下回った企業については、ファンドが社債の売却を強いられたほか、証券化のための特別目的会社も重圧にさらされた。規制当局は、格下げが社債売却のトリガーとなる仕組みを取り除く、もしくはファンドに格下げを想定したストレステスト(健全性審査)を義務付けることにより、格付け会社全般が影響力を及ぼしてしまう事態を抑える必要があるかもしれない。

クレジット市場を手なずけるのは完全には不可能だ。しかし投資家がこれ以上猛威を振るうのを容認すれば、「利上げ」という最も恐ろしい怪獣を中銀が解き放った時のパニックは増すばかりだろう。

●背景となるニュース

*ECBは12月12日、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を5000億ユーロ拡大して1兆8500億ユーロとした。

*コロナ禍を受けて世界の中央銀行は利下げや大規模な債券購入プログラムを余儀なくされた。FRBは初めて社債と上場投資信託(ETF)の購入に踏み切り、その中には投資適格級を下回る債券(ジャンク債)も含まれた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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