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コラム

コラム:インフレ読みづらい時の投資戦略、市場の指標に勝るものなし

Gerard O’Reilly

金融市場よりうまくインフレ率を予想しようとしても無駄に終わる。投資家は、消費者物価の見通しを示す市場の指標を活用し、いかにしてその指標が告げる購買力の低下を上回る利益を上げるか、あるいはヘッジするかに注力した方がよい。写真はドル紙幣。2011年8月、都内で撮影(2021年 ロイター/Yuriko Nakao)

[オースティン(米テキサス州) 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 金融市場よりうまくインフレ率を予想しようとしても無駄に終わる。投資家は、消費者物価の見通しを示す市場の指標を活用し、いかにしてその指標が告げる購買力の低下を上回る利益を上げるか、あるいはヘッジするかに注力した方がよい。

米国は過去30年間、インフレが比較的緩やかで、消費者物価指数(CPI)の年間上昇率は平均2.3%程度だった。しかしこの程度のインフレであっても、投資されなかったドルの購買力は約半分に低下している。従って最近の物価上昇ペースがパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の予想するように一過性のものなのか、それとも持続的なものなのかは非常に重要だ。

短期的な高インフレは持続的な高インフレよりも購買力への打撃がはるかに小さい。しかし昨年のコロナ禍による労働市場とサプライチェーンへの衝撃によって、経済が短期的な高インフレの局面にあるのか、それともより長期的な物価上昇圧力の局面に入っているのかを見極めるのが難しくなっている。

投資家の予想物価上昇率を示す指標は、今後数年にわたる消費者物価の緩やかな上昇を示唆しているが、最近の急騰は一時的だとするパウエル議長の見方とも整合的だ。例えばセントルイス地区連銀のデータによると、今後5年間の予想物価上昇率を反映した5年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は年2.6%で、過去30年間の平均値に近い。

市場価格によって形成されたこれらの指標は、投資家が出した最善の予想の集大成であり、これより優れた将来の指針はまたとない。従って投資家は専門家の意見に耳を貸すのではなく、市場価格によって既に予想されたインフレ率を元に、いかにしてそれを上回る利益を上げるか、あるいはいかにしてヘッジするかを考えるべきだろう。

過去30年間、米国株、米国以外の先進国株、新興市場国株は軒並み実質リターンがプラスとなっている。インフレ調整後で見ると、1991年にS&P総合500種指数に1ドルを投資したとすると、2021年には12ドル余りとなった。つまり購買力が12倍になったことになる。同様に為替ヘッジを掛けた世界の国債および社債のリターンはこの期間に米国のインフレ率を上回っている。

確かに、インフレ率が平均より高かろうが低かろうが、世界の株式や債券の平均的な実質リターンはプラスで、各資産クラスの実績に目立った差はない。しかし平均がそうだからといって、毎年平均的な結果だったわけではない。従ってインフレに特に敏感な投資家は、消費者物価の上昇による資産の目減りをヘッジしたいと考えるだろう。

1つの手法は、リターンがCPIの変動に連動するインフレ連動国債(TIPS)の購入だ。インフレ率が想定以上に上昇した場合、TIPSの投資家はCPIの上昇分が調整されて埋め合わせが得られ、購買力の低下を防ぐことができる。

デュレーションの短い社債を購入し、インフレ・スワップと呼ばれるデリバティブを活用して物価上昇から身を守る方法もある。インフレ・スワップは、現在の予想物価上昇率に連動した金額をカウンターパーティに支払う代わりに、満期時の実際のインフレ率に応じた金額を受け取る仕組み。この戦略は信用リスクを伴うが、TIPSのみの戦略よりも高い期待リターンが得られ、より大幅な分散投資が可能だ。

インフレを上回ることと、インフレをヘッジすることは、投資家にとって重要な目標であることが多い。それぞれの目標に割り当てる資産の割合は、投資期間に連動させることができる。例えばリターンがインフレ率を上回る資産への配分を増やす戦略は、貯蓄を予定し、今後何年も投資資産を取り崩すつもりのない投資家に適しているかもしれない。リターンが消費者物価の上昇を上回る資産は、貯蓄の購買力を高め、将来消費できる分を増やせる。一方、貯蓄を支出に回す時期が迫りつつある投資家は、インフレ調整後の資産価値をより正確に把握したいと思うだろう。このような場合はインフレヘッジ資産への配分を増やすことで確実性を高めることができる。

投資家は、インフレを上回る、あるいはインフレをヘッジするために、市場より正確にインフレを予想したり、ポートフォリオの目的を犠牲にしたりする必要はない。ただし、消費者物価の短期的な動きに対する過度な反応は避けるべきだ。

・筆者はディメンショナル・ファンド・アドバイザーズの共同最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者(CIO)。同社の運用資産は6月30日時点で6600億ドル。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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