March 12, 2020 / 6:41 AM / 3 months ago

再送〔BREAKINGVIEWS〕イタリア非常事態、カフェから消えたエスプレッソの芳香

[ミラノ 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - イタリアの朝からエスプレッソの芳香が消えた。新型コロナウイルスの感染拡大が欧州で最も深刻な同国で9日、全国的な感染対策が発令された。日常生活を制約する数々の措置が課され、バール(カフェ)のカウンター越しの接客禁止もそのひとつだ(編集部注:11日には全土で飲食店などの店舗閉鎖を発表)。

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なイタリアでは、政府が経済活動や人の移動を制限する対策を導入。優雅な日常が消えた。写真は3月10日、ローマのバールで撮影(2020年 ロイター/Guglielmo Mangiapane)

ミラノで筆者が暮らす界隈の老舗バール「フダイダ」のオーナー、フルビオ・ロッシさんにとって、今回の措置は倒産を意味しかねない。イタリアが最初の感染拡大抑止策を打ち出した2月末以降、1日当たりの来客数はすでに普段の600人前後から半分に落ち込んでいた。今や客足はまばらで、5人の従業員を雇い続けることはとてもできない。

食事を楽しむことと、家族や友達と屈託なくつき合うことは、人もうらやむイタリアのライフスタイルの神髄だ。芸術遺産や自然の美しさも相まって、毎年6000万人以上の外国人観光客が訪れ、420億ユーロ(約5兆円)を落としていく。

しかし、フェデリコ・フェリーニ監督の名作映画「甘い生活」で確立されたイタリアの豪奢なイメージは、新型コロナの爆発的な感染拡大によって変わろうしている。

コンテ首相は、4月3日まで国内の6000万人に不要不急の移動を制限、学校を閉鎖し、ミラノ・スカラ座でのオペラ上映から葬儀に至るまで、公私にわたる集会を禁じた。まるで14世紀のベネチアのペスト禍への措置を思わせるが、中国湖北省武漢で実施されたような公共交通機関の停止には踏み込んでいない。イタリアの工場は操業を続けており、商品の輸送は可能だ。

それでも今回の措置によって同国の日常生活は干上がり、観光客は寄りつかなくなり、経済は大打撃を被っている。全国の飲食・娯楽収入1500億ユーロの2割を占めるミラノだが、活気あふれるナイトライフは消え失せた。

基本的な食品の確保を除き、買い物も突如として途絶えた。医療専門家は人々に家にいるよう勧め、政治家は不要不急の活動を最低限にとどめるよう要請している上に、パニックの影響もある。

イタリア最大の都市型モールであるミラノの「シティライフ」ショッピングセンターを9日午後に訪れると、棚は空っぽだった。ミラノの小売業界団体によると、10日までには市の店舗のおよそ半分が一時休業に入った。アルマーニなどの有名ブランドも例外ではない。ファッションの都ミラノが生み出す年間200億ユーロの売り上げ収入は急激に縮小するだろう。

イタリアの苦境は、他の先進諸国が今後経験するかもしれない経済的犠牲の前触れだと言える。この危機は、イタリアのような高齢化社会を健康上の緊急事態が襲った場合、どのような試練にさらされるかを露呈することにもなった。イタリアは人口の23%に当たる1400万人が65歳以上と、欧州で最も高齢化が進んでいる部類だ。新型コロナは高齢者が最も重症化しやすいため、これは問題だ。

イタリアでこれまでに感染が報告されたケースは大半が70歳以上で、持病持ちだ。同国の新型コロナによる致死率が6%と、世界平均の2倍近いのはこれが原因かもしれない。高齢の患者は集中治療を必要とする確率が高く、医療制度に追加的な負荷がかかる。ベルガモの救急医療室責任者ルカ・ロリーニ氏は、急激な感染拡大が続くなら、各病院はだれを救うべきかという厳しい選択を迫られる、と警告を発した。

過去10年間に2つの経済危機を乗り越えてきたミラノの事業主らは今、事業を存続させる方法を懸命に探している。筆者がお世話になっている美容師のパオラさんは、客を安心させるため、店のスタッフにフィルター付きのマスクを着けさせた。

レストランオーナーのルカ・ピオバンさんは、給与や公共料金の支払いを続けるため、禁止措置の対象外であるケータリングを検討している。

こうした非常事態で最も打撃を被りやすいのは、イタリア経済を織り成すこうした零細企業だ。「甘い生活」とともに、こうした企業も新型コロナの犠牲となる恐れがある。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below