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コラム

コラム:イタリア政局混乱、改革後退のリスク高まる

[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - イタリアのドラギ首相は欧州中央銀行(ECB)総裁時代、通貨ユーロを守るためなら「必要なことは何でもする」と発言するなど、セントラルバンカーとしては大胆な行動で名をはせた。しかし首相に就いた今は「はったり」が裏目に出ている。ドラギ氏は議会上院が20日に実施した内閣信任投票で連立与党から改革への幅広い支持を得ようとした。しかし主要3政党が投票をボイコットしたことで前倒し総選挙の可能性が高まり、イタリアは先行きの見通しがきかない危険な状況に陥っている。

 イタリアのドラギ首相は欧州中央銀行(ECB)総裁時代、通貨ユーロを守るためなら「必要なことは何でもする」と発言するなど、セントラルバンカーとしては大胆な行動で名をはせた。写真はローマで20日撮影(2022年 ロイター/Guglielmo Mangiapane)

ドラギ氏は2021年に首相に就任し、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応を主導し、欧州連合(EU)のパンデミック復興基金を確保するため改革を押し進めた。しかし来年に予定されている総選挙が近づくにつれて、政界では支持勢力の一部が浮足立っていった。信任投票では税制や法制度などの分野で改革をさらに進めることが必要だと強調。結果としてドラギ内閣は信任投票で過半数の票を得たが、右派の「同盟」や左派の「五つ星運動」など連立与党を構成する主要政党が投票を棄権した。

総選挙の前倒しが避けられないわけではない。しかしドラギ氏が自分の政策課題をしっかりと進めるのは困難になるだろう。総選挙が行われる場合、EUに懐疑的な極右政党「イタリアの同胞」の主導で右派連立政権が誕生する可能性が最も高い。そうなればドラギ氏の改革が引き継がれたり、イタリアが国内総生産(GDP)対比150%前後の公的債務を抑制できると他のEU加盟国を説得するのは難しくなる。

政治的な危機が持ち上がったタイミングも悪い。国際通貨基金(IMF)の試算によると、エネルギーを大量に輸入しているイタリアは、ロシアのプーチン大統領が欧州への天然ガス供給を停止すればGDPの5%相当が打撃を受ける恐れがある。

舵取り役を失ったイタリアは、改革の推進や、EUの財政ルールの順守が今より困難になるかもしれない。そうなればECBのラガルド総裁は、利上げに際し弱い加盟国の借り入れコストを抑制するための新たな債券買い入れ計画に、イタリアを含めることが難しくなる。改革姿勢の政府を欠いたイタリアは最終的に、6720億ユーロ(約94兆7500億円)のコロナ復興基金からの支出を受ける資格を失う恐れがある。

ドラギ氏を債券買い入れの約束に追い込んだ、2012年の債務危機並みの混乱が不可避というわけではない。イタリア国債の利回りは20日に急上昇したとはいえ、10年債で3.5%近辺と、2011年のピーク時の半分にすぎない。国内の銀行は自己資本が十分だし、たとえEUに懐疑的な政府が誕生しても今の時点でユーロ圏離脱を目指すことはないだろう。

しかしイタリアは信用できる改革志向の政府を樹立できるまで、低成長や投資の低迷、借り入れコスト上昇などに直面するだろう。まさに自業自得だ。

●背景となるニュース

*イタリア議会上院が20日実施したドラギ内閣の信任投票は賛成多数で可決された。しかし連立与党のうち右派の「同盟」と「フォルツァ・イタリア」、左派の「五つ星運動」の主要3党は投票をボイコットした。今回の動きが引き金となって総選挙が前倒しで実施される可能性がある。

*ドラギ氏は2021年に首相に就任し、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応やEUの復興基金の獲得で指導力を発揮してきた。

*イタリア10年国債の利回りは20日の早い段階では3.20%だったが、信任投票後に3.61%まで上昇した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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