[ニューヨーク 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「フェイスブック」を運営する米メタ・プラットフォームズにとって、成熟するということはそれほど悪い話ではない。
メタの広告事業が脅威にさらされ、ユーザーの伸びが鈍化しているのは確かだ。新たな中核事業にメタバース(巨大仮想空間)を据えた姿からは、成長が曲がり角を迎えた企業なのだという現実も垣間見える。だが同社の事業は、時間が経過したことによるメリット、例えば相応の収益力などもはっきりと示している。別の視点に立てば、企業価値は過小評価状態とさえ言えるかもしれない。
投資家は恐らくこうした見方をなかなか受け入れられないだろう。今のフェイスブックにかつての雑草のような急成長は見られないからだ。2019年から21年までの売上高伸び率は60%を超えていたのに、27日に発表された今年第2・四半期の売上高は前年同期比で1%減少。第3・四半期もせいぜい頑張って横ばいにとどまる見込みだ。メタが収入源として頼っているのはオンライン広告だが、第2・四半期の平均販売価格は14%も低下した。
ユーザーの関わり方も懸念される。フェイスブックのユーザー数は第2・四半期に前年同期から1%しか増えず、前期からはやや減少した。それでも試練を乗り越えられそうな兆しも出てきている。メタのアプリにユーザーが費やす時間の平均は減少している半面、フェイスブックとインスタグラムは、継続率や使用状況などの総合指標「エンゲージメント」ランキングで中国系のTikTok(ティックトック)に次いでそれぞれ2位と3位となっていることが、調査会社コーエンのデータで分かる。
一定の年月を経験したことで、メタは少なくとも利益の出し方を知っている。リフィニティブによると、同社の今年のEBITDA(利払い・税・償却前利益)ベースの利益率は40%になる見通し。これはその半分程度のツイッターをはるかに上回り、グーグル親会社のアルファベットをもしのぐ。
こうした収益力はもっと評価されてよい。フェイスブックの売上高が20%減っても、利益率がそのままであれば、メタの現在の事業価値(EV)3870億ドルで計算したEV・EBITDA倍率は8.5倍となる。これはグーグルの10倍よりも低く、ツイッターの4分の1にすぎない。
もちろんこの主張が成り立つかどうかは、ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が新事業向け支出をしっかり制御するか否かに大きく依存する。第2・四半期のメタの研究開発費用は急増し、利益率を押し下げた。メタバースなどへの支出をもっと引き締めれば、しばらくは成長が弱まるかもしれない。しかし多分メタは、2つの意味で素晴らしいワインにたとえられるだろう。つまり1つは年を重ねるほど味や香りが良くなるし、もう1つは正しく評価するには本物を見分けられるだけの味覚が必要ということだ。
●背景となるニュース
*メタ・プラットフォームズが27日発表した第2・四半期売上高は290億ドルで、前年同期比1%減少した。月間アクティブユーザー数は290万人と、前年同期から1%増えたが、前期をやや下回った。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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