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コラム

コラム:オリンピック、永遠にボイコットを

[香港 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1995年、私は流行に乗る人の群れに混じってアトランタに移り住んだ。次のオリンピックを見に観光客が押し寄せるとみて、それに乗じようと考えたのだ。だが、誇大広告に惑わされ続けた他の人々と同様、私も失望する運命にあった。

 古代ギリシャの宗教行事として始まったオリンピックも、現代では悲しい話がつきものだ。当初の崇高な目的は堕落し、スポーツや都市経済を歪めてしまった。写真はローザンヌのIOC本部で昨年5月撮影(2021年 ロイター/Denis Balibouse)

多くの観光客は遠く離れた郊外のホテルに滞在し、地下鉄に乗って協賛企業向けに整備されたダウンタウンにある競技場に向かった。酷暑の中、他の場所をうろうろする人はほとんどいなかった。私はオーストラリア選手団のサポートスタッフに麺類を提供することで何とか糊口をしのいだが、地元の人々の多くは観光客が押し寄せるとみて混雑から逃げ出したため、大儲けが期待できたはずのレストランや小売店は赤字となった。

古代ギリシャの宗教行事として始まったオリンピックも、現代ではこのような悲しい話がつきものだ。

当初の崇高な目的は堕落し、スポーツや都市経済を歪めてしまった。今日のデジタル時代においては、アスリートやコカ・コーラやマクドナルドなどのスポンサーにはより良い選択肢がある。今こそ、聖火を渡す時だ。

オリンピックは世界平和の推進からは程遠く、何度も繰り返される論争の震源地となっている。

日本では新型コロナウイルスの感染が続いており、全国的にワクチン接種率が低いため、ほとんどの日本人はパンデミック(世界的な大流行)により延期された2020年東京大会の中止を望んでいる。ソフトバンクグループの孫正義会長をはじめとする企業トップらも中止派に賛同している。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)は、放送権販売のみに注力しており、反対の声には見向きもしない。

オリンピックは外交的な受動的攻撃行動を示す場にもなっている。

中国が新疆ウイグル自治区で行っている「非武装化」キャンペーンは、人権問題を理由に22年に北京で開催される冬季大会をボイコットする運動に拍車をかけた。メダルの数を増やすための努力はドーピングや贈収賄をもたらし、IOCはそれを抑えることができていない。国が支援するスポーツ産業はアマチュアリズムを愚弄している。

<金のために走る>

財政面から見れば、ほとんどのオリンピックは「白いゾウ(有益性に比べ維持費がかかるものの象徴)のサーカス」だ。建設や警備の契約は短期的な雇用と成長をもたらすが、スタジアムは経済的な貢献度が低いことで知られている。多くの会場には特別な設計が要求されるため、その後の再利用が難しい。

明るい話題と言えば、韓国は18年の平昌大会で550億ドル(約6兆0350億円)の黒字を計上し、バルセロナは観光都市として確固たる知名度を得た。しかし、基本的にオリンピック開催はお金にならない。

リオデジャネイロは16年の大会で20億ドルの損失を出した。ユタ州政府は02年の大会で数年間に3万5000人分の雇用を創出すると予測していたが、その後の分析では統計的に有意な雇用増は見られなかった。

ロバート・バーデ氏とビクター・マテソン氏は16年、「ジャーナル・オブ・エコノミック・パースペクティブズ」に寄稿し、「招致した国と招致しなかった類似国とを比較すると、貿易・消費・投資・所得に対するオリンピックの目立った効果は全て消えてしまう」と述べている。

その結果、権威主義的な政権を持つ国が開催地の空白を埋めることになる。22年の大会に立候補していた欧米のオスロ、ミュンヘン、ストックホルム、クラクフの4都市は、有権者からの圧力で全て辞退。残ったのは北京とカザフスタンのアルマトイだった。

また、商業的な利益についても詳しく調べてみる必要がある。

ソチとリオで開催された冬と夏の大会では、400以上の試合実施に数千時間を要したのに対し得られたのは57億ドルで、1試合当たり約1400万ドルにしかならない。対照的に前回のスーパーボウルでは、約3時間で広告主から約5億ドルを集めた。

IOCは今でもオリンピックの理想として、賞金を出さない方針を貫いている。政府によってはボーナスを支給しているところもあるが、プロの選手、特に貧しい国の選手は出場に際してこの点を考慮するだろう。一方、一部のスポーツリーグは、オリンピックと同等の世界大会を展開している。4年に1度のサッカーワールドカップはその一例だ。

さらに、多くの国際組織がそうであるように、IOCもスキャンダル防止には苦労している。またIOCはスキャンダルの再発を防ぐのが極めて下手であることも事実だ。反ドーピング機関からの勧告を受けてもロシアの不正行為禁止に抵抗を示すなど、ドーピング防止に向けた試みは中途半端に見える。

ファンはこれらの欠点を無視して、世界的なアスリートの英雄的な業績に注目する。その気持ちは理解できるが、それがIOCの改革を阻んでいる。

もっと良い選択肢がある。東京大会を中止したり、北京大会をボイコットしたりするのではなく、オリンピックを永遠にボイコットした方がいいのではいか。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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