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コラム

コラム:パウエル氏がタカ派方向に市場誘導、指標次第で波乱も

[ワシントン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が発した新たなメッセージを、市場は素早く消化しつつある。パウエル氏は7日、早期利下げの公算などないだけでなく、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅がより大きくなる可能性があると示唆した。これはほんの2カ月前、投資家がFRBからくみ取った金融政策の想定経路とは異なっている。ただ投資家の「パウエル観」がタカ派方向に移行していく過程は、近く発表される経済データによっていたずらにかき乱される恐れもある。

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(写真)が発した新たなメッセージを、市場は素早く消化しつつある。写真はワシントンで7日撮影(2023年 ロイター/Kevin Lamarque)

パウエル氏は7日の上院銀行住宅都市委員会と8日の下院金融サービス委員会で、経済が強すぎる状態が続くなら、場合によっては踏み込んだ姿勢でさらなる利上げに動く用意があるとの考えを示した。この発言で、FRBが間もなくインフレとの戦いをやめるとの期待は、まだ市場に残っていたとしても、きれいさっぱり消えたとみられる。7日に米株の主要3指数はそろって1%超下落し、借り入れコストが一段と上振れる展開に投資家が身構えた様子が浮かび上がった。CMEのフェドウオッチによると、短期金利先物は今月のFOMCの利上げ幅は、前回の25ベーシスポイント(bp)から50bpに再び拡大すると見込んでいる。

公平な立場で言うと、FRBは既に昨年12月、政策金利は2023年中にあと50bp上昇するとの想定を示していた。それでも多くの投資家は、利上げ幅はそれより小さくなり、年内には利下げを開始すると勝手に予想したのだ。

とはいえ足元でパウエル氏に対する見方を改めた市場は、来週にかけて試練にさらされるだろう。なぜならロイターがまとめたエコノミスト調査に基づくと、10日に発表される2月雇用統計で非農業雇用の伸びは鈍化する見通しだからだ。1月に上向いた消費者物価指数(CPI)も2月は減速が予想される。その通りになれば、次回利上げ幅は50bpより25bpが妥当になる。

幾つかの統計から判断すると、確かに米経済は2月にクールダウンした。リンクトインの指標では2月の採用人数は前月比で6.5%減少。これは2020年4月以降最大の落ち込みだった。また求人検索サイト、インディードのデータからは2月の求人件数が減ったことがうかがえる。

パウエル氏は、FRBの政策金利決定は最新の経済データに大きく左右されると何度も強調している。一方今回の議会証言でより大幅な利上げへの道を開き、投資家は正しく反応した。しかしパウエル氏が大幅利上げの用意を表明したからというだけで、実際にそうすべきだというわけではない。市場がタカ派姿勢を強めるパウエル氏になじんでいくとともに、金融政策転換までの距離が必要以上に遠のいてしまうのではないだろうか。

●背景となるニュース

*米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は7日の上院銀行住宅都市委員会と8日の下院金融サービス委員会の公聴会で証言した。上院では、経済データが一層急速な引き締めを正当化するならば「利上げペースを加速する用意がある」と発言し、下院でこの考えを繰り返した後、次の利上げ幅を含めて3月の連邦公開市場委員会(FOMC)での方針はまだ決まっていないと付け加えた。

*3月FOMCについて、CMEのフェドウオッチによると短期金利先物は50ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込んだ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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